青山博一チャンネル〜Go! Go! Hiroshi〜

Go! Hiroshi152010/10/13

マレーシア
セパン・サーキット

セパン・サーキットとは

赤道直下、クアラルンプール国際空港のすぐ近くにあるサーキット。熱帯気候下にあって高温多湿の過酷なコンディションとなりますが、一年中にわたって温暖なため冬期のオフシーズンテストの地としても定着しています。各チーム、ライダーにとって情報の多いサーキットでもあるため、シーズン中の進化を確認する意味でも見どころの多い戦いとなります。

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青山博一とNPO活動、の巻

今回は、青山博一が協力しているNPO(NonProfit Organization:非営利団体)活動について説明しよう。欧州の選手たちは、自らの社会的な知名度を上手に活用し、公人としての責任を果たすべく積極的な社会貢献活動を行っている。交通安全の啓蒙や難病治療基金の広報活動など、その範囲は多岐にわたる。

青山が協力しているNPOは2つ。医療研究活動の“Wings for life”と、地球温暖化防止活動の“青山博一の森”だ。

“Wings for life”の正式名称は、“The Wings for Life Spinal Cord Research Foundation”(ウイングス フォー ライフ・脊髄研究財団 http://www.wingsforlife.com/)という。現在は一度損傷してしまうと四肢に障害を生じることが多い脊髄の回復可能性を模索する治療研究活動や各種調査、予防対策などの活動を行っている団体だ。モータースポーツ界からの賛同者も多く、ダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)やアレックス・ホフマン氏(現TVコメンテーター)もこの活動に協力しており、四輪界ではF1ドライバーのセバスチャン・ベッテル選手やマーク・ウェーバー選手など、そうそうたる顔ぶれが当団体の活動を支援している。

青山博一のヘルメット

この組織が活動を開始したのは2004年。当時KTMから250ccクラスに参戦中だった青山も、その主旨に賛同して支援を開始した。

「元モトクロスチャンピオンのご子息で昔から仲のいい人がいるのですが、その人はモトクロスのチャリティイベント中に転倒して、その事故が原因で車椅子生活になったんです。また、マウンテンバイクの選手で写真撮影中に脊髄を損傷する事故にあい、車椅子生活になった知人もいます。その人が言っていた『I used to think too much, but now I have much time to think.(昔はなにかとよく考えすぎたものだけど、今は考える時間がたっぷりあるんだ)』という言葉を聞いたときは、ズシリ、と胸に響くものがありました」

偶然にも、青山も今年の6月にシルバーストーン・サーキットで転倒し、脊椎を圧迫骨折するケガを負った。幸いにも中枢神経に影響はなく、2カ月の安静でレースの現場へ復帰できたが、自宅静養中にはいろいろなことを考えたという。

「2カ月間家にいて動かないでじっとしていると、考える時間もありますからね。実際にそういう状態になってみないとわからないことも多いと思いますが、僕も約1カ月、ほぼ寝たきりの生活を送ることになりました。僕の場合は治るケガだったので、まだ我慢もできましたが、治らないとなると、これはつらいだろうなと思いました。自分自身も事故をしたことで脊椎損傷を負った人たちの気持ちがわかる、とまではとてもいえませんが……。それでも、改めてこういう活動は大事だなと再認識しました」

もう1つのNPO活動“青山博一の森”(http://www.hiro-aoyama.com/afforestation.html)は、レース活動やそれにともなう移動の際に生じる二酸化炭素を植林で吸収し、プラスマイナスゼロに近づけること(カーボンオフセット)を目的とした、地球温暖化防止活動だ。中華人民共和国・蒙古自治区鳥蘭察布市の土地に85本のカラマツが植林され、今後成長してゆく樹々が何十トンもの二酸化炭素を吸収する。

この“青山博一の森”を支えるNPOも、知人とのつながりを介して知り合ったのだという。

「知人を通じて自然保護や環境保全活動をしている人に知り合うことがあって、僕が少しでも環境保全に参加、協力できればと思って“青山博一の森”を始めることにしました。

環境保護は大事ですよね。レースという最先端技術が培われる場所に自分はいつも身を置いていて、そこで使われる技術が一般にフィードバックされていく。それらの技術が環境保護に有効に生かされていけばとてもうれしく思います。また、レース活動で発生する二酸化炭素も、“青山博一の森”を通じて少しでも減少させることに貢献できれば、環境にとってもいいんじゃないかな。環境が悪化すると、人間は生きていけないですからね」

ちなみに、第15戦が行われたマレーシアは豊富な熱帯雨林を擁する土地としても有名だ。熱帯特有の濃緑の樹々に囲まれたセパン・サーキットで10月10日に行われた決勝レースで、青山は今季自己ベストとなる7位に入った。4位や5位も見えるなかで最終ラップまで激しいバトルを続けた今回の結果は、次戦以降に向けた大きな自信にもなったようだ。

セパン・サーキット
青山博一

「自己ベストリザルトに関しては、素直にうれしいですね。でも、4位を狙える位置だったし、さらにいけそうな感触もあったので、その意味では7位のゴールは悔しい、という気持ちもあります。自分の中では、ここをよくしたらさらに速くなりそうだということも見えてきているので、確実にステップを踏みながら、次のオーストラリアGPもこの流れでウイークを作っていければいいかな」

シーズン終盤を迎え、着実な歩みで前進を続ける青山の次戦に期待しよう。

青山博一

プロフィール

青山博一
Hiroshi Aoyama

5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権を制覇。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年に全日本タイトルを獲得しました。翌04年からHondaのライダー育成制度「Honda Racingスカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。昨年、日本人として8年ぶりとなる250cc世界チャンピオンに輝きました。2010年は世界最高峰レースMotoGPにステップアップして、次なる頂点を目指して戦っています。