NSXは、歴史に残るスポーツカー。ぜひこれからもNSXを可愛がっていただきたいと思います。中嶋 悟 NSXは、まぎれもなく日本を代表するスポーツカーです。僕はNSXを開発しているときから乗っていますが、あれがもう10年以上も前と思うとなんか感慨深いですね。
当時、いろいろなクルマと乗り比べましたが、NSXはライバルと目される当時のヨーロッパのスポーツカーと走りを比較してもまったく遜色なかった。それどころか、運転しやすいからむしろ速い。NSXは、より多くの人にスポーツカーを楽しんでもらいたいという思いで開発していましたから、運転のしやすさには特に留意してセッティングしました。テストを行っているとき、オートマチックトランスミッションがあった方がいいと提案したこともあったと思います。毎日乗るということを真剣に考えたら、オートマチックトランスミッションの方がいいという人もいると考えたからです。僕が、サーキット以外ではほとんどオートマチックトランスミッションのクルマに乗っているというのも影響しているのかな(笑)。
NSXは日常走る街なかから、ワインディング、サーキットまで走って楽しいという、きわめて広いレンジで究極をめざした本当に歴史に残るスポーツカーだと思います。これは、相当エンジニアリング的に高度な技術と、走りをじっくりと熟成する執念がなければ実現することのできない高い目標。それを達成したHondaの技術者はすごいですよね。

そして、僕はF1を終えてから、仕事でニュルブルクリンクに行ったことがあるんですけど、そのとき、今度出るNSX-Rが120kgも軽量化したことを知りました。驚きましたね。ただでさえ軽いNSXをどうやったら120kgも軽くできるんだと。これは相当走るな、と予想した通りNSX-Rはレーシングカーに近い、痛快なスポーツカーでした。
NSX-Rについて、街なかでは足が硬いとかいう話しを聞きますが、僕はそういう評価を行うこと自体が違うと思いますね。NSX-Rは、街なかどころか、ワインディングを走っても硬いと思う。でも、サーキットに行ったらものすごく気持ちよく走れるクルマです。そのためにつくったクルマだから、僕はそれでいいと思う。NSXの選択の幅がひとつ広がったわけだから、それはオーナーにとってすごくいいことだと感じたのを覚えています。

NSXが世に出ていくのと僕がF1を終える時期はほぼラップしており、同じHondaであり、その後NSXでGT選手権を闘うことを考えると非常に関係深いわけです。NSX fiestaに何度も参加して感じますが、10年もある意味で変わらないクルマを愛し続けるオーナーがこんなにもたくさんいるなんていいですよね。ぜひこれからもNSXを可愛がっていただきたいと思います。我々はレースで皆さんの期待に応えていきたいと思います。
( NSX Press vol.26 [2001年]の原稿に加筆 )
中島 悟 プロフィール
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