2016 MotoGP レギュレーション解説

1. MotoGPクラス

MotoGPマシンの頭脳が変わる!

1-2. 共通ECUソフトウエア

 さて、今シーズンからの変更で大きな話題を呼んでいるのが、全メーカーの全車両に搭載を義務続けられた公式の統一ECUソフトウェアです。昨今、MotoGPマシンのエンジンはECU(エンジン・コントロール・ユニット)と呼ばれるコンピューターで出力が制御されていました。2013年までは、各メーカーが独自に開発したコンピューター(ハードウェア)とソフトが認められていましたが、メーカーによる差を少なくすることを目的として、2014年からハードウェアを共通化。さらに、今季からはソフトまでが同じものとなったことで、さらなる接近戦が期待されています。

ルールブックでは、この事項は以下のような文言で記されています。

(原文)

2.4.3.5 Electronics
b. Software

i) The use of the Official MotoGP ECU software for engine and chassis control is mandatory for all machines, and no other engine and chassis control software strategies may be used on the machine at race events.
Only currently-approved versions of the Official MotoGP software are permitted to be used on MotoGP machines at race events.

ii) Until the end of the 2016 season, if a change to the official software is requested unanimously by the 2014 contracted Factory Option manufacturers (Ducati, Honda, Yamaha), then the Organisers must adopt this modification, with the costs of such modification being the responsibility of these manufacturers.

iii) Until the end of the 2016 season, any changes to the official software strategies requested by the Organisers must be approved unanimously by the 2014 contracted Factory Option manufacturers (Ducati, Honda, Yamaha) before they may be implemented. Approval is not required for normal maintenance and bug-fixing which does not change the software strategies.

(日本語訳)

2.4.3.5 電子制御
b. ソフトウェア

i) エンジンと車体の制御に関する公式MotoGP ECUソフトウェアの使用は、すべてのマシンに対する義務である。それ以外のエンジンや車体を制御するソフトウェアの内容はレースイベントのマシンに使用してはならない。
現在承認されているバージョンの公式MotoGPソフトウェアのみが、レースイベントのMotoGPマシンへ使用を許可される。

ii) 2016年シーズン終了までに、公式ソフトウェアの変更が2014年時のファクトリーオプションメーカー(ドゥカティ・Honda・ヤマハ)によって満場一致の意見として要請された場合、主催者はその変更を採用しなければならない。変更に関わる費用は、これらメーカーが負うものとする。

iii) 2016年シーズン終了までに、主催者による公式ソフトウェアの内容変更は何であれ、その変更が実施される前に、2014年時のファクトリーオプションメーカー(ドゥカティ・Honda・ヤマハ)によって満場一致の承認を得なければならない。ソフトウェアの内容を変更しない通常の保守やバグ修正は、承認を必要としない。

共通化の文言通り、MotoGPマシンには、承認されたバージョンのソフトウェアしか使用できません。また、メンテナンスやバグ修正以外の内容変更については、2014年にファクトリー(ワークス)参戦していた3メーカーの同意が必要となっています。

プレシーズンテストではセッティングを煮詰めるのに時間を割いたプレシーズンテストではセッティングを煮詰めるのに時間を割いた

「共通ECUでメーカー間の差がなくなる」と述べました。しかし、実はこの共通化されたECUの製作元を、以前から採用していたメーカーとそうでないメーカーが存在するため、新採用となったメーカーはマシンとの合わせ込みに時間が必要となります。開幕前の公式テストで苦戦するライダーの姿が見られたのも、こうした理由が背景にあるため、初戦のカタールGPでは、各ライダーが万全のセットアップを見つけられたのかにも、注目です。