NSXのイベントを訪れると、「リフレッシュプランをやってみました」とか、「リフレッシュをするとまた新車みたいに走りが蘇るらしいので、それが今から楽しみ」というオーナーの声をよく耳にする。 愛情を込めて生み出したNSXを、「いつまでも大切に乗っていただきたい」という思いからNSXリフレッシュプランは1993年に生まれた。スポーツカーをつくりっぱなしではなく、それを走らせるステージやカスタマイズ、リフレッシュなどスポーツカーを楽しむ環境を育てていくのも使命であるというHondaの考えから生まれたプログラムである。 日本のスポーツカーで、こうしたメーカーとしてのメンテナンスプランが充実しているのも、人を中心に考えるNSXならではだろう。 世界を変えたスポーツカーであるNSXを所有しているだけでも羨ましいのに、オーナーが集うステージがあり、生産を終えてもなおHondaのメンテナンスのプログラムが継続される。そういう意味で、NSXにはスポーツカーを楽しむ充実した環境が用意されていると言える。やはり、そのクルマを生み出したHondaにメンテナンスをやってもらうのが一番いいではないか。 NSXリフレッシュプランを担当する技術者も、「できるだけ新車に近い状態に戻すことを目標にメンテナンスを行っています」と語っていた。もちろんそのためには、リフレッシュメニューをフルに行う必要がある。しかし、基本的なリフレッシュに加え、機能部のリフレッシュを行っただけでも“走りが蘇った”というオーナーが多い。タイプRオーナーなど、“購入当時は、こんなに足が硬かったんだな”と懐かしく思い出したと語っていた。そして、サーキットを何度も走ることで微妙なずれが生じていたアライメントなどを調整することで、“実に走りが素直になった”というオーナーも。こういう声を聞くと、いつかぜひやってみたくなるというのがNSXオーナーの素直な思いではないだろうか。
下記の表で一目瞭然であるが、NSXリフレッシュプランのなかで最も高額なのが外観リフレッシュである。しかしこの外観リフレッシュ、エンジンも内装も外し、ボディをフロントガラスとリアパーテーションガラスだけにして行う。おまけに、下地処理として、800番の細かいヤスリで“水研ぎ”をして表面を平滑にしてから塗装を行う。もちろん、熱処理によって焼きつける焼き付け塗装だ。しかも、内装で隠れてしまう内側も外板同様の塗装クオリティを求めるところに、“新車同様”をめざすリフレッシュ技術者のこだわりを感じる。したがって、ここまでの手間を考えると、外観リフレッシュ料金はあながち高いとは言い難い。 2006年から追加されたのは、ドアレギュレーターやリアハッチステーなど開閉部まわりの部品交換を行う「基本推奨」、スタビライザースプリングやブッシュの交換を行う「機能部推奨」。今までタイプRのみだった足まわり総合リフレッシュが、全モデルに適用になったこと、ブレーキリフレッシュの追加である。 これらは、これまでメニューに設定されていなくても、技術者とオーナーが話して交換を行っていたものであるが、そうしたやりとりを軽減すべくメニュー化したのである。また、価格はパーツのコストアップなどからわずかに引き上げられた。 NSXリフレッシュプランは、1993年の創設以来、オーダーが後を断たない人気のプランで、たとえ今すぐ申し込んだとしても、順番が回ってくるまでじっくりと待たなければならない。 しかし、こうして待ち時間を楽しむのも、バックヤードビルダーが行う欧州のスポーツカーのレストアでは当たり前の世界である。NSXリフレッシュプランも、厳選されNSXに精通した技術者が行う徹底したレストアといえる。じっくりと構えて楽しんでいただきたい。そして、新車に戻ったような愛車の感動を味わっていただきたい。