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2016 MotoGP レギュレーション解説

1. MotoGPクラス

全メーカー同じ数ではない!?

1-1. エンジン使用制限

 2016年のMotoGPクラスは、全車への共通ECUソフトウェア搭載やタイヤブランドの変更など、マシンの変化が大きなシーズンを迎えます。今季からの変更に関する詳しい内容について、MotoGPのルールブックに記載されている文言を読み解きながら学んでいきましょう。

 まずは、エンジンのシーズン使用可能基数についてです。すでに以前から制限が導入されていましたが、今年のルールブックでは、以下のように記されています(太字は2016年の変更部分)。


(原文)

2.4.3.3 Engine Durability
MotoGP Class

1. The number of engines available for use by each permanent contracted rider is limited to 7 for all of the scheduled races of a season of up to 20 races. The limit applies to all practice sessions and races at GP events, engines used for testing outside of GP events are not controlled. The following terms and exceptions will apply:

(日本語訳)

2.4.3.3 エンジンの耐久性
MotoGPクラス

1. 各通年契約選手が使用できるエンジンの数は、20戦を上限として予定されているシーズン全レースについて7基に制限する。この制限は、GPイベントの全プラクティスセッションとレースに適用される。GPイベント外で行われるテストで使用するエンジンに関しては、この限りではない。また、以下の条件と例外が適用される。

つまり、シーズンが年間20戦以下の場合には、エンジンは1選手あたり7基までしか使えません。しかも、この7基で金曜〜日曜に行われるフリー走行、予選。決勝レースのすべてを戦わなければならないのです。
ただ、最後の一文に“条件と例外が適用される”とあります。それは何なのかを見ていくと、

a) Contracted riders using machines from a Manufacturer who qualifies for concessions, according to Art. 2.4.2, will be limited to 9 engines for all of the scheduled races of a season of up to 20 races. The period of the concession is defined according to Art. 2.4.2.3.

a)コンセッション(※訳註:許容、譲歩、優遇などの意味)の資格を有するメーカーのマシンを使う契約選手は、条文2.4.2にしたがい、20戦を上限として予定されているシーズン全レースについて9基に制限する。コンセッションの期間は、条文2.4.2.3で定める。

と、「コンセッション」の資格があれば年間9基までと、2基多く使用できることになります。では、この「コンセッション」とは、いったいどのようなことなのでしょうか。その説明が記されている条文2.4.2を詳細に見てみましょう。

(原文)

2.4.2 Concessions

1. Various concessions in the Sporting and Technical regulations are granted to new MotoGP Class manufacturers entering the class for the first time since 2013, and to those manufacturers who have not achieved a race win in dry conditions since the 2013 season.

2. The full concessions are as follows:
• The use of 9 engines per rider per season (Art. 2.4.3.3.1.b)
• Engines are exempt from the engine homologation regulations (Art. 2.4.3.1.4.h)
• Teams may test with contracted riders and test riders at any time and any circuit, using the team’s Test Tyre Allocation, respecting the restrictions of Art. 1.15.1.1.A.g)



(日本語訳)

2.4.2 コンセッション

1.スポーティングおよびテクニカルレギュレーションに関する様々なコンセッションは、2013年以降新たに参入し、2013年シーズン以降にドライコンディションで勝利を挙げていないMotoGPクラスのメーカーに対して与えられる。

2.最大限のコンセッションは以下のとおりである:
・シーズンにつきライダーあたりエンジン9基の使用(条文2.4.3.3.1b、訳註:上記のエンジン耐久性の条項を指す)
・エンジンは、エンジンホモロゲーション規定から例外とする(条文2.4.3.1.4、訳註:年間で使用するエンジンの封印を定めた条文のこと)
・チームは、いつどのサーキットにおいても、チームのテスト用タイヤ供給内で、契約選手とテストライダーが、条文1.15.1.1.A.g(訳註:コンセッションを与えられたチームのテストについて定めた条項)の制限を守ってテストを行うことができる。

コンセッションが与えられるのは、「2013年以降に新規参戦し、ドライコンディションでの優勝がないメーカー」。この対象メーカーは、年間9基のエンジンが使用でき、さらにはHondaなどコンセッションを持っていないメーカーには禁じられている“エンジン開発”も認められるほか、テストも規定の範囲内であれば自由に行うことができます。
では、新規参戦メーカーへのこうした優遇は、いつまで続くのでしょうか。それについても定められていますので、見ていきましょう。

(原文)

3. The granting and removal of concessions is based on the accrual by the manufacturer of Concession Points during races, in dry or wet conditions, taking into account all riders using that manufacturer’s machines. Concession points are cumulative from the beginning of the 2015 season.
First place = 3 concession points
Second place = 2 concession points
Third place = 1 concession point

When a manufacturer reaches 6 concession points:
• The right to test on unlimited days according to Art. 1.15.1.1.A.g) is immediately cancelled. From that point the teams are subject to the testing restrictions of Art. 1.15.1.1.A.f), ie. maximum of 5 days testing, and the manufacturer is restricted to Art. 1.15.1.1.B, ie. test riders only.
• The use of 9 engines per rider per season is cancelled from the following season. For the next season all riders using the manufacturer’s machines will be subject to Art. 2.4.3.3.1.a), ie. 7 engines per rider per season.
• The exemption from the engine homologation regulations is cancelled from the following season. For the next season all engines of the manufacturer will be subject to Art. 2.4.3.1.4.

When a manufacturer has accrued no concession points during any one season, all riders using this manufacturer’s machines will benefit from the full concessions from the following season.

(日本語訳)

3.コンセッションの授与と剥奪は、ドライならびにウェットコンディション下でのレースにおける、メーカーのコンセッションポイント獲得数に基づく。これは、当該メーカーのマシンを使用する全選手が考慮の対象となる。コンセッションポイントは、2015年シーズン初頭から累積されていく。
一位=3コンセッションポイント
二位=2コンセッションポイント
三位=1コンセッションポイント

当該メーカーが6コンセッションポイントに到達した場合:
・条文1.15.1.1.A.gに定める無制限日数のテストをする権利は、即座に無効となる。その時点より、チームは条文1.15.1.1.A.fが定めるテスト制限(シーズン中のテストは最大5日間、等)、メーカーは条文1.15.1.1.B(テストライダーのみとする、等)に従うものとする。
・シーズンにつきライダーあたりエンジン9基の使用は、翌シーズンから無効となる。翌シーズンから、当該メーカーのマシンを使用する全選手は条文2.4.3.3.1.a(シーズンにつきライダーあたり7基、等)に従うものとする。
・エンジンホモロゲーション規定の例外措置は、翌シーズンから無効になる。次シーズンより当該メーカーの全エンジンは条文2.4.3.1.4に従う。

 メーカーがシーズン内にコンセッションポイントを獲得していなかった場合、当該メーカーのマシンを使用する全ライダーは、翌シーズンからすべてのコンセッションの便益を得る。

 優遇措置は、コンセッションポイント(優勝=3P、2位=2P、3位=1P、選手権ポイントとは異なる)が6ポイントになるまで継続することになります。6ポイントに到達すると、即座にテスト日数が制限されます。そして、エンジン基数制限と開発制限は、その翌シーズンから適用となります。

 このコンセッションポイント制の対象となるのは、条文にも記されているとおり、あくまで2013年以降にMotoGPクラスに参入し、1勝も挙げていないメーカーのマシンで戦う選手です。とはいえ、それらの新興陣営はこのルール面での優遇を活用して戦闘力を向上させてくるため、Hondaなど既存メーカーの選手たちにはチャンピオンシップを戦ううえで強力なライバルになることも確実です。このルールの存在を理解したうえで観戦すれば、「このメーカーはコンセッションがあるから、シーズン後半で開発が進んで速くなってきたな!」などといった見方もできるので、レースの緊迫感がさらに増すことでしょう。

<2016年エンジン規定のまとめ>
  既存メーカー コンセッション有
メーカー
コンセッション
ポイント6に達すると
テスト 制限 自由 即座に制限
基数 7基 9基 翌年から7基
開発 不可 可能 翌年から制限