1-3. タイヤメーカーの変更
そして、この共通ECUソフトウェア搭載と並んで、2016年の大きな変化点として注目を集めているのが、タイヤメーカーの変更です。
MotoGPクラスでは、かつてミシュランとブリヂストンが強力なライバルとしてロードレースの世界最高峰で激しい競争を繰り広げていましたが、2009年から一社提供の方式が採用され、ブリヂストンが公式タイヤサプライヤーとしてタイヤを提供していました。同社は2015年を限りに退き、2016年からはミシュランがMotoGPクラスの公式サプライヤーとして8年ぶりに復帰することになりました。
競技運営進行規則や技術規定を記しているルールブックでは、タイヤメーカーの名前は特に記されていません。タイヤ規定の条文は、従来どおりに以下の文言で始まっています。
(原文)
2.4.4.9 Tyre restrictions
1. In all classes, only tyres from the official appointed tyre supplier for each class may be used in a Grand Prix event, including official tests.
The official tyre supplier will provide sufficient tyres for all riders entered in the event.
(日本語訳)
2.4.4.9 タイヤ規定
1.すべてのクラスで、公式に指定された各クラス用タイヤサプライヤーのタイヤのみ、グランプリイベントで使用をしてもよい。これには公式テストを含む。
公式タイヤサプライヤーは、イベントに参加するすべての選手に充分なタイヤを供給する。
MotoGPクラスは、1つのタイヤサプライヤーによるタイヤ一社提供の体制である旨が明記されています。
この文言に続いて、スリックやレインタイヤの本数などが明記されているのですが、面白いのは、ブリヂストン時代にはなかった「インターミディエイト」という種類のタイヤとその使用本数が、今年のルールブックに記されているところです。
(原文)
Intermediate tyres:
6 in total, comprised of:
3 front intermediate tyres of the standard specification
3 rear intermediate tyres of the standard specification
(日本語訳)
インターミディエイトタイヤ:
全6本、構成は:
スタンダードスペックの3本のフロント用インターミディエイトタイヤ
スタンダードスペックの3本のリア用インターミディエイトタイヤ
この「インターミディエイト」タイヤは、以下のように定義されています。
(原文)
The official tyre supplier will determine the criteria for the
classification of tyres as Slick, Wet/Rain, or Intermediate. In case of dispute the decision of the Technical Director will be final.
(日本語訳)
公式タイヤサプライヤーが、スリック、ウェット(レイン)、インターミディエイトのタイヤ種別要件を定める。議論となる場合には、テクニカルディレクターの決定をもって最終とする。
このインターミディエイトタイヤですが、ドライコンディションで使われる溝なしのスリックタイヤと、濡れた路面で使われるウエットタイヤの中間にあたり、雨上がりなどいわゆる“ちょい濡れ”の路面状況で使用されます。
かつては、スリックタイヤに手作業で溝を入れたものなどを「カットスリック」と呼び、インターミディエイトとして使用していました。このインターミディエイトとスリック、ウェットの分類は、上記の条文で「タイヤメーカーが決定する」と記しているとおりですが、先日フィリップアイランドで行われたプレシーズンテストでは、路面がフルウェットではなく完全に乾いてもいない微妙なコンディション下で、このインターミディエイトタイヤを試した選手たちがいた模様です。
ウエットコンディションで行われた2015年第12戦イギリスGP
MotoGP全18戦のレースウィークでは、早春から晩秋まで、選手たちはじつに様々なコンディション下で各セッションやレースを走行します。そんな彼らの〈足もと〉も、今シーズンはおおいに注目要素のひとつになるかもしれません。