位置情報データの活用事例を分野別に解説|路面管理・渋滞対策・防災の実践例

位置情報データ
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位置情報データは、人や車の動きを「時間」と「地点」で捉えるデータです。エリアの利用実態や移動の流れを数値で把握できるため、マーケティングから交通対策、都市計画、防災まで幅広い分野で活用が進んでいます。

本記事では、位置情報データの基本的な仕組みを整理した上で、実際の活用分野ごとの代表的な事例を紹介します。施策や意思決定に生かすためのポイントも解説するため、ぜひ参考にしてください。

目次

  • 位置情報データとは
    • 位置情報データの仕組み
    • 位置情報データでわかること
  • 位置情報データの活用事例
    • マーケティング
      • 【実例】QUICK|来客インデックスによる業績予測
    • 路面管理
      • 【実例】オハイオ州|一般車両による路面状況の推定
    • 交通安全
      • 【実例】埼玉県|急ブレーキデータを活用した交通対策
    • 渋滞対策
      • 【実例】栃木県|プローブ情報を活用した道路交通情報サービス
    • 都市計画
      • 【実例】熊本市|北熊本スマートIC 開通後の効果測定
    • 防災減災
      • 【実例】東日本大震災|被災地域の通行実績データの提供
  • 位置情報データの活用ポイント
    • 目的に合った位置情報データを選ぶ
    • 精度・網羅性・更新頻度を確認する
    • プライバシーに配慮されたデータを使う
  • まとめ

位置情報データとは

位置情報データとは、人・車・モノなどが「いつ・どこに存在したか」を示すデータです。緯度・経度と時刻を基本情報として持ち、移動や滞在、通過といった行動の実態を客観的に捉えられる点が特徴です。

近年、スマートフォンや車両、各種センサーから取得される位置情報データが増えたことで、精度が大きく向上しました。広い範囲の動きを継続的に把握できるようになったため、実務の意思決定に関わる重要なデータとして注目が高まっています。

位置情報データの仕組み

GPSの仕組み
※出典:Canva

位置情報は、おもにGPSなどの衛星測位を中心に取得されます。これに携帯基地局やWi-Fi、各種センサーの情報を組み合わせることで、より正確な位置を把握します。

GPS衛星は、地球上に向けて時刻情報を含む電波を発信しています。受信機は電波が届くまでの時間から衛星との距離を計算し、複数の衛星の情報を組み合わせることで現在の位置を特定します。一般的には、位置を正確に求めるために4つ以上の衛星が必要です。

取得された位置情報の1つひとつは、「ある時点での位置」を示す点のデータです。点のデータを時間順に並べることで、移動ルートや滞在時間といった行動の流れが可視化されます。

位置情報データでわかること

位置情報データが利用されるシーンには様々ある
※出典:Canva
※出典:Adobe Stock

位置情報データを分析すると、エリアの利用状況や移動の実態を具体的に把握できます。

たとえば、道路や施設周辺の通行量や来訪者数を把握すれば、エリアのにぎわいや利用傾向を数値で評価できます。また、滞在時間や時間帯ごとの利用状況を分析すれば、混雑するタイミングや利用パターンを明らかにできます。

さらに「どこから来てどこへ向かったのか」といった流れを整理することで、回遊ルートや交通動線の実態を把握することも可能です。施策の前後や災害発生の前後で比較すれば、変化や対策の効果を客観的に確認できます。

位置情報データの活用事例

位置情報データは、単に人や車の動きを把握するためのものではありません。実務の現場では、「現状を正しく知る」「施策を検討する」「効果を確認する」といった一連のプロセスを支える基盤データとして活用されています。

分野ごとに分析の目的や指標は異なりますが、共通しているのは、感覚や経験に頼った判断をデータに基づいて行える点です。ここでは、代表的な分野ごとに、実際の活用事例を紹介します。

マーケティング

位置情報データは、来店や通行といった「実際の行動」をもとに分析できるため、従来よりも精度の高い需要把握が可能になります。売上データだけでは見えにくかった「人の動き」を捉えられる点が大きな特徴です。

たとえば、広告や販促施策の効果を評価する際には、売上だけでなく来客数の変化を指標として確認できます。また、商圏の広がりや来訪者の傾向を把握することで、出店判断や中長期の戦略立案にも活用されています。

【実例】QUICK|来客インデックスによる業績予測

株式会社QUICKでは、許諾を得たHonda車ユーザーの走行データを活用し、小売店や工場などの駐車場への来訪状況を示す「来客インデックス」を算出しています。これは、車両の位置情報や滞在時間、駐車場の範囲情報などをもとに、実際に訪れた車両台数を指標化したものです。

従来の人流データでは、「施設の近くにいた」という曖昧な位置情報しか得られない場合も多くありました。一方、この手法では、駐車場の特定範囲を明確に識別することで、車両の出入りや滞在時間を高い精度で把握できる点が特徴です。

こうして算出された来客インデックスは、銀行や証券会社などの機関投資家に提供され、企業の売上高や生産量の予測に活用されています。

路面管理

道路管理の分野では、一般車両の走行データを活用して、道路の利用状況や路面状態の変化を把握する取り組みが進んでいます。

従来の点検は定期的に行われるものが中心で、広範囲を継続的に把握するには限界がありました。位置情報データを活用することで、日常的に異常の兆候を捉えられるようになり、早期の対策が可能になります。

【実例】オハイオ州|一般車両による路面状況の推定

米国オハイオ州では、Honda車両の走行データを活用し、路面の状態を地図上に可視化する実証実験が行われました。車両が走行中に取得する振動や加速度のデータから、舗装の傷み具合を推定する仕組みです。

専用の測定車を走らせなくても、一般車両が日常的に走るだけで広範囲の道路状況を継続的に把握できる点が大きな特徴です。さらに、ポットホールやひび割れなどの劣化箇所を地図上にわかりやすく表示できるため、道路管理者は補修が必要な場所を早期に把握できます。

従来の人流データでは、「施設の近くにいた」という曖昧な位置情報しか得られない場合も多くありました。一方、この手法では、駐車場の特定範囲を明確に識別することで、車両の出入りや滞在時間を高い精度で把握できる点が特徴です。

こうして算出された来客インデックスは、銀行や証券会社などの機関投資家に提供され、企業の売上高や生産量の予測に活用されています。

交通安全

交通安全の分野では、事故リスクの高い場所や時間帯を把握するために位置情報データが活用されています。車両の速度変化や急ブレーキの発生状況を分析することで、危険が生じやすい区間を客観的に特定できます。

また、対策実施前後のデータを比較することで、交通安全施策の効果を定量的に評価できるのも特徴です。

【実例】埼玉県|急ブレーキデータを活用した交通対策

埼玉県では、Honda車両の走行データを基盤とするHDDSを活用し、交通事故リスクの高い地点を把握する取り組みが行われました(※1)

車両の位置情報と挙動データから急ブレーキの発生状況を分析し、危険箇所を地図上に可視化します。急ブレーキが多発する地点を抽出した後、警察本部と連携して現地調査と原因分析を実施しました。その結果、見通しの悪さや無理な合流、速度超過を招きやすい道路構造などが事故リスクの要因として確認されました。

そこで、街路樹の剪定による視界確保、路面表示による注意喚起、電光掲示板の設置、ポストコーンによる合流誘導などの安全対策を実施します。対策を完了した16箇所では、急ブレーキの発生回数が約3分の1に減少し、データに基づく交通安全施策の有効性が確認されています。

(※1)参考:埼玉県 | 交通安全 | Honda Drive Data Service | Honda公式サイト

渋滞対策

渋滞対策では、通行量や速度の変化を継続的に把握できることが重要です。位置情報データを活用することで、渋滞が発生する場所や時間帯、交通の流れを可視化できます。

取得したデータは、信号制御の見直しや迂回ルートの案内、情報提供施策の効果検証にも活用できます。対策前後の変化を定量的に比較できる点も、大きな特徴です。

【実例】栃木県|プローブ情報を活用した道路交通情報サービス

栃木県では、鬼怒川周辺の渋滞対策として、Honda車両の走行データを活用した実証実験が行われました(※2)。宇都宮市内から鬼怒川左岸地域へ向かうドライバーに対し、3つのルートの所要時間をリアルタイムで表示し、空いているルートへの迂回を促す取り組みです。

栃木県の路面管理の例

具体的には、車両の位置情報から算出した各ルートの移動時間を、道路上に設置したLED表示機で5分ごとに更新します。テクノ街道、柳田街道、水戸街道の3ルートそれぞれの所要時間を分かりやすく提示することで、ドライバーが混雑状況に応じてルートを選択できる環境を整えました。

その結果、表示された所要時間は実際の走行時間と概ね一致し、ルート間の時間差が大きい場合には、混雑ルートを避ける行動が確認されました。

(※2)参考:栃木県 | 渋滞対策 | Honda Drive Data Service | Honda公式サイト

都市計画

都市計画の分野では、人や車の動きをもとに、都市機能の配置や施策の効果を検証するために位置情報データが活用されています。

たとえば、道路や施設の整備前後で人や車の流れがどのように変化したかを比較したり、特定のエリアに人や交通が集中している状況を把握したりできます。これにより、再開発の効果検証や渋滞対策の見直し、公共施設の配置検討など、根拠に基づいた計画立案が可能になります。

【実例】熊本市|北熊本スマートIC 開通後の効果測定

熊本市では、九州自動車道「北熊本スマートインターチェンジ」の開通効果を把握するため、Honda車両の走行データを用いた分析を実施しました(※3)。開通前後の移動時間や交通流を比較し、整備によって地域の移動がどのように変化したのかを明らかにすることが目的です。

分析の結果、周辺の工業団地や企業から高速道路へのアクセス時間が大きく短縮されていることが確認されました。たとえば、蓬原工業団地付近から福岡方面へ向かう場合は、所要時間が約12分短縮されるなど、物流効率の向上が具体的な数値として示されています。

熊本市の路面管理の例

(※3)参考:熊本市 | 都市計画 | Honda Drive Data Service | Honda公式サイト

防災減災

防災分野では、災害発生直後の状況把握や支援活動の判断材料として、位置情報データの活用が進んでいます。たとえば災害時には、道路の寸断や渋滞、被害状況の変化により、現地の状況を正確に把握することが難しくなります。実際の走行データをもとに通行可能ルートや交通の動きを把握できれば、支援物資の輸送や救援活動の効率化につながります。

また、平時においても、災害時の移動実態を分析することで、防災計画の見直しや避難ルートの検討に活用できます。

【実例】東日本大震災|被災地域の通行実績データの提供

東日本大震災の発生直後、Hondaは車両の走行データをもとに被災地域の通行実績情報を震災翌朝に公開しました(※4)。被災地の住民や支援に向かう人々が、安全に移動できるよう支援するためです。

熊本市の路面管理の例

公開されたデータは、防災科学技術研究所「ALL311」や京都大学防災研究所、内閣府の緊急地図作成チーム(EMT)など、さまざまな研究機関や行政機関で活用され、被害状況の把握や地図作成に役立てられました。

(※4)参考:東日本大震災 | 防災減災 | Honda Drive Data Service | Honda公式サイト

位置情報データの活用ポイント

位置情報データも様々な利用目的がある
※出典:イラストAC

まず重要なのは、「何を把握したいのか」を明確にする点です。位置情報データには、人の来訪を捉えるもの、車両の移動を把握するもの、センサーによる通行実績データなど、種類ごとに得られる情報が異なります。

たとえば、店舗の集客分析では来店や滞在を捉える人流データが適しています。一方、道路利用状況や交通安全対策の検討には、車両の走行データの方が実態を把握しやすいでしょう。

目的とデータの特性を一致させることで、分析結果を施策に結びつけやすくなります。

精度・網羅性・更新頻度を確認する

位置情報データの活用では、品質の確認も欠かせません。特に重要なのは、精度・網羅性・更新頻度の3点です。

局所的な詳細分析では、位置精度やサンプル密度が重視されます。一方、広域の傾向把握では、母数の多さやカバー範囲が結果に直結します。

また、単発の調査か継続モニタリングかによって、必要な更新頻度も変わります。欠測や偏りがあるデータでは誤った判断につながるため、分析に見合う品質か事前に確認する必要があります。

プライバシーに配慮されたデータを使う

位置情報データの活用では、プライバシーへの配慮が不可欠です。個人が特定可能なデータは利用制約が大きく、実務で扱いにくい場合があります。

行政や企業においては、社会的信頼を担保できるデータであるかが重要な判断基準となります。統計処理によって個人を識別できない形になっているか、法令やガイドラインに沿った設計かを確認しましょう。

まとめ

位置情報データは、人や車の動きを客観的に捉える手段として、マーケティング、インフラ管理、防災、都市計画など多くの分野で活用が広がっています。一方で、実務で生かすには、目的に適したデータ選定と品質確認が不可欠です。精度、網羅性、更新性、プライバシーへの配慮といった条件を満たすデータでなければ、継続的な活用は難しくなります。

こうした要件を備えているのが、Honda Drive Data Service(HDDS)です。全国規模の車両走行データを基盤に、高精度かつリアルタイム性の高い情報を提供しており、個人情報を含まない統計データとして安心して利用できます。

HDDSの詳細については、以下よりお問い合わせください。

このコラムの執筆者

執筆者写真
増田真吾
自動車ライター
自動車整備士・自動車検査員
  • 国産車ディーラー、ガソリンスタンド、車検工場で約15年間整備士として勤務
  • 国内最大手の中古車買取販売会社本部にて保証判定部署に転職し、保証認否および提携工場からの技術相談業務に従事
  • 40歳手前で自動車関連記事の執筆を開始しフリーランスとして独立
  • 2022年に自動車関連企業やサービスをきっかけとして、WEB制作やSNS支援、YouTube制作を行う「株式会社グラフィカ・ワン」を設立
  • 現在は複数のライターと主にチームとして記事執筆担当
  • 大手カー用品店、レーシングチーム、eモータースポーツなど様々なプロジェクトに参画中