青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi22010/02/18

マレーシア
セパン・サーキット

セパン・サーキットとは

赤道直下、マレーシアのクアラルンプール国際空港のすぐ近くにあるサーキット。熱帯に位置し、年中温暖なことから、冬期の開幕前テストが行われる定番の地です。MotoGPライダーやチームにとってはグランプリ、テストと走行経験が多く、非常になじみのあるサーキットといえます。

セパンテスト・レポート(前編)

2月3日から5日までの3日間、MotoGPクラスによる2010年最初のプレシーズンテストがマレーシア・セパンサーキットで行われた。長引く世界不況に伴う経費削減策の一環として、昨年からプレシーズンテストは回数・日数ともに減少傾向にあるが、今年は昨年以上にテスト回数が少なくなっている。開幕戦カタールGPまでのテスト回数は、マレーシア2回、カタール1回の計3回。毎回のテストでは、初日がメーカーテストライダーの走行に限定され、参戦選手の走行は2日目と3日目に行われる。これら3回のテストで選手が走行できる時間はわずか6日と非常に少なく、これは今シーズンからMotoGPにステップアップするルーキーたちにとって特に厳しい条件となる。それだけに、2010年の新人選手たちはいずれも与えられた時間を最大限に活用すべく、朝の走行開始とともにコースへ飛びだしていった。

インターヴェッテン・ホンダ・モトGPから参戦する青山博一も、2月4日の選手テスト初日のグリーンシグナルが点灯後、9時17分にコースイン。昼食休憩を挟み、夕刻まで精力的に周回を重ねた。

青山は、昨年11月にWGP250ccクラスチャンピオンを獲得した翌日のバレンシアサーキットと、12月下旬にここセパンサーキットでRC212Vのテストをすでに実施しているが、そのときのマシンはいずれも2009年仕様だった。今回は、Honda陣営全チームに支給された2010年仕様を使用した初のテストになる。

「2009年型のときはこうだったのに、というような先入観を持つとかえって惑わされることになってしまう。だから、今回はまず、新しいマシンのフィーリングを素直に感じて受け止めるようにしたい。また、12月のテストではコースを走る他のマシンがほとんどテスト走行していなかったので、ラインの取り方もよくわからない状態だったけれども、今回は全選手が参加するので、それもだいぶわかってくると思います」

走行前日の青山は、今回のテストの目標を、まずマシンへの順応とコースへの慣熟であると話した。2010年型は、エンジン、車体ともに2009年から進化を遂げており、出力特性や乗り味などが異なる。さらに、サスペンションもショーワ社からオーリンズ社へと変更になっている。RC212Vの走行経験が浅い青山にとって、09年型と10年型のフィーリングの違いがどこから来るのかという判断は難しく、2月4日の走行ではとまどいも隠しきれない様子だった。

この日は66周を走行して、ベストタイムは2分03秒651。12月のテストで自らが記録したタイムより1秒35も遅かったことになるが、この数字に青山の感じたとまどいがよく表われている。

「……全然ダメでした」

一日の走行を終えた青山は、納得しきれない様子で小首を傾げ、ゆっくりと口を開いた。

「バイクはソツなく走っているけれども、タイムが遅い。どこでロスしているのかを把握して、明日はもっと詰めていきたいと思います。自分のフィーリングでは、ものすごく悪いわけではないので、それが一番困っちゃいますね(苦笑)。今日はほとんど単独で走っていたんですが、周りと比べて云々というよりも、自分の中でうまく走れていない。それを改善していかないと……。エンジンも車体もサスペンションも、今回から全部違うじゃないですか。どこが原因かは今の段階ではまだわからないけれども、でも、あとは自分がそこに慣れていけばいいだけのことですから。今日のポジティブなポイントは、これだけの時間を走り込んでも体力的には問題なかったことですね」

頭から水をかぶったように汗を滴らせる表情に少し、笑みがうかんだ。

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。