田園地帯を流れる河川や湖沼に生息する雷魚(ライギョ)は、国内において最大級に成長する淡水域のフィッシュイーター。趣ある里山の静寂を破る豪快なファイトは、多くのアングラーを魅了してやまない。その世界観は実に特徴的で、ゆっくり流れる時間を味わいながらフィールドを巡り、1尾との出会いを楽しむ癒しの釣りでもある。真夏らしい田園の深い緑と真っ青な空。そのコントラストを愛でながら一日を過ごせば、慌ただしい生活でたまるばかりのストレスも霧散する。童心にかえって楽しめるのが雷魚釣りだ。
「雷魚」という呼び名はタイワンドジョウ科の魚の総称で、温暖な東南アジアを中心にさまざまな種類が分布している。日本にはそのうち、カムルチー、ライヒー(タイワンドジョウ)、コウタイの3魚種が生息している。なかでも主な対象魚となっているのは、全国に分布するカムルチー。カバーと呼ぶ水面を覆うハスやヒシなどの水生植物の下に身を潜めてエサを待ち構えている。最大で1mほどに成長し、国内では過去に121cmが釣れたという記録もある。
水温が20℃を超えるあたりから活発に動き回り、15℃を下回ると泥底に潜って冬眠する。また、雷魚の大きな特徴が、エラ呼吸に加えて空気呼吸をすること。口から直接空気を取り込んで、エラ近くの上鰓器官(じょうさいきかん)という粘膜を通して酸素を吸収するが、エラ呼吸だけでは酸素の取り込み量が不足し、溺れてしまうといわれている。雷魚が生息する湖沼では、その呼吸の痕跡として、定期的に水面に波紋が見られる。その波紋にアングラーは心を躍らせる。