JSB1000 2018 | JRR 総集編

古豪Team HRCの復活。高橋巧が総合2位でシーズンを終える

昨年に比べて2レース制の大会が増え、全12レースでタイトルが争われた2018年シーズン。Hondaは10年ぶりにワークス活動を再開させ、かつての常勝チーム「Team HRC」が復活。監督にはMotoGP最高峰クラスで日本人ライダーとして初めて優勝を挙げた宇川徹、ライダーには前年のJSB1000クラスチャンピオンである高橋巧を起用。ニューワークスマシン「CBR1000RRW」を投入してシーズンへと挑んだ。

開幕戦に向けては、3月10日~11日に行われた「鈴鹿サーキット モータースポーツファン感謝デー」での新生Team HRCのお披露目、翌12日が国内初テストの予定となっていた。しかし、このイベントを前に高橋巧がトレーニング中に負傷、左手指を骨折してしまう。当然、事前テストはキャンセルせざるを得なくなり、新マシンのシェイクダウンも済ませられぬ中、新生Hondaワークスチームの戦いが幕を開ける。

結局、高橋がマシンに初めてまたがったのは、土曜、日曜にレース1と2が行なわれる開幕戦ツインリンクもてぎ直前の木曜日。チームスタッフ全員が顔合わせしたのも、この日が初めてだった。しかも迎えた土曜の公式予選は、泣きっ面に蜂のウエットコンディション。高橋巧は負傷を抱え、マシンテストをしながらのタイムアタックだったが、レース1では6番グリッド、レース2では4番グリッドを獲得。万全とはとても言えない状態で、チームを鼓舞する好走をみせた。

迎えたレース1は、気温が下がり、真冬を思わせるかのような天候の中で行われた。レースでは、中須賀克行(ヤマハ)、清成龍一(MORIWAKI MOTUL RACING)、そして高橋巧の3台がトップグループを形成。レース終盤まで3番手につけていた高橋だったが、20ラップ目にファステストラップを記録すると、その翌周には清成を捉えて2番手に浮上。そのままチェッカーが振られ、Honda勢2人が表彰台に登壇を果たした。両レースでの表彰台を目指してレース2へ臨んだ高橋巧だったが、2コーナーで後続車に追突されて27位フィニッシュ。清成のチームメートの高橋裕紀がHonda勢最上位となる5位につけた。宇川監督は、表彰台とノーポイントに終わった開幕戦を「このもてぎで新チームが船出できた」と表現。出遅れたものの、チーム一丸となって急ピッチでマシンを仕上げていくことを誓う。

JSB1000

続く第2戦鈴鹿サーキットでは、予選から高橋巧と中須賀によるライバル対決が激化。予選では中須賀がコースレコード更新となる2分4秒876につけるも、高橋巧も自己ベスト更新となる2分5秒465を記録し、2番手に。レース1、レース2も実質上、この2人による一騎打ちとなった。高橋巧は両レースで2位表彰台を獲得。優勝には手が届かなかったものの、レース後には「昨年に比べて中須賀選手との差は確実に詰まっている」と、手ごたえをつかんだ様子だった。

その後も高橋巧は第3戦オートポリスで4位、第4戦スポーツランドSUGOではシーズン2度目のダブル表彰台(2位/2位)に入り、着実にポイントを積み重ねていく。ここまででランキングトップは中須賀。高橋巧は2位の渡辺一馬(カワサキ)と同点タイで3位につけていた。

7月29日には真夏の風物詩、鈴鹿8時間耐久ロードレースが開催。高橋巧はMotoGPライダーの中上貴明、スーパーバイク世界選手権に参戦するパトリック・ジェイコブセンらとタッグを組み、ヤマハの4連覇を阻止すべく過酷なレースに挑んだ。結果は2位となったものの、全チームで唯一、ヤマハと同一周回数を回りきり、ファンの声援に応えた。

8耐から3週間後に開催された第6戦ツインリンクもてぎでは、高橋巧が今シーズン8レースで6回目となる表彰台を獲得、ランキングでも単独2位に浮上した。続く第7戦オートポリスでも3位に入った。しかし、ここまで一勝も挙げられていないという状況に、チームが満足していないことはだれの目にも明らかだった。第8戦岡山国際サーキットは悪天候によりレースが中止に。チームは今季初優勝を挙げるべく、ホームである鈴鹿サーキットでの最終戦に臨んだ。

JSB1000を含む全クラスにとってタイトル決定戦となった最終戦。ランキングトップの中須賀には43ポイント離されているものの、新マシンで一番走りこんでおり、高橋巧も相性がいいと語る鈴鹿でのレースに、チームの期待も高まっていた。10周で争われる短期決戦となったレース1では、2番手からスタートダッシュを決めた高橋巧がトップに浮上。中須賀もペースアップしてそれを追いかけるも、高橋巧はそれを寄せ付けない好ペースで走行を続け、3ラップ目には中須賀に3.568秒のアドバンテージを築く。さらに5ラップ目にはファステストラップを更新する走りでその差を広げ、見事、今季初優勝を飾った。2位に中須賀が入ったことで、この時点で中須賀のライダーズタイトル獲得が決定。高橋巧はレース2でも3位表彰台を獲得し、最終的に総合2位でシーズンを終えた。高橋裕紀が総合5位、最終戦のレース2で今季初優勝を挙げた清成は総合8位に。自身にとってルーキーイヤーとなった水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO.Honda)は総合11位でシーズンを終えた。

最終戦レース1を終えて、「ワークスライダーとして一度も勝てないままで終わるわけにはいかなかった」と語った高橋巧。Hondaのホームで独走優勝を決めたその走りは、開幕当初に宇川監督が目指したいと言っていた、「憎たらしいほど強いHRC」の復活を予感させるものだった。

- POINTS -

順位 ライダー マシン 総合
1中須賀克行ヤマハ271
2高橋巧Honda229
3渡辺一馬カワサキ197.5
4野左根航汰ヤマハ187
5高橋裕紀Honda174.5
8清成龍一Honda143.5
9秋吉耕佑Honda141
11水野涼Honda106
14山口辰也Honda71
15日浦大治朗Honda69.5
17ザクワン・ザイディHonda60
22濱原颯道Honda36
31名越哲平Honda6
33小島一浩Honda2
35中村知雅Honda1
36中津原尚宏Honda1

- FEATURED CONTENT -