RC30 Forever

熱きHondaスピリットの塊、RC30よ、永遠なれ

VFR750R VFR750R

モノづくり もの語り

第5話
クランクシャフト編

再生産の検討開始

クランクシャフトはV4高性能エンジンに必要な強度を確保するために特殊な強化処理を施していました。直4エンジンのクランクシャフトには実施していない処理で、当時のV4エンジンの高性能を物語っていると思います。その強化処理は、当時ホンダエンジニアリングが開発した機材、処理条件を用いて浜松製作所で実施されていた門外不出の技術でした。この強化処理は現在の熊本製作所には継承されていないため、リフレッシュプランの検討開始当初、どうやってこの強化処理を再現するかが非常に大きな課題でした。

クランクシャフト編

特殊強化処理の再現

我々が新機種開発時にクランクシャフトの試作を依頼する協力メーカー様に相談したのが2019年の初頭です。古くから本田宗一郎とは懇意の会社で、Hondaの歴代F1のクランクシャフトも製作していました。そこで驚くべき回答を得ました。協力メーカー様は強化処理を行うためのドイツ製最新鋭設備をすでに購入しており、処理の先行確認テストは終了していて、既にHondaからの注文に対応可能な状態でした。
その強化処理は、現在では欧州の4輪の量産車に一部採用されているそうです。古くから参考書に理論は掲載されていたのですが、その強化技術を欧州ではかなり以前から量産適用していたようです。まさに偶然とはいえ、何かの力で我々のプロジェクトのために用意してもらったような錯覚を覚え、協力メーカー様への感謝の念に堪えませんでした。

製作開始!

クランクシャフト再製作に当たっては新たに3D DATAを作成し、その3D DATAをもとに全面切削加工しています。
今回の再生産では数量が限られるため、通常の量産機種のように鍛造素材を使わずに全面削り出しという一品製作に用いる高価な手法で再現しています
2020年の春には上記特殊強化処理の事前テストも終え、品質確認を順調に進めていくことが出来ました。
クランクシャフトはエンジンにおける基幹部品のため厳密な品質基準を持っていますが、先行トライ品での確認結果、問題なく基準をクリアしていることが証明され、いよいよ販売用の部品製作が開始されました。
このRC30用クランクシャフトの再生産においては、協力メーカー様が特殊設備を購入していたという偶然にも助けられて何とか完成までこぎつけることが出来ました。我々開発エンジニアとしても、長い間部品をお待ちになっていたお客様に再び提供できることが何よりの喜びです。

クランクシャフト編