モータースポーツ > 世界ツーリングカー選手権 > WTCC 開発プロジェクトリーダーレポート > Round 1 - Round 5 念願の優勝とトップチームの宿命
開幕戦モンツァでの衝撃―イタリアラウンド モンツァ・サーキット
開幕前のウインターテストは計4回実施し、エンジンサイドとしてはドライバビリティーの向上と各種制御システムの調整を重点的に行いました。2013年シーズン用に投入した新しい車体のバランスも悪くなく、ドライバーからも高い評価をいただきました。ラップタイムもよく、同じテストに参加していたライバルチームからは「速すぎる」という声まで出たくらいです。準備万端、開幕戦が待ち遠しかったです。
ところが、開幕戦のモンツァで状況は一変しました。3月23日の予選でクリアラップが取れず、ガブリエーレ・タルクィーニ選手(Castrol Honda World Touring Car Team)が5番手(予選後のペナルティーで10番手に降格)、ティアゴ・モンテイロ選手(Castrol Honda World Touring Car Team)が15番手と低迷しました。確かにアタックに入るタイミングが悪く、クリアラップとはいかない状況でのタイムでしたが、ライバルチームに比べて明らかに直線のスピードが上がらなかったのです。ドライバーからも「昨年のマシンより遅い」と言われましたが、その時点では全く原因が分からず、なにが起こったのか分かりませんでした。
予選が終わったあと、緊急ミーティングが開かれました。ドライバー、エンジニア、そしてHondaの首脳陣も参加して、問題点の洗い出しと対策を話し合いました。それぞれの立場を越えて、チームが一丸となって対応するために重要なミーティングだったと思います。
奮起したHondaのエンジニアは、徹夜作業でエンジンの解析を行いました。その結果、加速時のエアの吸入量が足りていないことが判明。原因はインダクションボックスの形状が若干変わっていたことと、エアクリーナーの問題でした。これらが吸入の抵抗となり、十分な空気がエンジンに送り込まれていなかったのです。インダクションボックスについては、サプライヤーをすぐさまモンツァに呼んで、モロッコラウンドに向けて対策を講じるよう指示をしました。
シーズン開幕の決勝レースは、激しい雨の中での戦いとなりました。前がよく見えないほど激しい雨の中で、2人のドライバーはすばらしい仕事をしてくれました。特に、レース2でのタルクィーニ選手のスタートダッシュは見事で、1周目には一時トップに立ったほどです。難しいコンディションの中で、2台が2レースとも完走し、レース2で3位表彰台を獲得できたことは、本当にうれしかったです。