前年にHondaからヤマハへ移籍し、チャンピオンを獲得したバレンティーノ・ロッシからタイトルを奪還するために、Hondaは4チーム体制を敷き、7人のライダーがRC211Vを走らせるシーズンとなった。
しかし、序盤戦では2戦にわたってHonda勢の活躍が続いたものの、第3戦中国GPからロッシは5戦連続で優勝するなど、チャンピオンシップで独走態勢を築き上げていった。そして、第12日本GP。ここまでロッシは9勝と圧倒的な勝率を実現し、もてぎで2位以上に入賞すればチャンピオン獲得が決定するという状況となっていたのである。
だが、そのプレッシャーからか、元々もてぎが苦手ともいわれるロッシは、予選11番手と低迷。反対にHonda勢は予選3~7番手を占拠し、日本でのロッシのタイトル獲得を阻止するかのように前方のグリッドに並んだ。
ポールポジションは前戦でチーム過去最高の2位となったドゥカティのロリス・カピロッシ。Honda勢をはじめ多くのチームがミシュランユーザーだった中、ドゥカティはブリヂストンを使用しており、もてぎでもその相性がよかったのかドゥカティの好調ぶりは大きな注目の1つにもなった。
ロッシの独走とHondaの反撃、そしてドゥカティの急浮上と、MotoGPクラスには見どころが多いシーズンになったためか、日本GPの来場者は前年よりも増え、決勝日は6万8千人、3日間合計で9万6千人と、もてぎにおける日本GP最多の観客数を記録している。
大観衆の注視する中、決勝でホールショットを奪ったのはHondaのマルコ・メランドリ。続いてカピロッシ、Hondaのビアッジが続く。ロッシは1周目7位、2周目5位と瞬く間に順位を上げ、3周目には5位にいたHondaの玉田誠を抜き去る。
ところが、そこからロッシのペースは上がらず、トップグループとの差が詰められないまま、玉田を従える形でセカンドグループを形成することになる。12周目。トップを走っていたメランドリが、ビアッジとカピロッシにかわされて3位に転落する。そして、ペースが鈍り始めたメランドリを見て、じわじわとその差を縮めていくロッシ。
追い上げが始まるかと思った直後、波乱は起こった。メランドリをやや強引にパスしようとしたロッシが、なんとメランドリに接触。2台ともに転倒・リタイアすることになってしまったのだ。
これで、序盤から激しいトップ争いを展開していたビアッジとカピロッシは、後ろを気にせずにトップ争いに専念できることになった。メランドリとロッシが転倒する直前にトップに浮上したビアッジは、金曜日の練習走行から乗れていた。決勝へ向けて順調にマシンを構築し、スタートで飛び出してから攻め続け、カピロッシを従えて快調にラップを刻む。
そして、前年に続き、Honda RC211Vの優勝かと思われたレース終盤──。
通常なら、タイヤが消耗してペースが上がらないはずの時間帯で、カピロッシが予期せぬペースアップを開始した。これは、最後までグリップ力が低下しないという、ブリヂストンの特性を生かしたスパートだった(前年にもてぎで優勝した玉田も同じブリヂストンで、終盤にトップを奪っている)。
ビアッジも限界ギリギリのきわどい走りで最後までカピロッシに食らいついき、2台のマシンはラストまで1分48秒台で周回するというハイスピードなバトルを展開し、観客を大いに魅了した。
優勝はさらにラストスパートをかけて、ビアッジを一気に1秒以上引き離したカピロッシ。ビアッジは惜敗の2位。また、メランドリとロッシの転倒後、そのポジションを守り続けた玉田がシーズン最高位の3位に入り、2年連続でもてぎの表彰台に立つこととなった。
「とにかく大変なレースだったけど、2位に入れてハッピーだ。今日のロリス(カピロッシ)とブリヂストンは本当によくがんばった。おめでとう、と言いたい。ファンにとってもおもしろいレースだったことだろう」と、ビアッジ。
ドゥカティは2003年のMotoGPデビュー以来の2勝目。これは同時に、日本GPにおける外国メーカーの初勝利となった。この後ドゥカティは3年連続で日本GPを制し、07年にはシリーズチャンピオンに輝くなど、MotoGPにおける確固たる存在を築いていったのである。
250クラスでは前年のチャンピオン、ダニ・ペドロサが連覇を目指し、第11戦までに6勝を挙げるなど快進撃を続けていた。そのペドロサを追うのが同じHondaに乗る、04年125チャンピオンのアンドレア・ドヴィツィオーゾと、250クラスで2シーズン目を迎える新進気鋭のライダー、青山博一だった。
もてぎでは、その青山がポールポジションからスタートし、5周目にトップに出ると先頭集団から浮上。以後、危なげなくトップを走り続け、ラスト7周でスパートをかけると、2位争いに手間取ったペドロサを5秒以上も引き離してゴールしたのだ。
日本人ライダーのパーフェクトな勝利に観客も熱狂、そして青山は自身のGP初優勝を母国で実現できたことは、大きな歓びとなった。「国歌が流れたときは、さすがにグッと来た。本当にうれしかった」という青山は、結果的にシーズン4度の表彰台獲得を実現し、シリーズランキングで前年の6位を上回る4位の成績を収めたのである。
さらに、前年の全日本250チャンピオンで『Honda Racingスカラーシップ』第2期生の高橋裕紀が4位に滑り込んだ。高橋もトップグループの中で健闘を続け、後半ジリジリと後退したものの、自身にとってシーズン最高位でフィニッシュした。また、ワイルドカードでスポット参戦、予選3番手となり期待を集めた青山周平は、残念ながら3周目に転倒リタイアしている。
ペドロサは、青山の後方で最後まで続いたアプリリアのアレックス・デ・アンジェリス、Hondaのホルへ・ロレンソとの2位争いを制した。これにアンジェリスとロレンソをかわした、アプリリアのケーシー・ストーナーが3位で続いた。
これでペドロサは、ランキングで続くストーナーとの差を広げ、2年連続チャンピオンに向けて大きく前進することになったのだが、この時に250クラスで活躍したライダーの多くが、現在のMotoGPクラスのトップライダーであり、この年の250クラスには、未来の可能性があったわけである。この点でも、この年の日本GPの250クラスには見どころがあったと言ってもいいだろう。
これは125クラスでも同様で、チャンピオンのアンドレア・ドヴィツィオーゾを筆頭に、前年の上位ランキングにいたライダーの多くが250クラスへ移動したため、この年の125クラスはいつになく激しい戦いが展開されるシーズンとなっていた。
もてぎでも、10台のマシンが1秒以内に並びトップグループを形成するという、まれに見る接戦が展開される。ところが、ラスト5周で転倒したライダーに後続のマシンが乗り上げるアクシデントが発生。赤旗中断により、その前の周回数でレースが成立することになってしまう。
優勝はKTMのミカ・カリオ。2位にはシリーズランキングでトップにいたHondaのトーマス・ルティが入り、引き続きランキングトップを守った。日本人では予選2番手からスタートしたHondaの小山知良が、トップグループ集団の中で4位を走行。追い上げに期待が膨らんだが、赤旗中断で4位に終わっている。
1位 | ミカ・カリオ | KTM | 30分10秒854 |
2位 | トーマス・ルティ | Honda | 30分10秒965 |
3位 | ヘクター・ファウベル | アプリリア | 30分12秒371 |
4位 | 小山知良 | Honda | 30分13秒203 |
5位 | マティア・パシー二 | アプリリア | 30分13秒260 |
6位 | マニュエル・ポッジアーリ | ジレラ | 30分13秒473 |
7位 | セルジオ・ガデア | アプリリア | 30分13秒615 |
8位 | パブロ・ニエト | デルビ | 30分13秒815 |
9位 | アルバロ・バウティスタ | Honda | 30分14秒574 |
10位 | ファブリッツィオ・ライ | Honda | 30分20秒790 |
1位 | 青山博一 | Honda | 43分52秒454 |
2位 | ダニ・ペドロサ | Honda | 43分57秒767 |
3位 | ケーシー・ストーナー | アプリリア | 44分00秒235 |
4位 | 高橋裕紀 | Honda | 44分02秒676 |
5位 | ランディ・デ・ピュニエ | アプリリア | 44分03秒217 |
6位 | アンドレア・ドヴィツィオーゾ | Honda | 44分03秒508 |
7位 | アレックス・デ・アンジェリス | アプリリア | 44分11秒653 |
8位 | ヘクトール・バルベラ | Honda | 44分17秒119 |
9位 | アレックス・デボン | Honda | 44分30秒137 |
10位 | シルバン・ギュントーリ | アプリリア | 44分30秒576 |
1位 | ロリス・カピロッシ | ドゥカティ | 43分30秒499 |
2位 | マックス・ビアッジ | Honda | 43分31秒978 |
3位 | 玉田 誠 | Honda | 43分46秒726 |
4位 | カルロス・チェカ | ドゥカティ | 43分52秒647 |
5位 | ジョン・ホプキンス | スズキ | 44分03秒711 |
6位 | コーリン・エドワース | ヤマハ | 44分05秒414 |
7位 | ニッキー・ヘイデン | Honda | 44分16秒393 |
8位 | ケニー・ロバーツ | スズキ | 44分26秒997 |
9位 | トニ・エリアス | ヤマハ | 44分42秒536 |
10位 | ルーベン・チャウス | ヤマハ | 45分05秒426 |