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WTCC 開発プロジェクトリーダーレポート

Round 1 - Round 5 念願の優勝とトップチームの宿命

試練を与えられたザルツブルグでの戦い―オーストリアラウンド ザルツブルグリンク

このレースから、ウエイトハンディが10kg加算され、40kgになりました。当面の目標であった、シボレーと同じ条件となったのです。いよいよトップチームに肩を並べたという思いがみなぎりました。

ザルツブルグリンクは、長い2本のストレートが特徴のサーキットです。そして標高420mの山中にあり、気圧が若干低いため、それらへの対策が必要でした。そのため、ターボの制御でターボチャージャーの回転数を上げ、ブースト圧を最大限確保するという高地用の対策を施して予選に臨みました。

このコースでは、2本のストレートでいかにスピードを上げられるかにかかっています。そのためにはスリップストリームをうまく使うことが必要条件となります。これを利用して、チーム同士で引っ張り合うことはもちろんですが、ライバルたちに利用されない、逆にライバルをうまく利用することも必要となり、予選ではあちこちで、駆け引きが行われます。

ところが今回、この駆け引きを巡って前代未聞の事態が起きました。Q2の終盤、駆け引きをするマシンが集団となり、全車がスロー走行のまま、タイムアップとなってしまったのです。予選後、この件に関して審査委員会は、14人のドライバーを審査し、12人に非紳士的行為としてペナルティーを科しました。Honda Civic WTCCの3台もその対象となり、ペナルティーを受けましたが、それだけでは済みませんでした。予選後の車検において、リアウイングのサイズ不足が指摘され、3台はレース1において、グリッド最後尾からのスタートという裁定を言い渡されたのです。原因はリアウイングを制作したサプライヤーのミスで、幅と厚みが1mm以下の単位で、規定にわずかに足りなかったのでした。違反は違反で言い訳はできませんが、トップチームとしていろいろな面でマークされていることを実感し、気を引き締めなければと思った一日でした。

予選はタルクィーニ選手が6番手、モンテイロ選手が7番手、ミケリス選手が9番手のタイムでした。ミケリス選手はペナルティーの影響でレース1は最後尾ですが、リバースグリッドとなるレース2ではフロントローから、ほかの2人も4番手、5番手でスタートできることから、決勝レースに希望が持てました。

レース1ではグリッド最後尾に3台のHonda Civic WTCCが並びました。今後二度とない光景だったと思います。レース1では無理せずアクシデントを避ける作戦を選択し、好グリッドのレース2にかけました。結果、ミケリス選手が3位表彰台を獲得し、連続表彰台を保ってくれましたが、これまでのような速さをみせつける走りはできませんでした。

長いストレートではまだパワーが足りない部分があり、空力を向上させるためにドラッグの対策が必要だという、新たな課題が浮き彫りになりました。やはりフルシーズンを戦うと、いろいろなことが起こり、常に上を目指して改善し続けなければいけないということを思い知らされた戦いでした。

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