NSX-GTのエンブレムに込めたHondaの熱き想い

NSX-GTの車体にある真紅の“H”マーク。それは、Hondaのレーシングカーであることの証であり、Hondaの勝利への情熱が宿るエンブレムだ。
初挑戦でいきなり世界の最高峰レースへ挑んだマン島TTレース、そしてF1。そのチャレンジは、「やるからには世界の頂点に立つ」というHondaの熱き勝利への情熱に端を発している。そして、インディカー・シリーズ、ル・マン24時間レースなど、Hondaはすべからく“勝つため”にレースに挑んできた。
サーキットにおける“ホンダ・スピリット”とは、この一点に尽きる。
「レースで全勝することが困難なことは当然わかっています。SUPER GTでも当然非常に難しい。それでも我々は“H”マークを掲げて走っている以上、毎戦勝ちたい。そのためにここに来ています」
雨上がりの鈴鹿サーキット。SUPER GT合同テストの準備を進めるピットで、NSX-GTのプロジェクトリーダー、白井 裕はきっぱりと言い切った。
「もちろん、勝つことでHondaのクルマが売れてくれれば嬉しいです。でも現場にいる者は、勝つためだけに“H”マークを走らせているのだ」と。

レースで勝ち続けるのは難しい。いいドライバー、速いマシン、いいマネージメントのできるチームという、優れた総合力が存在して初めて勝利を得ることができる。

「車体やエンジンなど、ノウハウを持ったコンストラクター、チューナーと協力しながら開発を行いますが、統括するのは本田技術研究所。勝利を得るためには、“オール・ホンダ”ということで、全体の気持ちのベクトルをひとつにしていきたい」。

“オール・ホンダ”。それは、Hondaが独立したレース専門の会社を持たないところにも表れている。時代にさきがける技術を生み出すというHondaのポリシーは、レースの現場においても存分に発揮される。事実、NSX-GTプロジェクトリーダーである白井は、CVCCエンジンの研究開発に携わったのち、F1エンジン開発にも参画した経験の持ち主。低公害エンジン、極限のパワーを絞り出すF1エンジンの開発に関するノウハウは、NSX-GTが目標とする“リストリクターで吸気を制限されても、高出力と優れたトルク性能を発揮できるエンジン”の開発に活かされた。

開発を統括する本田技術研究所、車体の開発を担当する童夢、エンジンのチューニングを担当するM-TEC。そのリソースとノウハウがすべてかみ合い、ドライバーやチームのポテンシャルを十二分に引き出すことができたからこそ、2007年のドライバーズランキングの上位4位までをNSX-GTが独占するという結果に結びついたと言えるだろう。

昨年の勝利によって自らに課される使命と闘いながら、マシン、チーム、ドライバー、その全てに“勝つためにレースをする”というスピリットを血液のように巡らせ、2年連続のダブルタイトル獲得をめざす。NSX-GTプロジェクトの挑戦は、これからも続く。その熱き走りに、ぜひご注目いただきたい。