青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi72010/05/28

フランス
ル・マン・サーキット

ル・マン・サーキットとは

パリの約200km南西に位置する伝統あるサーキット。ル・マン24時間耐久レースでも世界的に有名ですが、MotoGPは“ブガッティサーキット”というショートコースで開催されています。ストレートを中低速コーナーで結んだストップ&ゴー・レイアウトのサーキットです。

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青山博一、趣味を語る

第3戦フランスGP、青山博一は11位でチェッカーを受けた。チーフクルーのトム・ヨイェッチは今回のレースに対して、順位はともかく充実した内容だった、と受け止めている。

「スタートは完ぺきではなかったけれども、集団の中で争うことができてよかったと思っています。集団内では最速タイムも刻んでいたので、うまくいけば集団トップの8位でフィニッシュすることも可能だったかもしれない。レース中にミスをして順位を下げてしまったのは残念でしたが、転倒せずにそこからふたたび順位を上げていくことができたので、上出来でしょう。彼自身は口に出さなかったのですが、実は今回は、前回のスペインGP後に手術をした左手の痛みを抱えながらのレースでした。それも考慮すると、100%の体調ではなかったにもかかわらず、いいリザルトを残してくれたと思います。マシン面でも、今回のレースを通じてヒロから得たコメントをもとに、さらに改善していくことができます。

トム・ヨイェッチと青山博一

ブレーキングに関してはよくなってきているので、現状での大きな問題は旋回性とリアのグリップ向上。ここが解決すれば、他のこまごました問題も解消していくと考えています。全体的にはレースを重ねるたびに確実に進歩しているので、次戦でも、またひとつ大きなステップを刻めると思いますよ」

青山自身も「周囲にいた選手とバトルもできたし、初日のイメージからすればなんとかまとめることができたかな、という感じです」と、完全に納得はしきれないながらもまずまず、といった様子だ。

青山博一

というわけで今回はレースに関してはひとまず以上としておき、以下では、普段あまり話すことのない趣味について語ってもらうことにしよう。

「えーっ、趣味ですかぁ……。難しいことを聞きますね(笑)」

ヘレス・サーキットのスタンド

青山のオフィシャルサイトを見てみると、趣味の欄には、<ダーツ、モトクロス>などと記されている。

「確かにそうですね。でも、実はダーツはもう長いことやってないんですよ。

最初にダーツをやったのは4〜5年くらい前。日本で、坂田和人さんたち先輩ライダーにダーツバーに連れていってもらったのが最初です。ダーツって力加減も大事だけれど、集中力や精神統一が重要で、そういったところが面白くて、しかもいいトレーニングにもなるので好んでやるようになったんです。でも、こっち(欧州)にいると、ひとりでやっても寂しいものがありますからね。もう一年くらいはやってないんじゃないかな。

そういう意味でいえば、趣味といえるほどではないかもしれないけれども、昨年は気持ちを落ちつける目的で本を読むことが多かったような気がしますね。特によく読んだのは、稲盛和夫(京セラ創業者、現日本航空会長)さんの『生き方』という本。昔からお世話になっている石田整美堂の石田社長からいただいた本なんですが、当たり前だけれども忘れがちなことがたくさん書いてある。自分の利益を求めずに他人のことを考えて行動しなさい、という『利他』の思想なんですが、そういうことって大事ですよね。あとは、加藤大治郎さんについて関係者74人への取材をまとめた本。自分の中でモチベーションを高く保つために、よくページを開いていました。この2冊は、昨シーズンは転戦中もカバンの中にいつも入れていましたよ。

アントニオ・カイローリ選手と青山博一

モトクロスやダートについては、これは趣味というよりもトレーニングといったほうがいいかもしれないですね。基本的にバイクに乗ることが好きなので、趣味といえば趣味なんですけど。モトクロスでは、今回のレース前にバルセロナ郊外で世界選手権があったので、観戦に行ってきました。昨年のサンマリノGPでアントニオ・カイローリ選手が僕のピットを訪問してくれたので、そのお礼もかねて行ってきたのですが、とても歓迎してくれました。レースも迫力満点で楽しかったですよ」

モトクロス世界選手権カタルニアGPの模様(青山博一撮影)

「あと、モトクロスといえば、もて耐に東福寺保雄さん(元全日本モトクロス国際A級チャンピオン。9連覇記録を持つ)が参戦したときに、とても重要なことを教えてもらったんです。そのレースでは東福寺さんがコースアウトして転倒しそうになったんですが、『いや〜、危なかったよ。コースアウトしたときはブレーキかけちゃダメだよ。アクセルを開けなきゃマシンが沈んで転んじゃうからね』と教えてもらって、それをすごく覚えていたんです。昨年の最終戦では、それがすごく役に立ちました(笑)。

好きな人物は、ブルース・リーです。だって、ものすごくかっこいいじゃないですか。アジア人で英語は達者だし格闘技が強いし、憧れますね。『燃えよドラゴン』の中に出てくる、『Don't think, feel』(考えるな、感じろ)というセリフも大好きです。あの映画は何回も観たし、今でもDVDを持っています。でも、いつも観ているのは2007年〜09年のMotoGPのDVD。それを観ながら走りの研究をしています。どちらかというと、普段からほとんどの時間をレースのことばかり考えているので、趣味というのは、たぶんそれくらいしかないですねえ」

次戦イタリアGPの舞台はムジェロサーキット。6月6日に決勝レースが行われる。心身ともに充実した青山博一のさらなる活躍を期待しよう。

青山博一

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。