青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi322011/09/26

アラゴン
モーターランド・アラゴン

モーターランド・アラゴンとは

バルセロナの南西200kmに位置する新しいサーキット。スペイン第4のGPとして、昨年からカレンダーに加わりました。自然の地形を生かしたアップダウンなどバラエティに富むコース設定で、見どころ満載の近代的なサーキットとなっています。

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青山博一のできるまで・学校生活篇

第14戦アラゴンGPの事前イベントで、青山博一はスペインの太鼓(エル・ボンボ)を奏者に混じって叩く機会を得た。マーチングドラムのようなスタイルと奏法の手ほどきを受けながら、青山はぎこちない手つきで慣れない楽器の演奏を楽しんだ。

青山博一(中央)、マルコ・シモンチェリ(左)

「音楽は得意な分野じゃないので、ちょっと戸惑ったけど、やってみるとおもしろいですね」と、笑みを浮かべながら左右の奏者の動きを真似する。演奏後は、使用したドラムの贈呈を受けた。「家の中に飾っておくか、たまには叩いて練習もしてみようかな。でも、デカい音がするだろうな。楽器の演奏なんて、学校の授業以来だったかもしれません」

授業の話題が出たところで、今回は学生時代を振り返ってもらうことにしよう。

「小中高と、ずっと公立の学校に通っていました。小学校と中学校は市原の公立学校で、普段はみんなと一緒に野球やサッカーをしていましたが、週末はサーキットでポケバイやミニバイクに乗っていましたね。高校になると全日本に参戦するようになったので、そういうところが普通の子たちと少し違っていたかもしれませんね。

小学校のころは、運動会が近づくと普通の授業をせずに予行演習とかするじゃないですか。みんなといっしょに僕もはりきって練習するんだけど、運動会の本番は日曜なのでレースと重なると出られないんですね。それが少し残念だったけど、『じゃあ、運動会に出れば?』と言われると、それはそれで困っていたと思う。小学生のころから、自分の中ではレースのほうが大事、レースが第一優先、ということは当たり前のように思っていましたから。だから、運動会に出られないのは残念だけど仕方ない、みたな感じで特に不満はなかったですね」

青山博一

「でも、高校になると、単位制じゃないですか。義務教育の小中学校と違って、学校行事に出ないと単位がもらえなかったりするんですよね。だから、レースと学校行事が重ならないでほしい、とよく願っていました。でも高校時代はさらに大きな問題があったんですよ。中間試験と期末テスト。こればかりは受けない訳にいかないので、レースと重なったときは休みの日に学校へ行って、誰もいない教室で一人で試験を受けたりしていましたよ。ヨーロッパの人たちにしてみれば、とても考えられない事態でしょうね(笑)。でも、僕は他の日本の子どもと同じように普通に通学して、塾にも通っていたから。学校生活、塾生活、オートバイ生活、という3つの生活があったことになるわけです。塾に通っていたのは中学までですが、これは苦痛でした。『学校から帰ってきても勉強するの??』と思うと苦痛だったけど、みんなと一緒にいるのは楽しかった。高校受験のときも、友だち同士で集まってみんなで一緒に勉強していましたよ」

「高校を受験するころはすでにレースをはじめていたので、少しでもバイクに関わることにつなげたいと思い、工業高校機械科を受けました。勉強についていくのは大変でしたが、好きなことに対する努力なので、それほど苦痛には思いませんでした。学校で学んだのは基本的なことばかりですが、基本はレース現場でも大切だし、マシンの基本的な理屈を理解していたほうがチームのスタッフと話をするうえでも仕事を進めやすいので、そういった点でもこの進路を選んでよかったと思っています」

青山博一

「高校でも中学でも、学校では自分以外にレースをやっている子はいませんでしたね。だから、他の子たちから見れば、『週が明けて月曜になると包帯を巻いて学校にやってくる謎の少年』だったんじゃないでしょうか(笑)。高校生のときに全日本にデビューしているので、レースに集中するためにクラブ活動には参加していませんでした。小学校のときは地域の野球のクラブチーム、中学の時は学校のサッカー部に所属していたんですが、今から考えると、水泳や陸上の長距離をやっておけばよかったかもしれないなとも思います。クラブ活動は、バイクの基礎体力を養う方法の一環として捉えていたので、心肺機能を高めるためには水泳や長距離走もきっと役立ったでしょうね。あとは、英語(笑)。当時は自分が日本から出るなんて思ってもいなかったし、ここまで必要になるとはまるで想像していませんでしたからね」

青山博一

一戦一戦、地道に経験とデータを積み重ね、いよいよ次戦は第15戦の日本GPだ。正真正銘のホームグランプリでシーズン最高の結果を得るために、青山は精神力と体力を最高の状態に整えてツインリンクもてぎのレースに備える。歴史的な大災害に見舞われた日本に勇気をもたらすため全力を尽くす青山博一の走りを、みんなの熱い応援で支えよう。

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。