安全性向上とチャンスの平等化を狙ったアメリカン・スタイル
バラエティに富んだチャンピオンシップ [UPDATE]★
1996年のIRLインディカー・シリーズ発足時に、ドライバー個人が争う「ドライバー・チャンピオンシップ」と、エントラント・チームが競う「エントラント・チャンピオンシップ」、そしてそのシーズンの新人ドライバーのナンバーワンを決める「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」の3つが制定された。
2003年に、エンジン・メーカーが争う「マニュファクチャラー・チャンピオンシップ」と、車体メーカーが競う「コンストラクター・チャンピオンシップ」が新設された。2006年からエンジンが事実上Hondaのワンメイクとなり、2007年は全レギュラー・チームがダラーラ社の車体を選択したが、この2つのチャンピオンシップはルール上では成立している。
★そして2010年、オーバル部門とロード部門それぞれのチャンピオンを決定する新しいチャンピオンシップ・システムが導入された。オーバル部門は最終第17戦ホームステッドをのぞき、オーバルコース7戦での合計獲得ポイントを元にチャンピオンが決定する。ロード部門はロードコースとストリートコースを舞台とした9戦でチャンピオンが争われる。なお最終戦は総合チャンピオンの決定戦として、このチャンピオンシップ・システムからは除外されている。
チャンピオンシップのポイント・システム
チャンピオンシップはポイント制である。1レースごとに成績順位におうじてポイントがあたえられ、シーズンを通じてもっとも多くのポイントを獲得したものがチャンピオンとなる。「ドライバー・チャンピオンシップ」と「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」は、ドライバー個人にポイントが与えられる。「エントラント・チャンピオンシップ」は、エントラント・チームではなく、そのチームがエントリーしているカーナンバーにポイントが与えられる。したがって、シーズン途中にドライバーが交替しても、あるいは車体やエンジンを変更しても、カーナンバーを変更しなければ、引き続きポイントを累積していける。
上段中央の表は、1レースで、ドライバーとカーナンバーに与えられるポイントである。最下位になってもポイント10点が与えられるところが、チャレンジ精神を評価するアメリカン・スタイルで、10位以上にしかポイントを与えないF1グランプリと異なるところである。
オーバルとロード、ふたつの予選方式
決勝レースのスターティング・ポジションを決める予選(クオリファイ)は、オーバル・コースでは、1台ずつ4周の連続走行をするシングル・カー・アタック方式である。その結果は4周の平均スピードで決められる。ロード・コースでは、3つのセグメントで予選が運営される。セグメント1は、参加全ドライバーを2グループに分けて、それぞれ規定の時間内でタイムアタックをおこなう。シングル・カー・アタック方式ではなく、同時に走行する。セグメント2は、セグメント1の2つのグループの上位6台、つまり合計12台が同時にアタックする。セグメント3は、セグメント2の上位6台が同時にタイムアタックをする。計測されたラップタイム順にスターティング・ポジションが決まる。
レース・フラッグとフルコース・コーション
決勝レースでイエロー・フラッグが出ると、全車はスローダウンし追い越し禁止となる。危険回避と安全確保のために、ただちにペース・カーがコース・インし、トップのマシンを先頭にした1列縦隊のローリング走行を先導する。したがって、同ラップを走る各ドライバーたちについていた差がなくなる。イエロー・フラッグが解除されると、再スタート状態となりバトルが再開される。また、フルコース・コーションは、絶好のピット・ストップ・タイミングとなる場合が多い。コース上ではスロー走行のため、ピット・ストップによるタイム損失が相対的に少なくなるからだ。
フルコース・コーションはレースの展開や勝敗を左右することがあり、結果的にレースを盛り上げ面白くする効果がある。
レース中、コース・マーシャルはさまざまな色のフラッグを使い分け、ドライバーたちに指示や忠告を与える。ホワイトフラッグなど、インディカー・シリーズ独特の意味を持つフラッグもある。
タイヤ・レギュレーション導入 [NEW]
2009年より、ロードコースとストリートコースでのオーバーテイクを増やすことを目的としたタイヤ・レギュレーションが新設された。通常使用されるプライマリー・タイヤ(通称ブラックタイヤ)の他に、オルタネイト・タイヤを使用しなければならない。オルタネイト・タイヤは識別しやすいようにサイドウォールが赤く着色されているため、通称レッドタイヤと呼ばれている。
レッドタイヤはブラックタイヤに較べて柔らかいトレッド・コンパウンドが用いられているため、路面へのグリップが高く、ラップタイム向上が見込める。その反面、耐久性が劣るというデメリットがある。
レースウィークにはブラックタイヤ6セットとレッドタイヤ3セットが各ドライバー(各マシン)に支給される。決勝レースではどちらのタイヤでも最低2周以上走ることが規定されている。つまり片方のタイヤだけで走り切ることはできない。どのタイミングでどちらのタイヤを投入するか、レース戦略の要となるレギュレーションである。