2016年のアジアロードレース選手権(ARRC)のスーパースポーツ600cc(SS600)クラスでは、ザクゥアン・ザイディ(MuSASHi Boon Siew Honda Racing)や、日本人ライダーの小山知良(T.Pro Yuzy Honda NTS)、高橋裕紀(MuSASHi Boon Siew Honda Racing)といったHonda勢が活躍。なかでも、1度の勝利を含む6度の表彰台登壇を果たしたザイディが14年以来、同シリーズにおいて2度目となるライダーズタイトルを手中に収めました。次いで小山が総合2位、高橋は総合4位と、CBR600RRを駆るHonda勢の活躍が光るシーズンとなりました。

開幕戦マレーシア大会は、レース1で小山が2位に、レース2で高橋が2位となり、それぞれ表彰台を獲得。また、母国大会に気合十分のザイディが両レースで3位表彰台を獲得しました。続く第2戦タイ大会でもHondaライダーたちの勢いは衰えず、レース1では小山がシーズン初優勝、次いでザイディ、3位に高橋がランクインし、Honda勢が表彰台を独占。レース2では、ザイディが優勝、3位に高橋が入りました。

続く第3戦日本大会では、日本人ライダーたちが奮起。レース1は、途中、赤旗が提示される波乱の展開となりますが、冷静な走りに徹した高橋が2位、激しい3番手争いを制した小山が3位表彰台を獲得します。そしてレース2は、デチャ・クライサルト(ヤマハ)との息詰まる攻防を繰り広げた高橋が、見事シーズン初優勝を飾りました。ここでは僅差で小山が続き、Honda勢による1-2フィニッシュで、会場に詰めかけた多くのファンを沸かせました。

第4戦インドネシア大会でも、ランキング上位につける小山、高橋、ザイディの活躍が期待されましたが、ここで主役となったのは、Astra Honda Racing Teamのゲリー・サリムでした。舞台となったセントゥール・インターナショナル・サーキットは、同国出身のサリムにとって慣れ親しんだコース。レイアウトなど、特徴を知り尽くしているだけに、予選で速さをみせPPを獲得すると、レース1ではトップグループでの戦いを制し、シーズン初優勝を飾りました。レース2でも、サリムの勢いは止まらずダブルウインを達成し、地元ファンを大いに喜ばせました。なお今大会は、両レースの4位までをHonda勢が独占。今シーズンを象徴する大会と言えました。

Hondaマシンを駆るライダーたちはその後も着実にポイントを獲得し、第5戦インド大会の終了時点で、小山がランキングトップ、ザイディが2位、高橋が3位となり、ランキングトップ3を独占。ポイントは拮抗しており、タイトルの行方は最終戦で決することになりました。

迎えたタイでの最終戦は、総合4位までにタイトルの可能性がありましたが、特に注目が集まったのは、やはりランキングトップ3を占めるHonda勢同士のチャンピオン争い。レース1は、小山とザイディが激しいバトルを繰り広げ、ザイディが7位、小山は8位に。ザイディはレース2で6位となり、両レースでポイントを獲得しました。対照的に、レース2での小山はマシントラブルに見舞われリタイア。これにより、わずか4ポイント差で逆転したザイディが、チャンピオンに輝きました。

振り返ってみると、全12レースの半数以上で日本人ライダーが優勝していた昨年やおととしと比べて、今年は10レースで日本人以外のライダーが勝利、それも5カ国からウイナーが生まれました。アジア地区での二輪競技の発展を願って設立された背景を持つARRC。日本以外のアジア人ライダーの成長が見て取れた今シーズンの結果は、そんなARRCの思いが実りつつあることを感じさせました。

また、アジア大洋州地域からライダーを選抜し、有望な若手を育成するカテゴリーであるアジア・ドリーム・カップ(ADC)では、昨年に引き続き参戦した中村大輝が躍動。開幕戦でダブルウインを達成すると、そこから他を寄せつけない圧倒的な速さでシーズンを駆け抜けました。最終的にはランキング2位に84ポイントという大差をつけ、参戦2年目にしてタイトルを獲得しました。