WTCC 開発プロジェクトリーダーレポート

Round 6 - Round 8 開発への飽くなきチャレンジ

連続表彰台は保ったものの、苦戦が続く―ロシアラウンド モスクワ・レースウェイ

初開催のモスクワ・レースウェイは、有名なドイツ人建築家ヘルマン・ティルケ氏によって設計された近代サーキットです。ピットやガレージなどの設備も申し分なく整っており、ロシアの力の入れように少し驚かされました。コースレイアウトも、長い直線とタイトコーナーを組み合わせ、比較的テクニカルなセクションが多く、やはり近代的なサーキットという印象です。

しかし、このレイアウトが、我々にとっては難物となりました。このレースでは、オーストリアラウンドと同じく、最大重量のハンディウエイトである、40kgを課せられており、これが思いのほか効く結果となったのです。ライバルであるシボレーとは同じ重量のハンディウエイトですが、セアトは10kg、BMWは0、ラーダは-20kgということで、テクニカルなセクションとストレートの加速で差が出てしまいました。スロバキアでの好成績のあと、ハンガリーでは30kgのハンディウエイトを背負いましたが、あまり影響を感じませんでした。しかし、モスクワでの重量はズッシリと感じ、予想以上にタイムに影響が出てしまったように思います。

モスクワでの戦いに向けて、ストレートでのドラッグ対策として、新しいボンネットルーバーを装着しました。また、エンジンについては、ターボのブースト圧の上限をより効果的に使えるようなチューニングを施して臨みました。これら新たなトライについては、成果を得られたと考えていますが、実際には思わぬトラブルに見舞われてしまいました。予選でティアゴ・モンテイロ選手(Castrol Honda World Touring Car Team)のマシンに、電装系のトラブルが発生。それにより、ウォーターポンプが作動しなくなり、エンジンの水温が上昇してしまったのです。モンテイロ選手はこのトラブルで予選アタックができませんでした。そして水温の上昇による影響を考慮し、また、エンジン交換によるグリッドダウンの影響が少ないことも合わせて、フレッシュなエンジンに換えることにしたのです。

レース1ではノルベルト・ミケリス選手(Zengő Motorsport)が、4番手スタートから3位表彰台を獲得し、連続表彰台を保つことができました。しかし、シリーズポイントを上位で争うガブリエーレ・タルクィーニ選手(Castrol Honda World Touring Car Team)は、レース1で6位、レース2で7位と、これまでに比べて精彩を欠く結果となってしまい、私の気持ちとしては惨敗というイメージでした。

このときには、まだ次戦のハンディウエイトがどうなるかは分かりませんでしたが、やはり、それに負けないくらいのエンジンパワーが必要だと、強く感じたレースとなりました。

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