NSX press 2003 vol.30
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トップイメージ図 「あまりの素晴らしさにNSX-Rでレースをしたくなったんだ」
ホルスト・フォン・サウルマ氏写真 ニュル24hを多々闘い終えた3人が、あらためてその楽しさを語る独占インタビュー
 
スポルト・アウト編集長、ホルスト・フォン・サウルマ
ドイツで販売されていない市販車でレースに臨もうとした理由は何ですか?
「NSX-RのスーパーテストのことはHonda側から話を持ちかけられました。おそらくヨーロッパ市場への投入が念頭にあったのでしょう。これは掛け値なしに素晴らしいプロジェクトで、我々もHondaもこのテストを実施したことをとても誇りに思っています」

「 Honda NSXに初めて触れてから、かれこれ12年になろうとしています。当時、NSXはまだ市場に登場したばかりでしたが、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェ(旧コースのこと、北コースの意)と呼ばれる名高いコースでテストして、『これはセンセーショナルなクルマだ!』と直感しました。その時、私はNSXのことを『変革だけでなく革命をもたらすクルマ』と評価しましたが、この思いは今でもまったく変わっていません」 「基本的にはNSX-Rもまったく同じで、今年の初めに、ノルドシュライフェやホッケンハイムといったサーキットでポルシェ911カレラなどを相手に“スーパーテスト”を実施しました。これがまた素晴らしいテストで、ここで NSX-Rが1位に選ばれたのです。私としては当然の結果でしたが、仲間の間ではちょっと話題になりました。ロードカーとしての仕上がり具合には文句のつけどころがなく、本当の意味での“ポルシェ・キラー”だと感じたのです。しかも、ちょっと手を加えればレースにも出られることがすぐに想像できました」

「とにかくテストの内容が非常に素晴らしかったので、すぐにこれでレースをしたいという気持ちが湧き上がってきました。でも、そんなに改造を施す必要はありません。実際のところ、ギアボックスに安全装備、それと周辺にわずかな変更を加えれば大丈夫でした」
ポルシェは日常的な用途にも使える上に、レースにも使えるクルマとの定評があります。この点Honda NSX-Rはいかがですか?
「いやあ、まったく問題ありません。毎朝、パン屋に行ってロールパンを引き取るのに使えるくらい実用性が高いので、私は“ブレッド・ロール・カー”と呼んでいるくらいですし、にも関わらずそのままレースにも使える。本当に“毎日の足”になってくれるクルマですよ」
Honda NSX-Rはヨーロッパ市場でも成功すると思いますか?
「もちろんですよ。ランボルギーニやマセラーティ、それにポルシェだってこれに近いクルマを売っているんですから、Hondaにそれができないはずはありません。必要なのは、ドイツ市場でスポーツカー・メーカーとしてのイメージを確立することくらいで、クルマそのものは完璧です」
 
(レースに出るのは)誰のアイデアでしたか?
「私のアイデアでした。“スーパーテスト”が終わったとき、私はドイツのHonda広報部を訪ねて、『こんなにレーシングカーに近いクルマなんだから、我々と一緒にニュルブルクリンク24時間に出場しましょうよ』と話を持ちかけたのです。その後、基本的なプランを練り、プロジェクトを立ち上げました」
イメージ図
レーシングカーとして見た時、生産車の一般的な弱点とは何ですか?
「大抵の場合はブレーキが問題になりますので、これは交換しました。あとはホイール・ベアリング、ドライブ・シャフトなどで、こちらも交換しました。それとエンジンとギアボックスのマウント部は強化しました。レースカーにとって最大のアキレス腱はギアボックスとリア・アクスルです。もしもこれらをレース中に交換するとなると大変なコストが掛かりますので、我々はとにかく無理をせず、丁寧に扱うことにしました」
「ギアボックスとデフ用のオイルクーラーは追加しています。エンジンが最後までもってくれることにはまるで不安はありませんでしたが、今までの経験から、ギアボックスがネックになるかもしれないと考えていました。そこでHondaの日本サイドに問い合わせたところ、冷却さえ上手くできていればギアボックスの耐久性に問題はなく、これはリア・アクスルについても同じとの見解を得ました。そこでふたつのオイルクーラーを追加したわけです。終わってみれば、実に正確なギアシフトのフィーリングが24時間後も変わらなかったので、この点では大いに驚きました」
他に改造が必要だったパーツはありませんか?
「燃料タンクを120リットルのものと交換しました。どうしても必要というわけではありませんでしたが、燃料タンクの交換がレギュレーションで認められていたほか、レース戦略を立てるうえでも有利なので実施しました。おかげで、いちばん速いクルマは8周ごとに燃料を補給していましたが、我々は11周も走り続けることができました。実際は12周まで引き伸ばせましたが、確実なところで11周としたのです。基本的にエンジンはいじっていません。ただし、少しでもパワーを上乗せできないかと思って排気系を交換しましたが、それほど効果はありませんでしたね」
現在、クルマはどこにあるのですか?
「Hondaが所有していて、ノルドシュライフェで行われるドイツの耐久レース・シリーズ最終戦にアーミン・ハーネが乗って出場するそうです。また、我々は次のニュルブルクリンク24時間に再挑戦したいと考えています。ただし、ドライバーは換えるつもりです。きっと、読者から3人を募って、プロのドライバーと組み合わせることになるでしょうが、誰になるかはまだ決めていません。何しろ、まだずいぶん先の話ですから」

「ひとつだけ残念なのは、最初にドイツでNSXを販売して以来、Hondaが積極的にセールスを後押ししていないことですね。NSXはモデル末期に近づいていますが、次期モデルが出るのであればドイツやヨーロッパ市場に投入して欲しいものです。間違いなく人気が出ると思いますよ」
for Raceトップページへ スポルト・アウト編集員。ヨッヘン・ウベラー プロドライバー。マルクス・オエストライヒ
 
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