青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi172010/11/09

ポルトガル
エストリル・サーキット

エストリル・サーキットとは

リスボン近郊のリゾート地にあるサーキットです。約1kmの長いストレートと2つの超高速コーナーがある一方で、超低速のヘアピンもあり、シーズン中で最も速度差が大きいため、バランスのいいマシンが求められます。

ポルトガルGPレースレポートはこちら

パドックの“自宅”モーターホームの巻

2010年シーズンもいよいよ終盤戦。日本、マレーシア、オーストラリアの環太平洋3連戦を経て、長かった一年の最後を飾る2戦はふたたび欧州が舞台となる。

欧州以外のレースでは、チーム関係者同様に選手たちもホテルからサーキットへ「通勤」する。が、欧州のグランプリでは、ほとんどの選手がパドック内のキャンパーやモーターホームで寝起きしてレースウイークを過ごす。

それは、青山博一も例外ではない。2008年まではサーキット近くにホテルをとってそこから通っていたが、09年からはパドック内で寝起きするようになった。渋滞や帰宿時刻を気にする必要がなく、ホテルとサーキットを往復する時間も節約できるので、レースウイーク中の時間を有効に使えるようになったという。

青山博一

「僕はチームとのミーティング時間を大切にしているんですが、ここにいると移動の時間が少なくてすむので、長いミーティングをしっかりできるんです」と青山。

「リラックスという意味でも、走行後に過ごすことができるし、走る前にもここで自分のモードに入れるので重宝しています。中にはテレビも冷蔵庫もあるしエアコンも完備していて、ひと通りすべてがそろっているので快適ですよ。ただ、食事だけは、朝昼晩ともホスピタリティで食べていますね」

サーキットで選手たちが寝泊まりする車輌は、小回りの利くキャンピングカーから側面がスライドアウトする巨大なモーターホームに至るまでさまざまだが、青山が寝起きするこの車輌は、パドック内では「サーキットホテル」と呼ばれている。キャンパーやモーターホームの場合は、チームや選手が独自に購入したり業者とリース契約をして使用しているのに対し、サーキットホテルの場合は文字通りパドック内に用意された居住スペースで、ホテルのような形態で活用されている。

青山博一

「広さは、ちょっとしたワンルームマンションくらい。都内でもこの程度の広さの物件ってありますよね。確かにバルセロナのアパートと比べると格段に小さいけれど、特に不自由を感じるほどじゃないですよ。125ccの選手とかが使っているキャンパーだと小さくて通路も狭いし、中ではストレッチもなかなかできないけど、ここなら十分なスペースがあります。Escaper(北米メーカーの高級モーターホーム)などのモーターホームは大きくて見た目もカッコいいから、ああいうのも欲しいなと思うこともあるけれど、あそこまでいっちゃうと逆に、自分で手入れをしたり、登録や納税の手続きや管理が大変なので、そういう細かいことを考えると、面倒でイヤなんですよね。

その点、このサーキットホテルだと、ドライバーさんがセットアップをしてテレビも水も電気も全部使える状態にしてくれます。それに、ベッドメーキングやタオルの交換、冷蔵庫の飲み物補充と、すべてやってくれるので、そういう意味では本当のホテルと同じです。余計なことを自分では一切する必要がなくて、レースに集中し、リラックスして休むことができる。レース中心の生活、という点では理想的な環境といっていいと思います」

青山博一

昨年からこの設備を使用している青山は、トラックが完成する前から今年も使うことを確約していたので、内装についても自分の好みをリクエストした。家具は清潔感のある白、壁は白とグレーという安心感のある落ち着いた配色だ。

室内には、テレビやプレイステーションなどの備品が最初から用意されている。ただし、これらの電源を入れることはほとんどないという。

「テレビは、MotoGPの過去のレースを観たりする程度で、プレステも、リラックスするという目的には有用かもしれないけど、レジャーやバケーションじゃないんだし、サーキットに遊びに来ているわけでもないので、実際に使うかというと、そうでもないですね」

青山博一

基本的にシンプルな室内で目立つのは、畳くらいだろうか。日本のホームセンターで購入したものを、チームの荷物とともに搬送してもらったのだという。

「唯一、自分で持ち込んだものといえば、これくらいですね。ストレッチやリラックスするときに、床でごろごろするよりは畳のほうがいいので愛用してます。日本の心です(笑)」

このサーキットホテルを使用するのは、いよいよ次回のバレンシアGPが年内最後。長いシーズンのあいだ何昼夜も過ごしてきたこの「仮住まい」は、最終戦を終えると新しいシーズンの開始までしばらくの期間、扉が閉じられる。

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。