Honda NSX-GTがシーズン4勝を記録し
山本尚貴/ジェンソン・バトン組がシリーズチャンピオンを獲得
SUPER GTシリーズの2018年シーズンに向け、開発陣はNSX-GTの運動性能を向上させるため、エンジン上に配置されていたインタークーラーをエンジン横に配置し直すことによって重心を下げるなど、大幅な改良に取り組んだ。GT500クラスでは、2017年に車両規定が改定され、車両の基本部分に関する開発は凍結されているが、吸気系は改良がまだ可能だった。また、エンジンにもピークパワーを引き上げるチューニングが施された。その結果、18年型のNSX-GTはこれまで以上の軽快なフットワークを手に入れた。
一方、ドライバー陣には昨年の鈴鹿1000kmレースにスポット参戦した元F1チャンピオン、ジェンソン・バトンをフルシーズンで迎え入れ、陣営内の再編が行われた。バトンは、当初こそ周回後れのGT300の処理などに戸惑いも見せていたが、急速にSUPER GTの戦い方を身につけ、戦闘力を発揮するようになった。
開幕戦・岡山国際サーキットでは、車両開発の成果が早くも表れ、NSX-GTは本来の速さを示し、#17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/小暮卓史組)が優勝、2位に#100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン組)が入賞して、幸先のいいシーズンスタートとなった。
第3戦鈴鹿サーキットでは、#8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/伊沢拓也組)が優勝、#100 RAYBRIG NSX-GTが再び2位に入賞して、#100 RAYBRIG NSX-GTはシリーズランキングのリーダーの座についた。
季節は春から夏となり気温が上がってくると、ライバルたちも勢いを取り戻す。シリーズ唯一の海外ラウンドとなる第4戦タイでは、#16 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/中嶋大祐組)がポールポジション(PP)を獲得、#17 KEIHIN NSX-GTが2番手となり、予選での速さを見せつけるが、決勝レースでは苦戦し、#16 MOTUL MUGEN NSX-GTの5位が最上位。第5戦富士では#17 KEIHIN NSX-GTが3位表彰台を獲得した。シーズン序盤に好成績を収めた結果、ウエイトハンディーが増し、一方でピークパワーを追求するとともに運動性能を優先してインタークーラーの位置を変更したことで、気温の高い夏場に苦戦することは当初から織り込み済みの展開だった。
初秋に開催された第6戦スポーツランドSUGOからNSX-GTの反撃が始まった。#100 RAYBRIG NSX-GTがポール・トゥ・ウイン、2位には#8 ARTA NSX-GTが続いて1-2フィニッシュ。今季初優勝を遂げた#100 山本・バトン組は、いったん3位まで落としていたシリーズランキングで再びトップに返り咲いてシリーズチャンピオンを視野に入れた。またシリーズランキング2位には#8 野尻・伊沢組が続き、NSX-GTはシリーズ争いを有利に持ち込んでシーズン終盤戦に突入することになった。

ところがシリーズ第7戦オートポリスでNSX-GTは思いがけない苦戦に陥ることとなる。公式予選では、#8 ARTA NSX-GTがコースレコードを1秒4以上も短縮するタイムでPPを獲得、2番手に#17 KEIHIN NSX-GT、3番手に#100 RAYBRIG NSX-GTが続き、NSX-GTが1-2-3グリッドを獲得したが、急激に気温が上昇した決勝では各車タイヤとのマッチングに苦しんでペースが上がらず。#1 KeePer TOM'S LC500(平川亮/ニック・キャシディ)に優勝を許し、NSX-GT勢は#100 RAYBRIG NSX-GTがHonda勢最上位の5位にとどまった。この結果、#100 RAYBRIG NSX-GTはシリーズランキングトップの座を守りはしたものの、#1 KeePer TOM'S LC500が同点に追いつき、最終戦で王座を争うことになった。
王座決定戦となったシリーズ最終戦はツインリンクもてぎで開催された。公式予選では、コースレコードを記録した#8 ARTA NSX-GTがPPを獲得、2番手にシリーズチャンピオンを目指す#100 RAYBRIG NSX-GT、3番手に#64 Epson Modulo NSX-GT(ベルトラン・バゲット/松浦孝亮)が続いてNSX-GTが1-2-3でスターティンググリッドに並んだ。#100 RAYBRIG NSX-GTは、6番手スタートの#1 KeePer TOM'S LC500より上位でフィニッシュしなければ王座を獲得できない。

決勝レースでは、#8 ARTA NSX-GTが終始トップを守って今季2勝目を挙げ、NSX-GTにとっては今季4勝目を記録した。一方、#100 RAYBRIG NSX-GTはレース前半を山本が担当し、ピットのタイミングで#38 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明)の先行を許したものの、3番手でレース後半をバトンに託す。王座を争う#1 KeePer TOM'S LC500の平川は、レース終盤ハイペースで追い上げ4番手に上がってバトンに迫る。ここで順位が逆転すれば、王座は#1 KeePer TOM'S LC500のものになってしまう。
バトンと平川の争いはテール・トゥ・ノーズの接戦となった。しかしバトンは前年度王者の平川からの強力なプレッシャーから3番手のポジションを守りきってチェッカーフラッグを受け、山本とバトンのドライバーズタイトル、#100 RAYBRIG NSX-GTを走らせたTEAM KUNIMITSUのチームタイトル獲得を決めた。高橋国光総監督にとっては、1992年のチーム結成以来、初のシリーズタイトルに。そして、SUPER GTを戦うHonda車にとっては、2010年の#18 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル組)以来となる王座獲得となった。