2016年、MotoGPクラスではメーカーの参戦へのハードルを下げるため、大きなレギュレーション変更が行われ、戦力の均衡化が図られることとなります。
最も大きな変更点は、ECU(エンジンコントロールユニット)が全車で統一化され、各メーカーのコンピュータによる性能の差がなくなったことでした。さらに、年間に使用できるエンジンの数やシーズン開幕後の開発凍結などのルールが定められましたが、これは新規参入メーカーや優勝経験のないメーカーに有利な内容でした。また、公式タイヤサプライヤーも変更され、それまでのブリヂストンから、8年ぶりのミシュランタイヤに。路面とマシンを結ぶ唯一のパーツであるタイヤが変更になることは、マシンに大きな影響を及ぼします。
常勝コンストラクターの宿命ともいえる逆風の中、Hondaは新レギュレーションに対応したRC213Vの2016年型を製作し、チャンピオンシップに挑みました。MotoGPの2016年シーズンは、4メーカー9名ものレースウイナーが生まれる混戦。Hondaは惜しくも、チーム優勝をライバルチームに奪われたものの、マルク・マルケス選手がライダーズチャンピオンに輝き、Hondaはコンストラクターズチャンピオンを獲得し、2冠を達成。
さらに2017年には念願のチーム優勝も果たし、3年ぶりとなる3冠を達成。続けて、史上最多となる19戦が組まれた2018年も3冠を獲得しました。
2019年には、それまでライバルチームに在籍していたホルヘ・ロレンソ選手が、2020年には、マルク・マルケス選手の弟、アレックス・マルケス選手がHondaに加わり、さらに体制が強化されました。Hondaは2019年までに3年連続、9回目の3冠を達成。マルケス選手を筆頭にHonda勢は圧倒的な強さで勝利を重ね続け、次々と記録を塗り替えています。
Moto3クラスでは、2016年シーズンは、HondaのNSF250RWを駆るエネア・バスティアニーニ選手がシーズン後半にかけて着実にポイントを重ね、ライダーズランキング2位。フル参戦2年目のホルヘ・ナバロ選手は、3位でシーズンを終えました。
2017年シーズンは、エンジンと空力面で進化を遂げた新型のNSF250RWを15台投入。8チーム体制でチャンピオン奪還を目指しました。マシンの性能を存分に引き出し、10勝を挙げたホアン・ミル選手が、参戦2年目にしてタイトルを獲得したのを皮切りに、Honda勢が全18戦中13戦で表彰台を独占。ほかのマシンの追随を許さない速さでシーズンを席巻しました。
2018年はライバルチームの撤退が相次ぎ、KTMとHondaの対決に 。Hondaは、タイトル連覇を掲げて、7チーム13台体制で臨みました。ウイナーから1秒差以内に10台以上がひしめく状態が毎戦のように続き、シーズン終盤までし烈なタイトル争いが繰り広げられましたが、NSF250RWを駆るホルヘ・マルティン選手が7勝と圧倒的な優勝回数を誇り、栄冠を手にしました。
2019年も混戦は続きますがHondaは、7チーム14台体制で挑み、ダラ・ポルタ選手が、安定した戦績で第17戦までの間に計10回表彰台に登壇。シーズン終了まで2戦を残して、ライダーズタイトルを獲得し、Hondaはコンストラクターズタイトルを3年連続で獲得しました。
2020年は、他のモータースポーツ同様、MotoGPも新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、3月にMoto2、Moto3クラスのみのレースが行われた後、約4カ月間に渡りシーズンが中断。誰も経験したことのない苦難の中、MotoGPクラスは事実上7月の開幕となりました。無観客開催で再開されたシーズンでは、マルク・マルケス選手、カル・クラッチロー選手がケガに悩まされますが、中上貴晶選手が上位入賞を果たし、Moto3クラスでは鈴木竜生選手が優勝するなど、日本人ライダーがHondaマシンで活躍を見せています。
そして、HondaはWGP800勝という前人未踏の大記録を達成。これからも、さらなる記録への挑戦をしていきます。