世界中の自動車メーカーが挑戦を続けてきた歴史がある
2006年からHondaのワンメイク時代が始まった
IRLインディカー・シリーズの華であるインディアナポリス500マイル・レース(通称インディ500)の100年に近い歴史は、世界中の多くの自動車メーカーが挑戦を続けてきた歴史でもある。
インディ500の第1回大会は1911年に開催されている。それは20世紀初頭、自動車が生まれたばかりの時代であった。同時に自動車レースの歴史が始まった。2台の自動車と2人の腕自慢ドライバーがそろえば競争しないわけがない。
インディ500の舞台となるインディアナポリス・モーター・スピードウェイは、そういう時代に建設された。1909年当時、アメリカでは31万台の自動車が生産され、登録して道路を走っているのは47万台で、すでに世界最大の自動車市場であったという。アメリカには自動車メーカーの看板をかかげる大小さまざまな会社が200社ほどあったそうだ。
初期のインディ500で活躍したアメリカ・ブランドは、マーモン、ビュイック、マーサー、ナショナルだが、たちまちのうちにフランスのプジョー、ドラージュ、ドイツのメルセデス、イタリアのフィアットが大西洋を越えて押し掛けてきた。第1次世界大戦後はフロンテナック、デューセンバーグ、ミラーなどのアメリカン・ブランドが勝っている。この時代は少量生産の市販レーシングスポーツカーやそれを改造したマシンが競い合った時代だ。
やがて1930年代になるとレース専用マシン、すなわちレーシングカーの時代が始まる。そのとき登場してきたのがアメリカのレース専用エンジンであるオッフェンハウザーであった。4200cc直列4気筒で、愛称はオッフィーである。オッフィーはまことに強く、1935年から1976年まで41年間で27勝し、そのうち47年から64年まで18連勝という、いまだに破られることのない記録を残す。
このオッフィーに挑んだのがビッグ3のひとつフォードであった。1965年に英国ロータス・チームのミドシップ・マシンにフォードV8が搭載されて優勝すると、1970年代後半までオッフィー対フォードV8激闘の時代が続く。これに勝利したフォードは、英国のレーシング・エンジン・メーカーであるコスワースとパートナーシップを組んで勝ち続ける。
1980年代後半になるとゼネラルモーターズがシボレー・ブランドで参戦を開始し88年から6連勝して、フォード・コスワース全盛時代を終わらせた。この時代はドイツのポルシェ、メルセデス・ベンツ、イタリアのアルファロメオがインディ500にチャレンジしたが、勝利したのは94年のメルセデス・ベンツだけであった。
1996年に現在のIRLインディカー・シリーズが発足すると、フォード、ゼネラルモーターズのビュイックやオールズモビル、インフィニティ(日産)が覇を競ったが、オールズモビルが圧勝した。
1994年と95年にインディ500にチャレンジしたHondaは、2003年に挑戦を再開し、シボレーとトヨタを好敵手とした。Hondaは04年、05年と連覇する。そして06年、シボレーとトヨタがIRLインディカー・シリーズへのエンジン供給を終了したために、実質上のHondaワンメイクとなった。