青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi32010/02/23

マレーシア
セパン・サーキット

セパン・サーキットとは

赤道直下、マレーシアのクアラルンプール国際空港のすぐ近くにあるサーキット。熱帯に位置し、年中温暖なことから、冬期の開幕前テストが行われる定番の地です。MotoGPライダーやチームにとってはグランプリ、テストと走行経験が多く、非常になじみのあるサーキットといえます。

セパンテスト・レポート(後編)

2日目の走行となる2月5日は、コースインのグリーンシグナルが点灯する午前9時に雨が降り始めた。雨はすぐに上がったものの、サーキット周辺は雲に覆われて路面はなかなか乾かず、昼近くになってようやくドライアウトする状況だった。さらに、夕刻の5時からふたたび激しいスコールが降り始め、これを潮時にほとんどの選手がテストを終了。56周を走り込んだ青山も、激しい雨中での走行は見合わせて走行を切り上げることになった。

2日間の周回数は計122周。終わってみれば、今季からMotoGPにステップアップするルーキーたちの中では最多周回を重ねていた。ベストラップは、前日よりも0.5秒ほど詰めて2分03秒195とし、テストに参加した全17選手中14番手の順位につけた。

タイム、順位ともに昨日よりも改善傾向にはあるものの、それでもやはりまだ内容的には納得できない、という表情を青山は見せた。

「昨日より少しはよくなったけれど、あまり大きくは変わらなかった。昨日はどちらかというとフロントタイヤよりリアタイヤをうまく使えていなかったので、今日はその問題を改善するためにフロントへの荷重を抜く方向で試してみたけれど、基本的なキャラクターは変わりませんでした。アベレージタイムを見ても、このあいだ(12月)より1秒も2秒も遅い。では、それだけマシンのパワーが下がったのかというと、そんなことはなくて、むしろ上がっているのだから、それだけ自分がまだ(マシンのパワーを)使えていない、ということ。これを使えるようにしていかなければならないんですね」

選手を天才型と努力型の2種類に分類するとすれば、青山はどちらかというと天才型の選手ではない。むしろ着実に一歩ずつ前進していく方を好む、頑固な職人タイプの努力型といったほうがいいだろう。このタイプの選手は、どんなマシンにでも即座に順応してあっという間に驚くようなタイムをたたき出す派手さがないかわりに、いったん地盤をしっかりと固めてしまえば、以後は粘り強いしたたかさを存分に発揮する。2004年にHonda Racing スカラーシップを獲得して世界への挑戦を開始してから250ccクラスのチャンピオンを獲得するまでの道程が、その性質を如実に表わしている。今回の走行後のコメントにも、いかにも青山らしいその一端がうかがえた。

「でも、この2日間でバイクのことは勉強できました。昨日から2日間のテストで試したことをひとつずつつぶしていけば、トライ・アンド・エラーでいい方向が見えてくると思います。バイクのいいところを引き出したいけれど、まだうまくかみ合っていない。今はまだ、バイクのポテンシャルを十分に引き出せていない状態です。次回のセパンテストまでに、どれくらい対策を練られるかがカギですね」

この2日間のテストでは、“わからないことをわかった”状態から、“かみ合っていないことを理解する”状態まで進むことができた。次回のテストからは、さまざまな事項を“かみ合わせてゆく”作業が始まる。勝負強い攻めの姿勢を実現するための土台作りは、少しずつではあるが、しかし確実に動き出している。

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。