2015年、開幕戦で右腕に問題を抱えたダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、参戦を見合わせるかどうかというほどのコンディションだったが、それでもなんとか走りきり6位でフィニッシュ。その後、手術などの影響で第2戦アメリカズGPから第4戦スペインGPまでの3戦を欠場することになった。以降は、確実に復調しつつあり表彰台も獲得したが、第15戦日本GPを前に、シーズン中の勝利がない状態だった。一方のマルク・マルケス(Repsol Honda Team)は日本GPまでに4勝を挙げるも、リタイアが5回と、2年連続となるチャンピオンに輝いた前シーズンと比べると、明らかに精彩を欠いていた。
チャンピオンシップはと言えば、ヤマハのバレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソによるチームメート同士の一騎打ちの様相を呈していた。日本GPまでに4勝を含む13回の表彰台登壇と、コンスタントにポイントをかせぎトップに立つ、ロッシがチャンピオンシップを逃げきることができるか。それとも、前戦アラゴンGPに勝利し、14ポイント差まで詰め寄ったロレンソが逆転するかに注目が集まった。そんな中で迎えた日本GP。Hondaの日本人勢では全日本ロードレースを代表する3選手が参戦した。ワイルドカードでMotoGP初参戦の高橋巧(Team HRC with Nissin)と中須賀克行(ヤマハ)が、カレル・アブラハムの代役として秋吉耕佑(AB Motoracing)がそれぞれの目標に向けてマシンを駆った。
曇り空の下で行われた予選はヤマハのロッシとロレンソ、マルケスが1列目、ペドロサは2列目6番手、カル・クラッチロー(LCR Honda)は3列目8番グリッドからそれぞれ翌日の決勝に挑むことに。日本人勢では高橋が19番手、秋吉が26番手と世界との壁を痛感する結果となった。
決勝はウエットコンディションで始まり、周を追うごとにラインが乾いていく難しいレースに。2列目6番手からスタートしたペドロサは、7周目にはトップとは8.9秒近く差が広がってしまう。しかし、ここからペドロサの快進撃が始まる。レース中盤からすばらしい追い上げをみせると、ライバルを次々とオーバーテイク。ポールからの逃げきりを図ったロレンソを18周目に追いつめトップを奪った。レース序盤こそ差をつけられていたが、それは今大会に勝つための作戦だった。序盤にタイヤを温存したペドロサは、路面が乾いてコンディションが上がると、一気にペースを上げてライバルを抜き去った。そしてその後も後続との差を広げ続け、最後は2位のロッシに対して8.5秒以上もの大差をつけてフィニッシュ。
勝利のなかったそれまでのシーズンの鬱憤を晴らすかのような快走は、日本のファンを大いに興奮させ、会場の大歓声と拍手が長い間鳴り止まなかった。
そしてこの勝利で、グランプリ通算50勝を達成。2002年の125ccクラスのオランダGPでの初勝利以来、これまで毎年グランプリで勝利を挙げてきたペドロサは、ロッシが持つ、15年連続の毎年勝利にあと1年まで迫った。開幕戦での右腕の問題から、手術という苦難を乗り越えた末の勝利だった。
Moto2クラスのチャンピオンシップは、日本GPを前に2人に絞られた。ヨハン・ザルコ(Ajo Motorsport)が第2戦から6勝を含む12戦連続表彰台でシーズンを大きくリード。ティト・ラバト(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)が2位につけていた。ところが、そのラバとが日本GP直前のトレーニング中に転倒。手術を受けるも、その後の回復が思うようによくならず、1日目フリー走行のセッション中にチームと相談し、決勝を欠場することを決めたため、ザルコにとっては思わぬ形でチャンピオンが決定した。
チャンピオン争いの重圧から開放されたザルコはプレッシャーのない落ち着いた走りで、予選でポールポジションを獲得。決勝では序盤こそジョナス・フォルガー(AGR Team)に先行されるも、5周目に逆転すると、天候によって短縮された15周のレースを支配し、最終的に4.5秒までフォルガーとの差を広げ、自らのチャンピオン獲得に華を添えた。
また、レギュラー参戦の中上貴晶(IDEMITSU Honda Team Asia)は予選を7番手で終え、レース序盤では3番手を走行するなど表彰台圏内でレースを進めるが、5周目でまさかの転倒。25番手から再スタートをするもマシンに大きなトラブルを抱えたままで走行する厳しいレースとなった。ワイルドカード参戦の小山知良(NTS T.Pro Project)は29番手から難しいコンディションの中、ベテランらしい堅実な走りを披露し、少しずつ順位を上げ13位。高橋裕紀(Moriwaki Racing)は25番手からと後方からの追い上げのレースになったが、粘りの走りで14位と、ワイルドカード参戦の2人がそろってポイントを獲得した。
曇り空のもと行われた予選では、ロマーノ・フェナティ(KTM)がポールポジションを獲得。前日からのフリー走行で常にトップタイムを記録していたニッコロ・アントネッリ(Ongetta-Rivacold)は順調にタイムを伸ばしていたが、最終アタック中に痛恨のスリップダウンを喫し、予選4番手に。ただ、上位につけていた選手のペナルティーなどで2番手グリッドから決勝に挑むことになった。
日本人勢では尾野弘樹(Leopard Racing)が予選序盤から積極的なライディングを披露し、一時はトップタイムを記録するなど観客を沸かせ、4列目12番グリッドを獲得。マヒンドラを駆る鈴木竜生は21番手とグリッド中盤からのスタート。ワイルドカードではMusahi RT Harc-Proから水野涼と栗原佳祐が参戦し、それぞれ33番手、36番手からレースに挑むことになった。
決勝日は朝から降り続いた雨や霧の影響で、午前中に予定されていたウォームアップ走行に遅れが出て、決勝は13周に短縮された。 レースは2番グリッドからスタートしたアントネッリが序盤からファステストラップを記録しながら、2番手以下を4秒以上引き離す積極的なレースを展開。しかし、路面が乾くにつれ、後続も追い上げてくる。それでもアントネッリはリードをうまく維持し、そのまま逃げきって優勝。2位にはミゲル・オリベイラ(KTM)、3位にはホルヘ・ナバロ(Estrella Galicia 0,0)が入った。
日本人勢では鈴木が7列目20番手からのスタートながら、1周目でポジションを上げ、13位でフィニッシュ。栗原は最後尾となる35番手スタートから25位完走。最上の結果ではないものの、貴重な経験となった。尾野は12番手から好スタートを切り、一時3番手を走行するも転倒リタイア。世界戦デビューとなった水野は転倒を喫して悔しいリタイアとなった。
1位 | ダニ・ペドロサ | Honda | 46'50.767 |
2位 | V.ロッシ | ヤマハ | +8.573 |
3位 | J.ロレンソ | ヤマハ | +12.127 |
4位 | マルク・マルケス | Honda | +27.841 |
5位 | A.ドヴィツィオーゾ | ドゥカティ | +35.085 |
6位 | カル・クラッチロー | Honda | +37.263 |
7位 | B.スミス | ヤマハ | +37.667 |
8位 | 中須賀克行 | ヤマハ | +44.654 |
9位 | H.バルベラ | ドゥカティ | +48.572 |
10位 | スコット・レディング | Honda | +50.121 |
1位 | ヨハン・ザルコ | KALEX | 31'17.900 |
2位 | ジョナス・フォルガー | KALEX | +4.505 |
3位 | サンドロ・コルテセ | KALEX | +15.433 |
4位 | アズラン・シャー・カマルザマン | KALEX | +17.348 |
5位 | ハフィズ・シャーリン | KALEX | +22.858 |
6位 | リカルド・カルダス | SUTER | +24.970 |
7位 | シモーネ・コルシ | KALEX | +25.759 |
8位 | サム・ロース | SPEED UP | +27.024 |
9位 | マルセル・シュローター | TECH 3 | +27.485 |
10位 | ランディ・クルメンナッハ | KALEX | +28.062 |
1位 | ニッコロ・アントネッリ | Honda | 28'03.391 |
2位 | M.オリベイラ | KTM | +1.053 |
3位 | ホルヘ・ナバロ | Honda | +8.529 |
4位 | I.ビニャーレス | KTM | +11.074 |
5位 | Z.カイルディン | KTM | +13.043 |
6位 | ダニー・ケント | Honda | +15.224 |
7位 | エネア・バスティアニーニ | Honda | +15.873 |
8位 | K.ハニカ | KTM | +17.563 |
9位 | ジョン・マクフィー | Honda | +18.153 |
10位 | エフレン・バスケス | Honda | +18.556 |