2009年3月28日(土)、29日(日)
ヘレステスト・レポート
スペイン・ヘレスサーキットで行われたこの週末の2日間のテストは、今年初めてのヨーロッパ・テストであるのと同時に、4月10〜12日にカタールで行われる開幕戦前の最終テストとなった。
オフシーズンのテスト回数が少なくなったこともあり、ライダー、チームにとって非常に大切なテストセッションとなったが、初日の午前中は大雨に見舞われる幕開けとなった。しかし、昼ごろにはコンディションは回復し、MotoGPクラスの6人のHondaライダーはテクニカルなスペインのコースで建設的なテストをこなし、それぞれセッション終盤においてベストラップを更新する進歩を見せた。初日の気温は16℃、路面温度は20℃だった。
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)は多くのグレードアップパーツに対応するべく忙しい一日を過ごしたが、RC212Vのバランスと総合的なパフォーマンスの進歩に満足し、ファクトリーマシンで臨む最初のレースへ前向きな姿勢を見せた。ドヴィツィオーゾとチームはリアタイヤからの情報量を増やしていくことにも取り組み、コーナー脱出時におけるさらなるパフォーマンスアップを目指した。
高橋裕紀(Scot Racing Team MotoGP)はMotoGPマシンに慣れるプロセスをさらに進めるテストとなった。Honda勢唯一のMotoGPルーキーとなる高橋は、タイムは追い求めず、MotoGPマシンに対応するライディングを突き詰めていった。テストを開始したのは雨の上がった昼過ぎ。フロント周りのセットアップに重点を置いた。
また、今月初めのカタールテストで左手首とヒザにケガを負って療養中のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)に代わって、テストライダーの秋吉耕佑も参加した。秋吉はチームのシーズン前セットアップ作業を担当し、さまざまなパーツやセットアップの組み合わせを検討、評価した。この作業により、ロサイルでの復帰を目指すペドロサへのサポートをこなした。
翌29日には、Hondaの6人のMotoGPライダーはオフシーズンテストプログラムをすべて終了。4月に開幕する09年MotoGP世界選手権全17戦の第1戦、待ちに待ったカタールGPへの準備が整った。
この日の気温は13℃、路面温度は19℃と、昨日より涼しいコンディションとなった。ドヴィツィオーゾは再びHonda勢のトップタイムをマークし、午後に45分間で行われた公式タイムセッションにおいては総合7番手のタイムを記録。セッション残り5分でにわか雨に見舞われ、それまでに最速タイムを記録していたケーシー・ストーナー(ドゥカティ)が総合トップに立っている。
ドヴィツィオーゾは、午後の雨によってドライでのラップを突き詰められなかった部分もあったが、多くのラップを消化して、パワーデリバリーやスタビリティの向上において重要な進歩を遂げた。また、ウエットコンディションとなった最後の2時間も積極的に走行し、乾きかけの路面状況の中、このセッション最速タイムとなる1分51秒488を記録してテストを終了した。
トニー・エリアス(Team San Carlo Honda Gresini)は、公式タイムセッションではドヴィツィオーゾの後方0.1秒以内に迫るタイムを記録するも、さらにいいタイムを記録できる確信から満足のいかないセッションとなった。チームはリアタイヤにさらに熱を加えるセットアップを模索したが、解決策を見つけられずにいた。しかし、ヘレスとは違う特性を持つロサイルにおいてはこの問題を解決できる見通しだ。問題を抱えつつも、エリアスはこの日のトップスピードを記録した。
ランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)は、チームとともにこなしたテストに満足の様子を見せた。この日はレース後半でのパフォーマンス維持を想定して、すり減ったタイヤでの走行に専念。公式タイムセッションでは13番手となったが、アタックラップ中にマイナーミスを犯さなければさらにいいタイムを記録できたと自信を見せた。デ・ピュニエは最後の2時間のセッションでレースシュミレーションを行う予定だったが、雨のためその計画は流れ、代わりにレインタイヤのパフォーマンスを探るべく2回の走行をこなした。
高橋は、前日のベストラップをさらに0.5秒以上を縮め、土曜日のフロント周りのセットアップに続き、この日は主にリア周りのセットアップに集中した。これにより、コーナリング中とコーナー脱出におけるパフォーマンスを突き詰めた。テスト最終日は、開幕戦に向けた細かなマシンセットアップに重点を置き、時間を費やした。
アレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)は、タイム更新を目指してテストに臨んだが、前日のクラッシュでリアタイヤ1本を使用不能にしてしまい、タイヤの使用本数制限からこのセッションに新品タイヤで臨むことができなかった。これにより、新品タイヤでのセッティングを突き詰めることができなかった。チームメートのエリアス同様、リアタイヤをさらに加熱させられるセッティングを探していたが、涼しい気温にも阻まれて解決策は見出せていない。
秋吉はこの日、パワーデリバリーとシャシーバランスの向上に取り組み、チームに有意義な情報をもたらした。公式タイムセッションではヘアピンで転倒を喫し、19番手に終わっている。
ペドロサは現在療養に専念し、カタールでのシーズン開幕での復帰に向けて取り組んでいる。
投光照明の下でのナイトレースとなるカタールGPは、ドーハ近郊のロサイル・インターナショナル・サーキットで4月10〜12日に行われる。4月24〜26日にはツインリンクもてぎで日本GPが開催され、そして5月1〜3日はヨーロッパラウンドの初戦となるヘレスへと舞い戻る。
2日目コメント
リザルト
1日目
順位 | ライダー | マシン | タイム |
1 | J.ロレンゾ | ヤマハ | 1:39.791 |
2 | V.ロッシ | ヤマハ | 1:39.861 |
3 | C.ストーナー | ドゥカティ | 1:39.906 |
4 | C.バーミューレン | スズキ | 1:40.572 |
5 | C.エドワーズ | ヤマハ | 1:40.579 |
6 | L.カピロッシ | スズキ | 1:40.650 |
7 | アンドレア・ドヴィツィオーゾ | Honda | 1:40.821 |
8 | アレックス・デ・アンジェリス | Honda | 1:40.900 |
9 | N.ヘイデン | ドゥカティ | 1:40.987 |
10 | トニー・エリアス | Honda | 1:41.049 |
11 | J.トーズランド | ヤマハ | 1:41.122 |
12 | M.メランドリ | カワサキ | 1:41.160 |
13 | ランディ・デ・ピュニエ | Honda | 1:41.168 |
14 | M.カリオ | ドゥカティ | 1:41.226 |
15 | 高橋裕紀 | Honda | 1:41.362 |
16 | S.ジベルノー | ドゥカティ | 1:41.737 |
17 | N.カネパ | ドゥカティ | 1:41.851 |
18 | 秋吉耕佑 | Honda | 1:42.286 |
19 | V.グアレスキ | ドゥカティ | 1:42.324 |
公式タイムセッション(2日目)
順位 | ライダー | マシン | タイム |
1 | C.ストーナー | ドゥカティ | 1:38.646 |
2 | V.ロッシ | ヤマハ | 1:39.365 |
3 | L.カピロッシ | スズキ | 1:39.757 |
4 | J.ロレンゾ | ヤマハ | 1:39.829 |
5 | C.バーミューレン | スズキ | 1:39.848 |
6 | M.カリオ | ドゥカティ | 1:40.149 |
7 | アンドレア・ドヴィツィオーゾ | Honda | 1:40.168 |
8 | S.ジベルノー | ドゥカティ | 1:40.228 |
9 | トニー・エリアス | Honda | 1:40.266 |
10 | C.エドワーズ | ヤマハ | 1:40.305 |
11 | N.ヘイデン | ドゥカティ | 1:40.401 |
12 | M.メランドリ | カワサキ | 1:40.405 |
13 | ランディ・デ・ピュニエ | Honda | 1:40.646 |
14 | 高橋裕紀 | Honda | 1:40.814 |
15 | アレックス・デ・アンジェリス | Honda | 1:40.869 |
16 | J.トーズランド | ヤマハ | 1:41.425 |
17 | V.グアレスキ | ドゥカティ | 1:41.485 |
18 | N.カネパ | ドゥカティ | 1:41.551 |
19 | 秋吉耕佑 | Honda | 1:42.206 |
アンドレア・ドヴィツィオーゾ
「この2日間のテストで、重視して取り組んでいたスタビリティとパワーデリバリーをはじめ、マシンをかなり進歩させることができた。タイムは単体で見ればいいものも出ているが、ケーシー(ストーナー)のものと見比べてしまうと、詰めなければいけない差はまだ大きい。公式タイムセッションのあと雨が降ってしまったため、午後に計画していたプログラムを予定通り進められなかった。このため、ドライにおいて試せることが残っており、まだドライでのタイムを詰められる可能性がある。ウエットにおいてはマシン、タイヤともに好感触で、これには満足している。早くカタールでの開幕戦に臨みたい」
トニー・エリアス
「今日は気温が低かったため、セットアップは難しかった。しかし、それはどのチームも同じだし、事実として路面は冷たくてもストーナーの走りはアツイ。彼のタイムから1.6秒落ちというのは喜べない結果だが、現在マシンのセットアップで抱えている問題を考慮すれば、予想していた差だ。大切なことは、解決すべき問題をしっかりと認識していること。カタールのテストから問題点は明確だったのだが、その解決はここヘレスでは成し遂げられなかった。しかし、これには冷静に取り組んでいかなければならない。マシンもパッケージもチームもすばらしいことはわかっている。ただもう少し時間が必要なだけだ。カタールについてはいいデータがそろっているため、開幕戦が待ち遠しくてしょうがない」
ランディ・デ・ピュニエ
「公式タイムセッションの前に、中古のリアタイヤでのグリップ向上を模索していた。シャシーとサスペンションのセットアップを調整したことで、さらに高いグリップを得ることができた。中古タイヤでいいタイムを刻むことができていたから、施した調整は正しいと確信したが、公式タイムセッションでソフトタイヤを使ったときは、もう少しいいタイムを期待していた。0.3〜0.4秒は詰められると思っていたのだが、最終ラップで小さなミスを犯してしまった。残念だったが、中団グループとのタイム差は無くせると確信しているし、仕事を進めていくしかない。チームはマシンのセットアップにおいてすばらしい仕事をしてくれているから、カタールでは確実に予選10番手以内を目指す」
高橋裕紀
「2日間のテストで得た進歩には満足している。今日は特にリア周りのセットアップに取り組んだ。午後には雨が降ったが、そのおかげでウエットコンディションでのマシンの挙動を探ることができた。また、うれしいことにRC212Vのキャラクターはウエットでもほとんど変わることがなかった。もちろんもっと時間があったらうれしいが、今はただ、RC212Vでの初レースとなる開幕戦が楽しみだ」
アレックス・デ・アンジェリス
「残念ながら昨日のクラッシュのあと新品タイヤを使わざるを得なくなり、今日は中古のタイヤでセッションをスタートすることになってしまった。もちろん、中古タイヤでの走行は、マシンにおける技術的な問題の解決を模索するのに理想的な状態ではない。今日はペースをつかめずにいたが、カタールでは接戦が展開できるようこれからも仕事を続けていく。問題はリアタイヤを十分に熱することができないことにあったが、シーズンが始まれば気温も路面温度も高くなるためこの問題は解決するのではないかと思っている。しかし、シーズン開幕に向けては固い決意を持って取り組む気持ちでいる」
秋吉耕佑
「今日はハンドリングを向上させるためのシャシーバランスのセットアップと、エンジンのパワーデリバリーのバランスを追求するセットアップに費やした。一周のうち最初のセクションではトップライダーにも迫るいいタイムが出ていたが、中盤セクションでのタイム損失があった。残念ながらセッション終盤にはヘアピンで転倒してしまったが、2日間のテスト全般では、両日の雨にもかかわらず、いい結果を残せたと思う」