青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi162010/10/22

オーストラリア
フィリップアイランド・サーキット

フィリップアイランド・サーキットとは

オーストラリア・メルボルンの南にある風光明媚な小島に造られたサーキットです。海に囲まれた環境のため強風にさらされ、天候も不安定になることが多くライダーを悩ませます。この時期、南半球に位置するフィリップアイランドの季節は冬から春に向かう最中で、前戦マレーシアGPからコンディションが激変することもポイントです。

オーストラリアGPレースレポートはこちら

トレーニングはアスリートの必須項目なのだ

身体の下で300km以上ものスピードを発揮するマシンを押さえつけ、ときに強引に倒しこんで意のままに操るための強じんな瞬発力。1周5kmのコースを20周以上も周回するあいだ、高い心拍数を維持しながら高い運動能力を発揮する心肺機能。そして、三次元的な動きのマシンを操って最適かつ最高の運動性能を引き出すバランス感覚などなど、世界最高峰の二輪ロードレースを戦う選手には、スポーツにかかわる“人間の性能”の中でも、最高水準のものが求められる。

さまざまなジャンルのトップアスリートたちが勝利を求めて過酷なトレーニングに励むのと同様に、青山博一も、日々激しいトレーニングを続けている。シーズンを通してベストコンディションで戦えるようにアルゼンチン人のトレーナーと相談しながらメニューを組み立てているが、「ジムに行ったり自転車に乗ったりスイミングしたりランニングしたり、特に変わったことはやっていないですよ」と青山。250cc時代は、どちらかというと持久系のトレーニングが中心だったが、MotoGPにステップアップしてからは、大排気量マシンを操作するための筋力強化に精力的に取り組むようになったと言う。

青山博一

「持久力は、まあ、あるほうだと思います。10kmを30分で走るので、フルマラソンなら2時間少々という計算になるけど、それはたぶん無理です(笑)。以前は、朝起きてすぐ10kmのランニングをするのが日課で、走った後に食べる朝ご飯がとても美味しかったのですが、走りすぎてヒザを少し痛めてしまったのと背中のケガの影響で、今はほとんど走っていません。ランニングは好きなので走れないのは少し寂しいですが、数カ月もすればまた再開できると思います。

筋力面では、特に今年は筋力アップと体重アップを目標にしてウインタータイムから取り組んでいます。バイクの上でベストのパフォーマンスをできるよう、走行後の身体の調子をみてココが足りないとかココがもっと欲しいと考えながら、トレーニングメニューを調整していますね」

青山博一

レースがないときは、ほぼ毎日何らかの運動をしているという。

「よっぽど体調が悪くならないかぎり、常に何かしらやってますよ。会社に勤めている人が朝オフィスに行って夕方帰ってくるのと同じで、朝トレーニングに出かけて夕方に戻ってくる、というのが日課のような状態です。

でも、ジムでは実際にバイクで使う筋肉にピッタリ合ったシミュレーションをできないので、本当に一番いいトレーニングはバイクに乗ることなんです。バイクの上にいるときは、バランスを取りながら力を入れるワケじゃないですか。でも、ジムではバランスをとることもなくただ力を入れているだけなので、実戦的な加減はバイクじゃないとわかりません。バイクの場合は、F1のように大きなモニターの前に座って横Gがかかるシミュレーターがあるわけでもないので、実際に走行するトレーニングがベストなんです。

でも、今はテスト制限があってバイクに乗る機会が少ないので、日常のトレーニングはその数少ないバイクに乗ったときに身体が負けないように普段から準備をしておく、という意味合いもありますね」

バルセロナに生活の拠点を置いている青山は、シーズン中でもレースが無い日は、自宅からジムに通っていつもどおりのメニューを継続できる。ただし、日本やマレーシア、オーストラリアなど、今回の3連戦のように欧州を離れた転戦が続く時期は普段どおりのトレーニングができなくなる。

青山博一

「もともと走ることが好きで、しかもこのトレーニングは場所を選ばないので、いつもならランニングをしているのですが、今はまだ脊椎が完全に治癒したわけではないので控えるようにしています。プールがあるところでは水泳をしているのですが、ないところではそうもいかないですよね。セパンは、ビーチで少しランニングをしました。ランニングは関節への衝撃が大きいのでずっと控えていたのですが、砂浜のように柔らかい地面だとその衝撃もある程度吸収してくれますから。

でも、マレーシアとオーストラリアのように環境が激しく変わる場合は、トレーニングよりも体調の調整のほうが大事ですね。気温だけでも20℃以上違うし、さらに僕は体脂肪が少なくて風邪をひきやすいので、食べるものや着るもの、睡眠時間などに気を配って、体調の変化に注意して敏感に対応するよう心がけています。

調子がいいときならなんともない物でも、体調があまりよくないときに食べると一気に体をこわしちゃう、ということもあるじゃないですか。やってることは、生ものは食べないようにするなどの当たり前のことばかりなんだけど、それをきちんと実行するのは、けっこう大変だったりするんですよ」

青山博一

日本−マレーシア−オーストラリア、と続いた欧州外3連戦の3戦目、オーストラリアGPを青山は13位で終えた。次戦からは欧州に戻り、ポルトガルとスペイン・バレンシアの2連戦が待っている。バルセロナに戻った青山はいつもどおりのトレーニングを行いながら、シーズン最後の2レースに備える。

青山博一

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。