いざ実戦、全力でいこう。いざ実戦、全力でいこう。

'21.10.31
ハチ高原ヒルクライム参戦。

K-CLIMBの記念すべきレース初参戦となったのは、兵庫県・養父(やぶ)市での「ハチ高原ヒルクライム」、通称「ハチヒル」。全長2.5km、高低差141m。幹線道路「但馬アルペンロード」を封鎖して行われ、K-CLIMBはエキシビジョンランにエントリー。ハチヒル自体が町おこしのお祭り的な要素をもち、クラシックカーや初心者も参加できるなどモータースポーツの敷居を下げる、まさに「オモスポ」の心とも通じるイベント。エキシビジョンランは他車との競争ではなく、自身の限界への挑戦として、思いのままに曲がれ、速く走れるクルマをめざしたアイデアが、公道でどんな価値を発揮するかを検証できる絶好の機会。エスケープゾーンがなく、一部には逆バンクもあるS字コーナーが連なる峠道を、全開でアタックしました。

■10月5日 
事前検証@富士川 「これ全然別物だよ」

本番26日前、K-CLIMBを富士川に持ち込み、車両セッティングを検証。「やりたいです、交ぜてください!」とこの異色のプロジェクトに志願して加わった女子社員も含む開発メンバーと、共同で開発してきた株式会社HKSのスタッフも合流。この日は、それまで栃木の施設でセッティングを続けてきたサスペンションの操縦安定性や乗り心地を主な確認メニューとし、全員で試走しては意見を交換してひたすらチューニング。ダンパーの減衰力やダンパーそのものの仕様を変えたり、前後のスプリングレートを変えたりしながら煮詰め、終わる頃には「あれ、これ最初と全然別物だよ!」と驚くほどにまとめ上げました。

■10月31日 当日AM@現地 
「やっぱりオモシロイ!」

前日に搬入し、試走してコースを確認。開催当日も、まずはコース確認を兼ねてのランから。車体の前後に簡易ディフューザーを付け、テストドライバーを務めてきた開発者がステアリングを握り出走。2車線をいっぱいに使い、全開で疾走するK-CLIMB。途中に広がる絶景や、道路に近い斜面から投げかけられる観衆の熱い視線も、サーキットとは違うヒルクライムレースならではのオモシロさです。1回目のランは1'51"476。2回目のランでは約0.1秒短縮し、3回目のランでは約1秒削った1'50"471をマーク。コース取りもつかみ、イキイキしてきた走り。ドライバーも普段の仕事では見せない笑顔を見せます。「モータースポーツはやっぱりオモシロイ!」。

■当日PM 
「遅っ!外そう」で、最速

午前中のタイムとドライバーのフィールをもとに、午後は用意してきたテールゲートスポイラーを装着してアタック。テールゲートスポイラーはもともとオートサロンのショー用に制作したもので空力の裏付けが薄く、以後の開発でも、公道で実際に限界走行を行い性能を試すことは困難。今後、お客様に近い使用環境で空力に寄与する商品を開発するうえでも、このハチヒルに投入して性能を確認し、煮詰めていきたいと考えていました。午前中の走りの感触も聞いて形状を調整していたスポイラーを付け、走ってみると…。1’51”577。何と逆にタイムが遅くなり、ドライバーも「遅っ!引っ張られてクルマが前に進まない」とコメント。重量がかさんだうえ、クルマが後ろに傾く登坂路ではなおのこと、速度をスポイルする方向に働いたのかもしれません。「外そう」。頑張ってつくったスポイラーを外してアタックすると、48”912!午前の1回目から比べると2秒以上短い最速タイムのマークに成功しました。

■参戦を終えて

レースを終えてチームが感じた大きなことは、「ここまでいける、と同時に、まだまだやれる」という可能性の伸びしろでした。「今はまだスタートラインに立つか立たないかくらい」と言うほどの心境で、今後の開発に向けて気持ちをさらに奮い立たせ、テールゲートスポイラーも反省を生かし、早速研究と実験を重ねて新しい仕様をつくり上げています。そして「楽しい」という想い。「楽しい、楽しいと言っていると遊んでるのかと言われそうですけど、その楽しさを商品化してお客様にお届けできるよう頑張っているところです」。平地とヒルクライムで異なるセッティングの手法など、今までにない様々なノウハウの蓄積となったレース。「もっと車両を仕上げて、またここで走らせたい」。見据える先は、もう次へと進んでいます。