はじめてのトライアル講座―日本GP@もてぎに行こう!―

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日本GPに行こう!

さて、それではツインリンクもてぎに、トライアル世界選手権 日本グランプリを見に行ってみましょう!!

トライアルは、一斉スタートのレースと違って、ライダーがそれぞれのタイムスケジュールにのっとって、個々の戦いを繰り広げます。そして、実は、観戦する側にとっても、それぞれの観戦スケジュール、それぞれの観戦対象があって、楽しいトライアル観戦ができます。つまり、トライアル観戦にはセオリーはなく、どんなスタイルでも、それぞれのトライアルを楽しめるのです。

それでは、ここで観戦方法を一つご紹介します。

朝、ツインリンクもてぎに到着します。さて、まずなにをしましょうか? プログラムやコースマップなど、観戦に必要な資料はすでに手に入れているとしましょう。まず、セクションが会場内のどこに位置するか、確認してみましょう。

日本グランプリ セクションマップ

南駐車場(四輪車)付近からですと、第2セクションから第5セクションが近いです。

中央エントランス付近に設けられたスタート地点で、ライダーが順次スタートしていく様子を見守るのももちろん楽しいのですが、最初から特定のセクションを決め、そこで全ライダーがそのセクションに挑む様子を観戦するのも一つ。また、ライダーを決め、その選手とともにセクションを移動しながら応援する方法もあります。

「中央エントランス」特設ゾーン

最初のスタートは、ユースクラスの選手からです。今年はスタート順の規則が変わって、ランキング上位の選手から先にスタートすることになりました。トライアルでは、一般的になるべくあとから走ったほうが有利とされています。つまり、先行するライダーがそのセクションをどのようにクリアするかが確認できるのと、多くのライダーがセクションを走ることでコンディションが常時変わっていくからです。より上手な選手があとからスタートした場合、より大きなアドバンテージをもらうことになります。

ところが今年はスタート順が逆になり、下位の選手にスタート順のアドバンテージがあります。恐らく、これまでのトライアルとは、試合スタイルが大きく変わってくることでしょう。

ユースクラスの上位選手は、ポル・タレス(ガスガス)。7回の世界チャンピオン、ジョルディ・タレスの甥っ子です。ユースの選手は、緑の色のゲートマーカーの間を通ります。青や赤の間は、別のクラスの選手用として設定しているため、通ってはいけないことになっています。ユースクラスの最後にスタートしていくのは、日本の若手ライダー。日本ではルーキーズクラスといわれているこのクラスは、15歳で世界選手権に参加できないライダーにチャンスを与えようというものです。彼らも、緑マーカーのユースクラスを走ります(ルーキーズクラスは、土曜日のみ)。

続いて、ジュニアクラスのトップは、ポルトガル大会で優勝したパトリック・スメイジ(シェルコ)。彼らが通る青色のゲートマーカーは、ユースクラスのセクションに比べ、より難度の高いセクションを構成しています。従来は、ルーキーズクラスから大会がスタートしていましたが、今年は、ジュニアクラスのトップライダーが出走。このコントラストは、今年の世界選手権で初めて味わえる興味です。なお今年は、ユースとジュニアは13セクションが予定されています。15のうち、2個所は世界選手権プロクラスのみが走るセクションということになります。

魔法のようなライディングで、自然の地形を次々に走破していく世界のトップライダーたち。彼らの戦いは、実は緻密な計算の上に成り立っています。華麗なライディングも、高度なテクニックと、細やかかつ、強じんで、そして大胆な精神に支えられている。トライアルは、フィジカルにもメンタルにも、究極のパフォーマンスを要求されるモータースポーツなのです。

「中央エントランス」特設ゾーン 【セクション数:2】

迫力の大接近NEWゾーンが見物

第1セクションと第15セクションでつくられるゾーン。つまり、ここがスタート/フィニッシュ地点だ。ツインリンクもてぎの中心でもある。中央エントランスで、緊張感に包まれるライダーたちにどんなセクションが待ち受けているのか?

「ダートトラックの森」ゾーン 【セクション数:4】

これぞトライアル!ライダーの技を満喫

最も高低差があるヒルクライムセクション。急斜面を一気に駆け上がるセクションや、クリーンがなかなか出ない、難易度高しのセクションなどが待ち受ける!スタートで無難にクリーンを獲得した選手たちを次々と襲う難セクションゾーンだ!

「ハローウッズの庭」ゾーン 【セクション数:3】

里山にできたオアシス的エリア

ハローウッズ クラブハウス横の斜面とクラブハウス前庭につくられた親水池(滝)を利用したセクションが選手を待ち受ける。 目の前で2つのセクションが一望できるオアシス的なエリアだ!整備された里山の木漏れ日の中で観戦できるぞ!

「ハローウッズの沢」ゾーン 【セクション数:3】

自然の沢が魅力 滑りやすく高難度

特に第9セクションは、「泥+滑りやすい御影石」が待ち受ける、選手泣かせのセクション。 ハローウッズの森の中を移動しながらの観戦は、選手と自然との一体感を感じられるトライアルならではの雰囲気だ。

「ハローウッズの岩盤」ゾーン 【セクション数:3】

クリーンをゲットするのは至難の技

ツインリンクもてぎの世界選手権を語る上で欠かすことができないのが「ハローウッズの岩盤ゾーン」。大きな丸太を華麗に飛び越えるライダーは一見の価値あり!セクション全景が見渡せる、大迫力パノラマでご覧あれ!!

ジュニアクラスの最後に、ワイルドカードの日本人ライダーが走り、そして次に走るのが、ポルトガル大会で優勝した、日本を代表する藤波貴久(レプソル・モンテッサ・ホンダ)です。ジュニアクラスのライダーが走ったあとで世界選手権クラスがスタートするので、ジュニアクラスの走行でできたワダチを使って、最高難度の世界選手権クラスを走るわけですから、土曜日の藤波は大きな逆境を背負って走ることになります。例年以上に、応援しがいのある藤波となるでしょう(日曜日は、土曜日の結果順でスタートします。日曜日も、藤波がトップスタートとなるよう、土曜日の応援をお願いします!!)

どのクラスでもライダーは、2分間隔で順次スタートしていきます。スタート順が10違うと、スタート時間は20分違います。世界選手権のプロクラスだけでもライダーは20人以上になりますから、それだけで最初にスタートするライダーと最後のライダーとでは、1時間もの時間差があります。

スタート後、ライダーは第1セクションから順にトライしていきますが、ライダーについていくか、どこかのセクションで待ちかまえるかは、トライアルの観戦で、いつも迷う究極の選択です。なにがなんでも応援したいライダーがいる場合は、そのライダーがセクションをクリアした後、すぐに次のセクションに向かうことをお勧めします。徒歩、場合によっては走って次のセクションに向かう方もいますが、セクションとセクションの間が離れているところもあるので、自転車を使って移動する方もいます。

一つの場所で観戦する方は、折りたたみ椅子やマットを敷いて、次々来るライダーを応援しながら楽しむ方法もあります。

最初の1周、全部で15セクションを、すべてのライダーは3時間以内で回ってくることになっています。計算上は、ひとつのセクションあたり、コース移動も含めて12分です。この時間を使いきって移動する場合、ライダーがハローウッズの庭ゾーンの第6セクションにやってくるのは、スタートから約1時間後になります。スタートと第1セクションを中央エントランス特設ゾーンで見て、ダートトラックの森ゾーンにいかず、すぐ向かいのハローウッズの庭に移動すれば、あなたの時間は40分ちょっと逆戻りすることになります。こうやって、たとえばゾーンをひとつ飛ばして観戦すると、お目当てのライダーの前後の、多くのライダーを観戦することができるでしょう。

「ハローウッズの庭」ゾーン
「ダートトラックの森」ゾーン

競技は土曜日と日曜日と、基本的には同じセクションを走ります(土曜日の競技終了後、一部修正が加わることがありますが、まったく違うセクションになることはありません)。両日ともに2周ずつしますから、ひとつのセクションは全ライダーが4回ずつ走ることになります。うまくローテーションを組むことで、すべてのセクションで観戦することも可能です。

もちろん、観戦途中にはお腹も減ります。どこで昼食をとるかを考えるのも楽しいと思います。お弁当を広げてライダーの到着を待つのも、トライアル観戦の醍醐味かもしれません。売店でお昼ご飯を調達して観戦するなら、ハローウッズの庭ゾーンやハローウッズの岩盤ゾーンがおすすめ。お弁当持参なら、ハローウッズの沢ゾーンもいいかもしれません。

「ハローウッズの岩盤」ゾーン

今年、スタート順が上位からとなって、全体に試合のペースが早くなっています。今までなら、トップライダーはできるだけ情報を集めてセクションをトライしていたことから、そのセクションに到着してから実際に走行するまで、時間を要していました。しかし今年は、より上位のライダーほどスタートが早いので、今度は自分の走るラインや方法をライバルたちに見られたくないという心理が働きます。すると、試合の流れが早くなります。2ラップ目は、もともと持ち時間が2時間しかないので、1セクション平均8分。2ラップ目は、ついて回ろうとすると、1ラップ目よりはるかに早く忙しいので、2ラップ目こそ、場所を決めてじっくり観戦する作戦が有効の場合もあります。

観戦するときに、とっても便利なのがツインリンクもてぎから発信される情報! それぞれのセクションでの減点数をライダーごとにタイムリーにチェックできる携帯サイトです。 万が一応援しているライダーの走行を見逃しても、携帯で確認ができとっても便利なんです。
PC&モバイルでトライアル日本GPを楽しもう!(ツインリンクもてぎサイト内)

普通のレースなら、ひとつのコーナーに陣取って待っていれば、トップから順に、ライダーは目の前を何度も通過していってくれます。しかしトライアルでは、ひとつのところで見られるのは一日にたった2回ずつ。どんなにがんばっても、全部のライダーを全部のセクションで見るのは不可能なので、どんな作戦で観戦するか、観戦にも、個々の”戦い”が存在します。

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