青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi292011/08/17

チェコ
ブルノ・サーキット

ブルノ・サーキットとは

チェコ第2の都市ブルノに設けられた高低差の大きいダイナミックなレイアウトのサーキット。近年は夏のグランプリの舞台として定着し、毎年20万人を超えるファンを集めています。昨年はケガのため本GPを欠場した青山にとっては、MotoGPマシンでの初走行となるサーキットです。

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後半戦が始まったのだ、の巻

2週間のサマーブレイクを経て、後半戦は第11戦チェコGPで再び激しい戦いの火蓋が切られる。わずかな休みのこの期間は、選手によっては完全にレースから離れて心身をリラックスさせ、リフレッシュに充当する場合もあるようだが、青山にとっては前半戦で負ったケガの回復を図るという意味でも特に貴重な時間となった。

青山博一

「この2週間は水泳と自転車を中心に、あとは軽くジムでのトレーニングを継続していました」と青山。「アッセンのフリープラクティスで転倒したときの脊椎のカゲから、サマーブレイクでちょうど6週間が経過しました。ドクターの話では6週間が目処、ということだったし、日常生活でも日々よくなってきていることを感じ取れています。身体が思うように動かせないのはストレスが大きいものですが、前半戦最後の2戦と比べると背中の状態はだいぶんいいので、この第11戦からいいスタートを切りたいと思います。毎戦トップ5にからむことを目標に、ここから先のレースではいい走りを披露したいですね」

金曜日午前のフリープラクティス1回目には、新しいセッティングを試した。シーズン前半戦は、旋回性とグリップのバランスを見つけることに苦労しており、その解決を図るためにさまざまなトライを続けてきた。旋回性を向上させればグリップは低下し、グリップをよくしていくと旋回性が損なわれるという関係の中で、どこに落としどころを見つけていくかは悩ましい問題だ。午後のフリープラクティス2回目では、午前と逆の方向に振ってみたところ、良好な感触を得ることができ、以後はその方向を進めていくことになった。

青山博一

「午前は旋回性を維持しながらグリップを上げていくことを狙ったのですが、午後は逆に振って、グリップを取る方向にしてみました。ワークスマシンに乗った第7戦以降では、旋回性を重視する傾向で進めてきたのですが、今日の午後にトライした方向性のほうがいいフィーリングを得ることができそうです。終盤にタイムを上げた選手がいて相対的な位置は落ちてしまいましたが、セッション中はまずまずの順位につけることができました。自分の周囲はタイムが詰まっていて、0.2〜0.3秒違えば一気にポジションが変わってしまうので、明日に向けてさらにセットアップを詰めていきたいと思います」

また、「切り返しで背中が少し痛むけれども、ラグナセカのときほどではないですね」と話す口ぶりからも、体調はだいぶんよくなってきている様子がうかがえた。

青山博一

土曜日は、早朝に大粒の雨が降った影響で、午前のフリープラクティス3回目はフルウエットのセッションになった。この走行は、トップタイムのケーシー・ストーナーから0.4秒差の6番手。「いっそこのまま雨のレースならいいな、と思ったくらい」と言うほど好感触を得ることができたセッションだった。午後の予選は10番手。昨日午後にセットアップを変更したマシンの方向性をさらに進めていった。

青山博一

「旋回重視にしていたセットアップを、グリップを取れる方向に変えたことで、だいぶん走りやすくなっています。コーナー進入では、今まではマシンを倒し込む際にリアが逃げてしまっていたのですが、昨日の午後からリアグリップを上げるようにすると、進入の接地感がよくなって、落ち着いて入っていけるようになりました。セットアップとしては旋回性を犠牲にしていることになるのですが、一周してみたときのラップタイムは意外にいいし、自分のフィーリングでも旋回性で損をしていると感じないほどです」

そして日曜日の午後14時、全22周のレースがスタートした。10番グリッドからスタートした青山は、スタート直後に大きく順位を下げてしまったものの、中盤以降は安定したラップタイムで前との差を着実に詰めていき、最後は9位でフィニッシュ。終盤は7位もしくはそれ以上を射程距離に収めていただけに、序盤に位置を落としたことが惜しい展開だった。

青山博一

「前半にロスしてしまったのは、もったいなかったですね。あれがなければ、7位くらいでは終われていたかも」

額に薄く汗をにじませながら、青山はそうレースを振り返った。

「ラップタイムも、最後まで1分58秒台を刻めていたので悪くないと思います。欲を言えばもっといいペースで走りたかったし、理想には足りなかったけれど、想定範囲内のタイムで最後まで集中して走ることができました。体調面でも、全22周のレースディスタンスを走って特に大きな問題はなく、マシンの上で身体を動かせる自由度も増えました。これも、今後に向けた好材料ですね。次のインディアナポリスまでは2週間の時間があるので、体調はさらに普通の状態に戻ってくるでしょう。アッセンでケガをして以来、ここまでの数戦はMotoGPクラスで走ったことのないコースばかりでしたが、次からは昨年経験済みのコースばかりです。その意味でも後半戦は楽しみですね。

あとは全体を少しずつよくしていければもっと前で走ることができると思います。今日は、今後のレースに向けた手応えを実感できるレースになりました。今週試したセットアップを頭に入れつつ、次のインディアナポリスに向かいたいと思います」

青山博一

不運な負傷からも順調に回復し、セットアップ面でも進むべき方向を見いだしつつあることにより、青山は、着実に一歩ずつ前進を続ける本来の姿をようやく取り戻しはじめた。「トップ5にからむ」という目標に到達する日は、以外と目の前に迫っているのかもしれない。

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。