Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える

Me and Honda, Career Hondaの人=原動力を伝える

これからの時代に合った電池を。ふたりの研究者が対談で見せた、こだわりと夢

カーボンニュートラルを実現するために、電気自動車(EV)の普及は必要不可欠。そのためには電池の開発が急務です。今回は、持続可能性と性能を両立した材料の研究開発を進める森田と計が、自身の仕事内容やこれまでのキャリアで大切にしてきた考え方について語ります。

森田 善幸Yoshiyuki Morita

本田技術研究所 先進技術研究所 材料・プロセスドメイン

2001年にHondaへ入社し、冷却水やバイオ燃料などの研究開発を担当。その後2007年頃から電解液に携わることになり、電池の研究開発を行う。2013年から5年間大学に出向し、2021年から同大学院工学研究科の博士課程に入学するなど、社内外でつながりを強化しながら研究を進める。

計 賢Takashi Hakari

本田技術研究所 先進技術研究所 材料・プロセスドメイン

2017年アメリカのベンチャー企業に就職後、2019年から大阪府立大学でポスドクとして研究を行う。その後2020年に特別任命助教として関西大学で研究を行い、2022年Hondaに入社。学生時代から一貫して電池の研究に携わり、実用化に貢献。

持続可能性と性能を両立させた電池をつくるため、材料設計を進める

先進技術研究所の材料・プロセスドメインではバッテリーEVに搭載する次世代電池の研究開発を進めています。森田と計は、同じチームで働いている研究者です。

森田

「私たちは、電池の新しい材料の研究開発を重ねています。2019年にノーベル賞を受賞したことで広く知られているリチウムイオン電池を世界中のEVに載せるためには、希少な材料が大量に必要です。コバルトやニッケルなどがよく使われますが、特にコバルトは全世界のEVに使うには全然足りません。

そこで、なるべくありふれた材料で高性能な電池をつくるためにどの元素を使うか考えながら、材料設計を行っています。コバルトを使わずに持続可能性も性能も両立できるような材料を検討しているところです」

「ニッケルはありふれているものの、生産地がインドネシアなど一部の地域に偏在しているため、EVの安定供給にはコバルトやニッケルを使わない電池の材料開発を進める必要があります」

Hondaに入社した直後は、冷却水やバイオ燃料など液体系の研究開発をしていた森田。そこから約15年間電池に携わり続けるようになった背景には、人づてで仕事がはじまるHondaの文化がありました。

森田

「ある日の休憩中、上司に『君は液体系を扱っているから、次は電解液をやってくれ』と言われました。大学時代に電池材料を扱っていた時期があり、そこまでわからない世界でもなかったので、飛び込んでみることにしたんです。

基礎研究に関しては、どこの誰が何をやっているのかが人づてで広がり、チームを組んではじめるケースが少なくありません。最先端の研究はやってみないとわからない部分もあるため、出口の見えないことを毎日取り組み続けられる人が集まっていると思います」

「森田さんは、2021年に大学院の博士課程に入学されていますよね」

森田

「そうですね。2013年にHondaから大学へ出向した際につながりができた先生から、研究内容について『そのままにしておくのはもったいないからドクターを取ってみれば?』と言われ、会社にサポートしてもらいながら今は社会人学生をしています」

「ちなみに最近参加した学会で出会った先生に、国家プロフェクトで進められている研究について聞いたんですが、それはもともと森田さんが進めていたテーマなんですよね。先生から『このプロジェクトの根幹をつくったのは森田さんだ』と聞かされました。森田さん自身は認識していないかもしれませんが、研究を推進する行動力がすごいんですよね」

森田

「正直なところ、興味本位で研究を突き進めていたら行動力がすごいと言ってもらえたという感じですね。意識して行動しているというより、探究心で動いています」

互いの実績を見て、一緒に研究を進めたいと感じたふたりの研究者

2022年にHondaへ入社した計は、ユニークなバックグラウンドを持っています。

「大学時代から電池の研究をしており、2017年にはアメリカのベンチャー企業で電池の長寿命化や安全性試験の通過に貢献しました。2019年からは大阪府立大学でポスドクとして研究に携わり、2020年から関西大学で特別任命助教として研究を開始。その後2022年にHondaへ入社した形です。

ビジネス系のSNSに登録していたら、自分の経歴や実績を見たHondaの方がカジュアル面談をしましょうと声をかけてくださり、そこで森田さんとお会いしましたね」

森田

「当時、計さんは、進路について考えていたところだったんですよね」

「そうなんです。関西大学で研究を続けるか、アメリカに戻るか、お声がけいただいた大学の研究室に行くか、とても迷っていたところでした。そんななかでHondaの面談を受けて、全固体電池や計算科学系の担当者の方にプレゼンテーションをしていただいたんです。

そして森田さんから、これまで研究してきた流れを見せていただき、オリジナリティ溢れる研究をされる人だと思いました。森田さんのようにこだわりのある人がたくさんいる環境で研究ができるなら、もっと自分を活かせそうだと考えて入社を決めました」

森田

「電池はこれからますます大事になっていく分野だと思いますが、過去の研究にずっと囚われていてもなかなか新しいことができません。海外の経験も含めて、広く研究されている方の視点は非常に重要です。

そのため積極的に外部の研究者の方とも話をして、コラボレーションしながら一緒に研究を進めていこうとしています。計さんはもちろん、チームには電池に強い想いを抱いている人が揃っています」

自身も論文を発表している立場である計は、研究内容を見ると研究者の創造性や力がわかります。

「森田さんの研究は、実験結果に基づきながらも、これまでに報告されていないような考えやアプローチをしていたので、本当に論理的かつ創造的な研究をされる研究者だと感じました。電池のテーマがいくつかあるなかで、森田さんのような研究者・技術者のもとで仕事ができるのなら、ぜひHondaで働きたいと思いましたね」

森田

「ありがとうございます。計さんの面談でお伝えした研究は、カーボンナノチューブ*に関するものでしたね。当時はカーボンナノチューブが流行っていて、それを使うだけではおもしろくないので水に混ぜて違う特徴が発現するのかを研究していました。

冷却水など液体系の仕事をしていたことにつながりますが、カーボンナノチューブを水に混ぜるとエンジンを冷却する効率が少し上がるんですよね。ただし、高価な材料なので一般的なクルマにはどうしても使えません。

それでも当時のF1の部署では、コストがかかってもそれに見合う特性の向上があるならいいという状況だったので、話をしに行って実際に研究した材料でクルマを走らせてもらいました」

*炭素のみで構成されている直径がナノメートルサイズの円筒(チューブ)状の物質

「森田さんは水とカーボンナノチューブで冷却効果があるとわかってから、バイクやF1の部署と連携することで、研究を進めておられて。研究結果に基づいて、何が必要かを考えて真正面から行動するのがすごいと思いました」

森田

「Hondaは二輪も四輪もやっているから、会社のなかでも『これは別の部署で使えるんじゃないか』というものが見つかる場合があります。だからこそ、研究結果を活かしやすかったと思いますね」

もっとオリジナリティを追求して研究開発すれば、一発逆転が期待できる

研究に独自性を追求し続けてきた計は、本田宗一郎が創業したHondaの研究には今改めて独創性が求められているのではないかと考えています。

「私はこれまで、嫌になるくらいオリジナリティを追求して研究してきたつもりです。今携わっている研究もこだわっています。目標とする材料の実用化は非常にチャレンジングで、やはり通常のアプローチでは、なかなかうまくいきません。だからこそ誰も検討してこなかった独自のアプローチが、先進的な材料の実用化には重要だと思います」

森田

「電池の研究に関しては、規模やお金などHondaが外部に敵わない部分も正直なところあると思います。それらで勝負するのではなく、アイデアで一発逆転しなければなりません。すごく注目されている分野なのですが、幸いなことにまだその可能性が残されていると思います」

「私は昔から、社会の役に立つだけでなく、たくさんの人が驚く技術を発明したいという夢を持っていました。だからこそ、オリジナリティの追及や無理だろうと思われる技術に対して挑戦する必要があると考えています。特に日本企業ではそれなりに自由に研究をしていてもクビにならないですし、もっとオリジナリティを追求し尖った研究をしてもいいのではないかと個人的には思いますね」

説明してつなげる努力と、文献や知見からアイデアを生み出す努力で新たな電池をつくる

15年ほどHondaで電池の研究に携わっている森田は、尖った研究が必要なのは大前提として、周りにもうまく説明する必要があると考えています。

森田

「企業で働くうえで独りよがりになってはいけないので、なぜ尖っているかを説明しなければなりません。それがないと、単純に『あいつ尖っているな』と思われるだけで終わってしまう。今後いろいろな人がプロジェクトに携わっていくことになるので、説明のプロセスが重要になると思います」

「私はHondaに入ってから考えを尊重してもらっているので、遠慮なしにやりすぎたと最近反省しています(笑)」

森田

「いやいや、全然大丈夫(笑)。計さんは起爆剤のような存在なので、Hondaに入ってもらったことで毎日刺激を受けています。だからこそ、うまく説明して理解してもらうサポートは自分の役割だと思っていますね。

もうひとつ、モビリティメーカーとして機械に関する技術を培ってきた会社なので、電池のような化学的な部品が入ってくるといろいろ噛み合わない話が出てくる。それを丁寧に説明してつなぎ合わせる作業をしないと、お互いわかり合えずに結果が出るはずのものも出なくなる可能性があります。

機械と化学という違う世界のものをつなげる努力を惜しんではならないと、日頃から肝に銘じていますね」

起爆剤としてHondaに新たな風を吹きこんでいる計は、夢を抱きながら日々研究をしています。

「現在ニッケルとコバルトがフリーな正極材料*をつくっており、個人的に“ニコリー”と呼んでいます。自分で名付けた材料が実用化され、販売されるクルマに入れることができれば、研究者冥利に尽きますね。

まだ出来上がっていませんが、Hondaに入社してからやってきた半年間の知見をもとに、これまでにない新しい材料を見つけられるよう研究を進めていく予定です」

*リチウムイオン電池に使用する材料の一種。リチウムイオン電池は正極/有機電解液/負極から構成されるが、正極に使用する材料を指す

森田

「計さんは、研究のために論文もかなり読んでいますからね」

「そうですね。正極材料は世界中で競争が激しい領域なので、巨人の肩に乗るために、私は過去の文献をしっかり調べないと気が済まないので。論文や特許を調査することで、開発の余地がありそうだとわかったので、もう少し踏ん張ればアイデアも出てくると信じたいですね。

研究に必要な論文を購読したら図書予算で費用処理されるシステムがあるんです。月100〜200報の論文を読んだら図書委員の方に『ダウンロードしすぎです』と言われました。1カ月の予算を大幅に超えてしまったようです」

森田

「まさに起爆剤となってしまった…。これに関してはちょっと極端だったのですが、姿勢は見習うべきだと思いました」

カーボンニュートラル達成のため、今後さらなる成長が期待される電池分野。

強い探究心を持って動く森田と、オリジナリティを追い求めて頭を働かせる計は、これからも努力を惜しまずHondaが掲げる大きな目標を達成するために前進し続けます。

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