青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi132010/09/27

アラゴン
モーターランド・アラゴン

モーターランド・アラゴンとは

2009年秋に開設した新しいサーキットです。ハンガリーGPの代替として、今季4回を数えるスペインでのグランプリの1つに加わりました。高低差があり、16の多彩なコーナーもあるダイナミックなコース設定が特徴。すべてのMotoGPライダーが初挑戦のサーキットとあって、戦いのゆくえに注目が集まるレースとなりました。

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初開催アラゴン上陸なのだ

シーズン3度目のスペイン開催となる今回の第13戦は、竣工間もない新設サーキットのモーターランド・アラゴンが戦いの舞台。バルセロナから南西に約250km、バレンシアなら北北東に約300km弱、マドリードから来る場合は東北東に400km程度という内陸部に位置している。

誰にとっても全くの初体験の地であるために、今回のレースに先だち、事前に市販車などを使用した簡単な走行テストを実施するチームや選手も多かった。青山博一も、9月7日にHonda CBR1000RRで約45周を走行。「面白いレイアウトだけれども、攻略が難しい」という印象を持ったという。

青山博一

「山を切り拓いて作ったようなサーキットなので、アップダウンがあって楽しいけれどもブラインドコーナーも多くて攻略が難しそうですね。

コースレイアウトは、いろんなサーキットの特徴を切り張りして組合せたような印象もあります。たとえば、2〜3コーナーはヘレスの3〜4コーナーみたいだし、8〜9コーナーは上海の2〜3コーナーに似ています。14、15コーナーを経てずっと下っていくバックストレートから最終コーナーは、インディアナポリスのバックストレートからホームストレートに似ている。ホームストレートの長さも、ちょうどインディアナポリスくらいかな。

このときのテストを基にして、とりあえず僕たちはインディアナポリスのギアレシオ設定からスタートするつもりで準備を進めています」

背中の回復状況は、時間を経過するごとによくなっているのは確かだが、それでもまだ完ぺきといえる状態ではない、という。

「朝は絶好調だけれど、昼から夜へと時間が経過すると、どうしてもある程度は筋肉の張りが出てきちゃうんですよ。可動域は以前と同じくらいまで回復しているんだけれど、しゃがむ姿勢をずっと続けているとキツいですね。だから、日常的にも中腰の姿勢はあまりとらないようにしてるんです。とはいえ、カウルの中で伏せる態勢がまさにこの姿勢なんですが、走行中はガマンのひとこと(笑)。だから、今回もコルセットは使うし、今後もしばらくは手放せないでしょうね」

また、今回の大会は、第12戦サンマリノGP決勝レース中のアクシデントにより逝去した富沢祥也氏の追悼レースでもある。パドック全関係者がさまざまなかたちで富沢氏へ哀悼の意を表するなか、青山は他の日本人選手とともに喪章を左腕に巻いてレースウィークに臨む、と話した。

青山博一

「(事故が発生した当初よりは)少し気持ちは落ちついたけれど、だからといってすぐに感情の整理がつくものでもないですからね……。正直なところ、まだ信じられないと思う部分もあるんだけれど、今回の出来事で誰よりも一番びっくりしているのは祥也だろうし、こんなことになって一番悔しい思いをしているのも祥也自身だと思うんです。もっと走りたかっただろうしもっと勝ちたかっただろうし、祥也が走れなくなってしまった分も、彼が一番大好きだったバイクでレースを楽しむ気持ちを僕たちが乗せて一緒に走ってあげることができれば……。がんばります」

青山博一のマシン

初日の走行は、午前中こそ天気はもったものの、午後からは雨。青山にとって雨のセッションは、昨年12月にマレーシア・セパンで実施したウインターテスト以来。シーズン初ということもあり、特に電子制御の対応にとまどう一日だった。

「セッション後半は雨が止んでペースを上げられるようになったけれど、電子制御が効き過ぎてうまくタイムを伸ばせませんでした。雨は好きではないながら走れるほうだと思うけれど、どうにもマシンが走ってくれなくて『あれ?』って印象でした。電子制御がマシンの浅いバンク角をうまく認識しなかったようで、まずそこを修正する必要がありそうです」

青山博一

翌土曜日はさらに雨が激しくなるという予報だったが、朝からドライコンディション。午後の予選時刻には晴れ間が見えるような天候になった。青山の順位は5列目スタートの15番手。「ドライのセッティングはサスペンションを中心に見直していい方向に進んだ」と話し、日曜に向けて好感触をつかんだ様子だった。

日曜の決勝レースは、今大会一番の好天に恵まれた。青山は一時最後尾に順位を落とすが、そこから少しずつ追い上げて前の集団ともバトルを演じ、13位でフィニッシュ。

青山博一

今回のウイークエンドについて、チーフメカニックのトム・ヨイェッチは手応えと課題の双方を実感するレースだった、と話す。

「決勝では序盤数周のフィーリングがあまりよくなく、ブレーキングではマージンを考えながら走らなければならない状態でした。ただ、ミカ・カリオ選手をパスしてコーリン・エドワーズ選手とバトルを続けているときは、タイヤのグリップレベルが落ちていく中で予選のラップタイムに迫るペースで周回できたので、その意味ではさらに一歩前進できたと考えています。

トム・ヨイェッチ、青山博一

レースウイーク全体では、ヒロは特に電子制御について学ぶことができ、エンジンマッピングの改善でパワーデリバリーもよくなってきました。車体面でもさらに前進できたので、総じて収穫の多いレースだったと思います。

ただ、ヒロはほかの選手よりもレース経験が6戦少ない分、マシンに乗り込む時間が少なく、ほかのルーキー勢に比べて不利な面があるのは否めません。それでも、乗り込むにつれてラップタイムは向上しているし、いい方向へ進んでいる手応えがあります。次のもてぎは、ルーキー勢のトップに迫る走りをしてくれると期待しています。ホームグランプリでコースをよく知っている分、本来の走りに近いパフォーマンスを発揮してくれるでしょうし、知り抜いた場所で走ることにより、マシンの理解とセットアップもさらに前進するでしょう。日本GPでは、ルーキートップでゴールすることを目標にしたいと思います」

日本GPはツインリンクもてぎ(栃木県)で10月1日に開幕、決勝レースは3日に行われる。青山博一にとっては、実に約5カ月ぶりの帰国だ。日本のファンの応援を一身に受けて走る青山の、こん身のライディングに期待しよう。

青山博一

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。