青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi62010/05/07

スペイン
ヘレス・サーキット

ヘレス・サーキットとは

年間を通して気候が穏やかなスペイン南部アンダルシア地方にあるサーキットです。テストが頻ぱんに行われるため、ここを得意とするライダーも多く、抜きどころが多いことから激戦が展開されることでも人気。決勝日にはシーズン最高の12万人超の大観衆が集まる大会となります。

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レースの本場で苦戦したのだ

開幕戦カタールGPを終えた青山博一は、レース翌々日の4月13日(火)に帰国。翌14日(水)から精力的に第2戦日本GPのプロモーション活動に取り組んだ。250ccクラス最後のチャンピオンであり、MotoGPクラスに参戦する唯一の日本人選手である青山への期待は大きい。

この日の午前には千葉県市原市長、午後からは千葉県知事森田健作氏を表敬訪問。休む間もなく週末は三重県へ移動し、18日(日)は鈴鹿サーキットで行われる鈴鹿2&4レースで次週開催予定の日本GPを宣伝した。しかし、折からのアイスランドの火山噴火による航空停滞で選手や関係者の来日が不可能になり、19日(月)には日本GPの10月延期が正式発表になった。

「ホームグランプリの日本GPで勢いをつけてヨーロッパへ乗り込みたいと考えていただけに、延期の話を聞いたときはガックリきちゃいました。でも、延期になったことで10月に向けてマシンを仕上げる時間ができたし、自分もその間に経験を積んでいくことができると思います」

と青山。週が明けても慌ただしい日々は続いた。

「日本GPが延期になったのでヒマになるのかと思ったら、そんなことは全然なくて、延期になったことに関する取材が入ったりして、結構ずーっとバタバタしっぱなしでした」

日本で受け取ったファンの寄せ書き

結局日本を出国したのは、航空便の混乱が沈静化しはじめた24日(土)。住まいのあるバルセロナには25日(日)に到着して時差ボケの調整を行い、本来第3戦の予定だったものの第2戦へ繰り上げになったスペインGPが行われるヘレスサーキットへ入ったのは、28日(水)。

このスペインGPは、一年の中で最高の盛り上がりを見せるレースとして有名だ。金曜日のフリープラクティスから日曜の決勝レースまでの三日間総計で20万人を軽く超えるレースファンが観戦に訪れる。昨年のスペインGP決勝日の来場者数は12万3340人。彼らの眼前で、当時250ccクラスだった青山は地元スペインのアルバロ・バウティスタとし烈なデッドヒートを演じ、最終ラップ最終コーナーの大逆転劇を制して優勝を達成したことは目の肥えたスペインのレースファンにも鮮烈な印象を与えた。

2009年のスペインGPでの青山博一

青山自身も、このコースは好きだという。

「去年も勝っているから、わりと好きなほうですね。MotoGPで走ったことがないのは不安要素だけど、少しずつ詰めていきたいと思います。数字的な目標については、前回のカタールでもそうだったけど、目標順位を挙げるのはまだ難しい。自分たちにこれくらいのマシンポテンシャルがあって、タイヤのパフォーマンスをどれくらい引き出すことができて、一方でライバル陣営のパフォーマンスはこれくらいで、ということを把握して初めて数字的な目標を出すことができるけど、今はまだ自分たちがどれくらいのパフォーマンスを引き出せるのかわからない。だから、目標を具体的に挙げるのは難しいんですよ。リザルトについても、前回よりも上、ということにはあまりこだわっていません。それよりも、今はとにかくマシンポテンシャルを少しでも引き出すようにしていくことが大切だと考えています」

一方、チーフクルーのトム・ヨイェッチは、日本GPが順延になったことを、むしろ青山にとって好材料とも捉えていた。

「ホームグランプリで少なからぬプレッシャーがかかっていたかもしれないので、日本GPが延期になったのはヒロにとってかえっていいことだったかもしれない。また、時間ができたことにより、バイクを理解するのに必要な時間を稼ぐこともできた。だから、我々にとってこの順延は総じてよかったのではないかと思います。

ヘレスのレースでは、決勝日に10万人以上の観客が観戦にやってきます。雰囲気は最高だし、ファンの人々もすばらしい。それに、ここはヒロの得意コースで、課題項目の解決も比較的容易に見つけていくことができるだろうから、その意味でも今回のレースは楽しみですね」

ヘレス・サーキットのスタンド

金曜のフリープラクティス1回目は、17番手。土曜のフリープラクティス14番手、予選12番手、と少しずつ順位を上げていき、決勝日午前のウオームアップ走行では、8番手まで浮上した。決勝に向けて期待も高まったが、レースは1周目にライバル陣営の選手と接触しそうになり、転倒を避けるためにコースアウト。これで大きくタイムをロスしてしまい、前方から大きく引き離されたまま、最終ラップまで単独走行を強いられた。

結果は14位。

このリザルトには、青山はさすがに落胆を隠せなかった。

「チームのみんなが一生懸命に仕事をしてくれたのに、1周目のアクシデントとミスで台無しにしてしまいました……。コースに復帰してからも、理想のペースで走ることができなかった。ずっと単独走行だったということもあるけど、今後はそのあたりをもっとよくしていかないと……。次のレースはがんばりたいと思います」

スペインGP決勝での青山博一

「今朝のフィーリングはよかっただけに、レースは残念でした」と、ヨイェッチも、青山がいいリザルトを獲得できなかったことについては悔しげな様子だった。が、今回のレースウイークでは得たものも多かったと話す。

「1周目のアクシデント後は集中力を維持してラップタイムをキープすることが難しくなってしまったのですが、決勝までは順調に積み上げてくることができたので、前向きに捉えたいと思います。今回の第2戦全体では、いいウイークエンドでした。セッティングを進めることができたし、ウオームアップでは前のライダーとのギャップをかなり詰めることができるようにもなっていましたから」

青山博一

HRC総監督の山野一彦も、順位はともかく今回のレースで青山が学習できたことは多かっただろう、と考えている。

「1周目から前方と大きく離れてしまって単独走行になり、MotoGPクラスでバトルをするために自分のライディングをどうすればいいかということを学習できなかったのは残念ですが、転倒しないでリザルトをしっかり残すという仕事は果たしてくれました。こうやって結果を残していくことが、次戦のルマンGPや翌年のヘレスGPのレースにつながっていくので、それに対しては、チーフメカニックのトムも私もポジティブに捉えています。レースにアクシデントはつきものとはいえ、もしあそこでクラッシュして一周でレースが終わっていれば、走行データすら残せなかったわけですから。そう考えれば、14位は悔しい結果ではあるのですが、確実に次につながるレースをしてくれたと思います。青山君自身も、セッションごとにがんばってラップタイムを上げてきましたし、しかも吸収力が速く、マシンパフォーマンスを確実に理解するようになってくれていますからね。レースの順位うんぬんではなく、チームとしてリザルトを残してくれたので、次の第3戦が楽しみですよ」

次回のレースに向けて、青山はゆっくりとではあるが、着実に階段をのぼり始めている。第3戦フランスGPの舞台は、ルマン・ブガッティサーキット。5月23日に決勝レースが行われる。

青山博一

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。