青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi342011/10/21

オーストラリア
フィリップアイランド・サーキット

フィリップアイランド・サーキットとは

オーストラリア・メルボルンの南にある風光明媚な小島に造られたサーキットです。海に囲まれた環境のため強風にさらされ、天候も不安定になることが多くライダーを悩ませます。この時期、南半球に位置するフィリップアイランドの季節は冬から春に向かう最中で、涼しい気候の中でのレースになることもあります。

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欧州生活で学んだこと、の巻

青山博一が最初にヨーロッパで生活を始めたのは2004年。Honda Racing スカラーシップの一期生としてロードレース世界選手権250ccクラスに参戦するようになったことがそもそものきっかけだ。それ以来、青山はスペイン・バルセロナに生活の拠点を置いてグランプリ生活を続けている。8年間のこの欧州暮らしは、いろいろなものごとを客観的に眺める視点を育む時間でもあったようだ。

青山博一

「日本を離れて思ったのは、やっぱり日本ってちゃんとしてる国なんだな、いうことですね。人々のマナーもしっかりしているし、約束をしたら必ず時間通りにくるじゃないですか。ヨーロッパの人は、時間どおりに来ないのがあたりまえ。電車も時間どおりに来ないのがあたりまえ。しかも、謝らない。今では慣れましたけど、最初はそういうところに一番びっくりしました。そういうのを見ると『自分は日本人でよかったな』と思います。

その一方で、日本は何に関しても制限が多い国だな、とも感じますね。そもそも、日本人は休みなく働くじゃないですか。でも、ヨーロッパの人たちは、もっと自分の生活に重点を置いているような気がします。日本にいたら、毎日毎週仕事に行くのは当たり前だけど、ヨーロッパでは一カ月くらい平気で休みを取るじゃないですか。それで生活や社会が成立しているのがすごいですよね。僕が最初に住み始めた頃は、ちょうどスペイン経済が好調な時期で、『あれだけみんなが働かなくて、どうして社会が成り立っているんだろう』と不思議でしかたなかったのをよく覚えています。世の中にはいろんな生き方があるんだなということがよくわかりました。どちらかの生活に合わせろと言われればどちらにも合わせることができるとは思うけど、できればその中間くらいがいいのかな、と思います」

青山博一

「いずれにせよ、欧州生活で価値観はだいぶん変わった気がしますね。オープンマインドになってきました。

日本の教育制度はとてもいいと思うし、だからこそマナーも治安もしっかりしているんだと思うけれど、その半面、自由度が低いというか、すべて完ぺきじゃないといけない、という雰囲気も感じますよね。ある種の型にはめられちゃうような。ヨーロッパは、人によってマナーが悪かったり場所によって治安が悪かったりもするけれども、型にはめられているようなところはない。その意味では、人間らしく生きているのかもしれませんね。

あと1つ思うのは、ヨーロッパには信号はあまりないけれども、そのかわりにラウンドアバウト(ロータリー、環状交差路)がたくさんあります。あれは日本にも、もっとあったほうがいいですよね。ラウンドアバウトは自分が合流する環状道路に優先車両がいるかもしれないと考えるから、必ずしっかり左右を確認する。運転が荒いことで有名なスペインやイタリアの人たちが、しっかり一時停止しますからね(笑)。慣れるまでは戸惑うかもしれないけど、慣れれば信号機の交差点より安全で事故も少ないし、きっと交通渋滞の緩和にも役立つと思いますよ。

総合的に考えると、日本はとてもいい国だと思います。だって、治安もいいし、夜道を普通に歩けますからね。商品を注文したら一日で届くし。日本では普通のことだろうけど、これってすごいことですよ(笑)。コンビニだって、夜中に開いているから何だって手に入る。すごく便利で安全だけど、それを維持するために一生懸命働かなければいけない。それぞれ一長一短で、両方を一度に手に入れるのはなかなか難しいことなのかもしれませんね」

青山博一

欧州から離れたシーズン終盤戦16戦のオーストラリアGPでは、青山は初日午後のフリー走行で6番手と好調な走り出しを見せたものの、決勝レースでは終盤にバトルから脱け出して前を追おうとした矢先、突然の雨に見舞われて、移ろいやすいフィリップアイランド・サーキットの天候に足下をすくわれてしまった。

気持ちを取り直して向かう第17戦マレーシアGPの舞台、セパン・サーキットは青山の得意コース。ここから先の2戦は持てる力を出しきって全力で走りきり、なんとしてもベストリザルトをもぎとる覚悟だ。青山の熱い走りに注目しよう。

青山博一

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。