
平均時速300kmオーバーとなるオーバルのレースで、ドライバーの前に立ちはだかる膨大な空気の壁。レース中に首位へ浮上し、トップとなったドライバーは先頭で空気を切り裂く役目を負うことになり、抵抗が増えれば燃費が悪化するのは避けられません。
その逆に、後続のマシンは前車の後ろにいれば空気の抵抗が少なくなるため、前に近づいていくことが可能で燃費にも有利。日本ではこのような状況をスリップストリームと言っていますが、アメリカでは“ドラフティング”と呼んでいます。
ここで注意しなければならないのが、マシン同士が近づきすぎると空気の乱れが生じ、互いのマシン特性が急激に変化してコントロール不能になること。また、台数が多くなればなるほど空気は影響を受け、それによって発生する乱気流(タービュランス)はとても複雑になり、突然マシンバランスが崩れてクラッシュに遭遇する危険性もあります。
インディアナポリス・モーター・スピードウェイのストレートは1kmですが、直線に入ったマシンは1km先で発生したタービュランスの影響も受けるほど。ドライバーたちは目に見えない空気のトラップ(罠)に細心の注意を払い、限界ギリギリの走りをしているのです。