私は主にe-DRAGに関わっています。Honda eはHondaで初となる量産のフルEV(電気自動車)ですが、EVといえば、環境性能がもっぱら注目を集めていて、従来のクルマ好きにとってはオモシロくないと思う方も多いんですね。実際、このスタイルのままエンジン車にすればいいのにという声も耳にしました。けれどもモーターは、回転の瞬間から最大のトルクを生むという、エンジンでは決して望めない瞬発力がある。しかもHonda eはダッシュに有利な後輪駆動。これらを活かして、EVのイメージを一変するようなクルマにしたかったんです。ドラッグレースは、実はアクセルをベタ踏みすればいいっていう簡単な世界ではなく、まっすぐ走らせることも、動力を余さず車輪に伝えきることも難しい。タイヤの空転を防ぐために、サスペンションの精度、車体前後の重量バランスなどを緻密に考える必要があるんです。軽量化も、ここまでやるかというくらい、ボディーパネルのほとんどをカーボン製にし、タイヤハウスを切って、中のインナーフェンダーも外したりと徹底しています。ドラッグレースは数秒から十数秒で結果が出る競技。その一瞬の走りの中でも、私たちが新しく学べることはいっぱいあります。e-DRAGはビジネスにすぐ直結するわけではないですが、でも、そんなクルマに本気で取り組むことを許してくれる会社はなかなかないですね(笑)。みんなクルマが大好きなんですよ。