青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi302011/09/01

インディアナポリス
インディアナポリス・モーター・スピードウェイ

インディアナポリス・モーター・スピードウェイとは

世界最大規模のレースイベントとして名高いインディ500が開催されるサーキット。当地での2輪レースは、2008年に開催された世界選手権が初めてで、オーバルコースの内側にロードコースを追加した独自のレイアウトで競われます。

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アメリカとヨーロッパは違うのだ、の巻

シーズン2回目のアメリカ合衆国開催となった第12戦インディアナポリスGP。“欧米”という言葉が示すとおり、日本ではともすれば米国と欧州はひとくくりにされがちだが、実際にはヨーロッパと米国は、さまざまな部分で異なっている。欧州生活が長い青山博一の目にも、米国の姿は独特の文化として映っているようだ。

「アメリカに来ていつも感じるのは、すべての規模がデカい、ということですね。自動車がそもそも大きいし、道路にしても日本の両方向の車線が片側に収まってしまうほどの幅ですからね。最初にアメリカに来たときに、人の大きさにインパクトを受けたので(笑)、それからクルマの大きさを目の当たりにすると、なるほどああいうデカい人たちを収納するにはこれくらいの大きさは必要なんだろうな、と納得しました。

モータースポーツを含むすべてのスポーツイベントもスケールが大きくて、たとえばこのインディアナポリス・モーター・スピードウェイにしても、敷地の中にゴルフ場が入ってるくらいですからね」

青山博一

レースそのものも、アメリカとヨーロッパではさまざまな違いを肌で感じる、と青山は言う。

「AMA(全米選手権)を見ていても、ヨーロッパのレースとはちょっと雰囲気が違いますよね。放送の仕方1つをとってみても、エンターテインメントとしてとてもよく工夫されていて、カッコいいですよ。ヨーロッパラウンドは本場のレース、という感じだけれど、アメリカに来るとレースショー、という印象もありますね。スタート前には必ず国歌を斉唱して、上空をジェット機が爆音をたてて飛んでゆく。観ている人たちも盛り上がり方をよくわかっていて、楽しむツボを心得ているように見えますね。ラグナセカでは、AMAとの併催なのでMotoGPクラスしかやらないけど、今回のようにMotoGP、Moto2、125cc、と3クラスのレースがあって盛りだくさんなのは、アメリカの人たちにちょうどいいかもしれませんね。1クラスだけのレースが1時間で終わってしまうと、彼らにはちょっと物足りないかもしれません」

青山博一

レース以外のスポーツ全般に視野を広げても、アメリカには独特の楽しみ方があるようだ。青山は、日本古来の武道から発展した格闘技系競技と比較しながら、こんなふうに分析する。

「日本のスポーツって相撲も柔道も空手も、一瞬の勝負じゃないですか。でも、アメリカで盛り上がるスポーツは、すべて時間が長いですよね。インディ500はものすごく長い周回数だし、NASCARだって、一晩中オーバルをぐるぐる走ってる。アメリカンフットボールやバスケットボールや野球も、競技時間は長いですよね。しかもルールがたくさんあって、試合が途中で何回も中断される。で、止まることによって試合の流れが変わったりするんですよね。そこは、一瞬の機微で試合が決まる日本の競技とは全然違う。相撲や柔道や剣道や空手を見る人たちは、その一瞬を楽しみにしてるんだと思うけれども、アメリカ人はその逆。長いディスタンスのスポーツをみんなでゆっくりと楽しむんですね」

青山博一

そして、レースやスポーツと離れて、驚いたことがもう1つ。

「あと、ここでびっくりしたのは、バイクに乗っている人がヘルメットをかぶらないじゃないですか。州の法律でかぶらなくてもいいそうなんですが、あれがまた独特ですよね。ロン毛でタンクトップ姿のデカい人たちがサングラスだけでデカいバイクに乗って走ってるんだけど、本当に驚きました。きっと、体格が大きいから似合っているし絵になるんでしょうね。僕やダニがああいうデカいバイクに乗っても絶対に似合わないと思いますよ(笑)。『ターミネーター』みたいな映画の世界がここには普通にありますよね」

アメリカの公道

現地時間日曜午後14時に始まった決勝レースでは、青山は1周目に最後尾まで沈んでしまったものの、そこから着実に追い上げて、最後は9位でフィニッシュ。結果は前回チェコGPと同じだが、ほとんど全選手がタイヤのマネージメントに苦しんだ中、青山は最後まで安定した走行で、マシンとタイヤを万全にコントロールした。内容的には、前回からさらに前進したレースだったといえるだろう。2週連戦となる第13戦のサンマリノGPでは、この数戦で見せた内容的な前進をリザルトに反映することが期待される。

青山博一

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。