232011/05/20
フランス
ル・マン・サーキット
ル・マン・サーキットとは
パリの約200km南西に位置する伝統あるサーキット。ル・マン24時間耐久レースでも世界的に有名ですが、MotoGPは“ブガッティサーキット”というショートコースで開催されています。ストレートを中低速コーナーで結んだストップ&ゴー・レイアウトのサーキットです。
年間18戦を戦うMotoGPは、世界各地のさまざまなサーキットを転戦する。選手によってコースの得意不得意や好き嫌いはさまざまだ。この好き嫌いを克服し、苦手なコースでも可能な限り高い順位で終えることが、シーズンを通じて好成績を収めるための重要なポイントになる。今回は、得意コースと不得意コース、そしてその理由などについて、青山博一にたずねてみた。
「好きなコースでまず最初に思い浮かぶのは、ツインリンクもてぎやマレーシアのセパン・サーキットですね。逆に、あまり好きではないサーキットは第3戦で走ったポルトガルのエストリルとか、今回のル・マンとか。この好き嫌いは恐らく僕の性格も関係していると思うんですけど、もてぎやセパンは直線とコーナーを結んだレイアウトなので、アウト・イン・アウトの基本に忠実な走りをすればある程度のタイムを出せるんです。つまり、アウト側いっぱいからコーナーに進入して、きっちりイン側まで寄せて、立ち上がりでもアウト側一杯まで使うという走り方で、がんばって攻める走りをするとそれがタイムにしっかりと反映される」
「エストリルやル・マンの場合は、コースレイアウト的に左右に切り返しながらコーナーがつながっていくので、一つひとつのコーナーをアウト・イン・アウトで攻めてもいい走りにつながらないんですよ。コーナー一つひとつをがんばって攻めても意外に速くなくて、むしろ、意外にがんばらなかったな、くらいのほうがタイムが出る。そのぶん、攻めた実感がないんですね」
「あとは、インディアナポリスもいまひとつ好きじゃないですね。なぜかというと、オーバルを使ったりインフィールドを使ったり、しかも逆走コースだからレイアウト的にかなり無理してる。路面も、新しいパッチやガタガタな路面など3〜4種類くらいの路面があって、マシンセットアップをしていく上でも苦労するし、逆回りのせいかすごく旋回しづらいんですよ(苦笑)。 嫌いなところを3つ挙げたので好きなコースをもう1つ挙げるとすると……、あっ、ザクセンリンクはいいですね。あそこはミニバイクやポケバイのコースみたいにすごく小さくて、もともと僕たち日本人選手はポケバイからミニバイクというステップを踏んできているライダーがほとんどなので、多くの日本人があのコースを好きだと思いますよ」
「コースの好き嫌いには、天気も関係しますね。ここフランスもエストリルもどちらかというと天気が安定しないし、雨が降るとすごく寒くなるんです。だから、そういう意味でもあまり好きじゃないんですよ。たとえばこのフランスは、冬になったら気温がすごく下がって路面が凍結することもある。そういう時期にはレースをしないんですが、水が入って地面が割れることのないように路面の目が細かいんです。イギリスなんかもそういう傾向がありますけど、“冬が寒い場所は路面の目が細かい=晴れても路面があまりグリップしない”ということなんです。そういう意味でも寒いところはあまり好きじゃないですね。スペインやマレーシアなどのあまり寒くならないところは路面が粗くてμ(ミュー:摩擦係数)が高く、グリップも高い。スペインは雨が降っても温かいし、どこのサーキットもたいてい天気がいい。だから、スペインは好きなコースばかりですね。
微妙なのが、オーストラリアのフィリップアイランド。あそこは国としてもすごく好きだし、レイアウトも面白いサーキットなんですが、唯一の難点は天気が安定しないこと。でも、ウイークを通して天気が安定するときがまれにあって。そういうときのフィリップアイランドは最高です。日本の鈴鹿サーキットみたいな感じで、ハイスピードでリズムに乗せてどんどん走っていける。でも、通常はウイークのどこかのセッションで必ず雨が降るんですけど(笑)」
「高速コースといえば、イタリアのムジェロ・サーキットもけっこう好きですね。あそこは最初、特に得意でもないしあまり好きなコースでもなかったんですが、何年か経験していくうちにコツをつかめるようになって、そうしたらどんどん好きになっていきましたね。だから、今は苦手なコースでも、今年こそ攻略してやろうと思いながらサーキットに入り、レースウイークが終わるころには好きになれるようにと思いながら、いつも取り組んでいます」
自他ともに苦手と認めるル・マンのブガッティ・サーキットで行われた第4戦フランスGPを、青山は8位で終えた。第3戦ポルトガルGPも苦手コースだったが、その2戦を7位と8位で乗りきったことになる。
「エストリルとここは、ある意味では僕にとっての正念場でした。この2戦を7位と8位で終えることができたのは、苦手コースということを考えればまずまずの結果といえるかもしれません。でも、本当は当然ながら、もっと前で走りたいんですけどね。第5戦のカタルニアGPは、僕が欧州の拠点にしているバルセロナが舞台だから、第2のホームGPです。天気もよく温かい気候の場所なので、マシンをうまく走らせて、いいリザルトを得られるようにがんばりたいと思います!!」
青山博一
Hiroshi Aoyama
5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。