青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi262011/07/12

イタリア
ムジェロ・サーキット

ムジェロ・サーキットとは

フィレンツェ近郊の丘陵地帯にあり、その地形に由来するアップダウンが特徴的なハイスピードコースです。フィニッシュラインまで大接戦が続く厳しいレース展開が見物。強豪の地元イタリア人ライダーたちの勝利にかける気持ちが強いサーキットだけに、毎年熱戦が繰り広げられます。

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田舎で出会った市井の人に思わず尊敬、の巻

青山が所属するチーム・サン・カルロ・ホンダ・グレッシーニのメインスポンサーは、イタリアの大手スナック菓子メーカーだ。このスポンサー企業へのあいさつのため、ある日イタリアを訪れた青山は、ちょっと意外な経験をした。

青山博一

イタリアといえば、人々は気さくでおおらか、日本人と比較すればそれがルーズに見えてしまうこともある。海外生活の長い青山は、そのあたりの事情はよく知っているだけに、日本人の本音と建て前ならぬ、イタリア人のその場しのぎの適当に聞こえる返事と実際の事情、の落差はよく心得ている。ともすれば、それが日本人の目には「適当でいい加減」と映りがちだが、そんな印象が一変する出来事に遭遇したという。

「スポンサーのあいさつに行くために、空港から自分でクルマを運転して行ったんですよ」と青山。

「で、予約してもらったホテルに行く途中で道に迷ってしまったんですね。レンタカーにはナビもついていたのですが、そのナビが道を間違えてしまって、予約してもらったホテルになかなかたどり着けなかった。けっこうな田舎町で、途中でクルマを停めてあちこちで道をたずねたりしたのですが、イタリアの人ってなかなかちゃんと教えてくれないじゃないですか。たずねると気さくに応じてはくれるんだけど、正確に教えてくれる人があまりいなくて、だいたいみんな適当なことを言ったりして(苦笑)。

そんな対応が続いて、なかなかホテルにたどり着けず、ちょっと困っていたのですが、近くにアイスクリーム屋さんを発見したので、店内に入ってまた道をきいたんですよ。そうしたら、その店のおじさんがすごく親切な人で、わざわざホテルまで電話してそこからの道順を聞いてくれたんですね。おかげでホテルに無事たどり着くことができたのですが、この出来事がきっかけで、僕の中でのイタリアのイメージがガラリと大きく変わったんです。ひとりの人間の行動が、外国人がその国に対して持つ印象を大きく変えることになったわけで、そういう意味で『このおじさんはすごい人だなあ』と、思わず尊敬の念を抱きました。

逆に言えば、僕の言動が他国の人にとっては日本を代表するイメージになって、日本に対する印象を左右することになるのだなあ、とあらためて感じました。アイスクリーム屋のおじさんと較べると、とくに僕の場合はスポーツというメジャーなところにいる分だけ、日本という国のイメージを背負っているのだなあ、その分だけ影響も大きいのだなあということを、この一件で強く思い知らされたような気がしますね」

このように、青山が好印象を抱く国、イタリアのムジェロ・サーキットで行われた第8戦。前戦からの2週連続開催だが、オランダGPで傷めた背中はまだ快癒からはほど遠い状態だった。鎮痛剤こそ使用しなかったものの、ブレーキングや切り返しでの痛みは相変わらず。ムジェロ・サーキットは、1000mを超える長いホームストレートから続く1コーナーのようにハードブレーキングを要求される箇所や、左右への連続する切り返しが多く、「ブレーキングや切り返しで背中が痛む」青山にとっては苦しい走りを強いられることになる。とはいえ、青山自身は「そんなことを言っている場合ではない」と、言い訳を拒否してレースに臨んだ。

青山博一

結果は11位。

「……長いレースになりました……」

というのが、ピットに戻ってきた第一声だ。

「序盤はダニと同じところにいて、ダニが前に出てからは追いついていこうとしたけれども、エリアスに引っかかってしまいました。ペースはそんなに違わなかったけれど、そうこうしているうちに少しずつ離れてしまった。終盤にはダニとエドワーズに追いついていったけれど、序盤に離されてしまったのが最後まで響きましたね。今日の決勝は路面温度が上がって、予選から20℃以上上昇したけれども、タイヤは最後までしっかり持ってくれました。背中は、後半まで厳しかったです……」

青山博一

連戦だったこの2戦と違い、次の第9戦ドイツGPまでには一週間の間隔がある。背中と腰の状態も、この期間に復調していくだろう。HRCチーム代表の中本修平も、青山の走りについて「復活の兆しは見えています。次のレースではきっといい走りを見せてくれると思います」と述べる。

青山博一

ドイツGPの舞台、ザクセンリンクは、日本のポケバイコースに似た印象もあり、青山にとって好きなコースのひとつだという。ケガを治して本来の力を100%発揮する走りに期待しよう。

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。