天野 三三雄 氏
月刊『Basser』 編集長
天野 三三雄 氏
大学在学中に季刊『Basser』の編集アルバイトとして参加。その後、スポーツ紙釣り欄担当を経てつり人社入社。月刊『つり人』副編集長を経て、2009年より月刊『Basser』編集長を務める。『アオリイカ地獄』、『ロックフィッシュ地獄』、『シーバス地獄』などソルト系ムックの編集長も兼務。釣りはルアー全般のほかハゼ、カワハギ、カレイなど江戸前の釣りを好む。

もっとディープを、もっと手軽に

秋に釣れ盛った若いアオリイカも12月ともなれば大きいものは1kg以上に育ち、来春には2kg、時には3kg以上に育つのだから、いかに成長の早いイカかご理解いただけるだろう。つまり、冬にもガンガンと捕食してその体を大きく成長させているのだ。

となれば簡単に釣れそうなものだが、水温低下とともに深場に落ちてしまうため、オカッパリから届く範囲にいるイカが極端に少なくなってしまう。その点、岸から離れた沖をねらえるボート釣りならシーズンを長引かせることができるが、餌木をキャストする通常のスタイルでは、それもせいぜい年内いっぱいで、あとは来春にアオリイカが浅場に乗っ込んでくるまでおあずけ状態になる。
ところが、深場に落ちてもまだまだボートエギングが楽しめるようになった。それがティップランと呼ばれる新釣法である。各社から次々に専用ロッドが登場しているように、急激に人気が高まっている釣りで、簡単にいえば投げて誘う従来の釣りが「ヨコ」の釣りだったのに対し、このティップランは船べりから餌木を沈めてボトム付近で誘う「タテ」の釣りといえる。そのため専用ロッドは遠くに飛ばすことを得意にするのではなく、タテ方向への誘いのしやすさ、PEラインの絡みにくさ、船上での取り回しのよさ、そして名前のとおり、アオリイカが餌木に触れた瞬間のティップのヨコ走り=ティップランの見易さなどに力を入れている。といっても専用ロッドがないとできない釣りでもないので、まずはお手持ちの短めのエギングロッドで挑戦してみてほしい。
ティップに現われる微妙な変化を察知して掛けられるのが専用ロッドの醍醐味
ティップに現われる微妙な変化を察知して掛けられるのが専用ロッドの醍醐味

つまり、中オモリを使わないタテの釣り

餌木もこの釣り専用のヘビーウエイトタイプが各社から発売されているが、お手持ちの通常タイプの餌木を使うことも可能だ。これまでのエギングタックルになかったものとして必要なのはナス型オモリだけといっても過言ではない。セットの仕方は各人工夫を凝らしているが、もっともシンプルなのは餌木を交換するためのスナップにナス型オモリを通すこと。お世辞にも見た目は決して美しくないし、「これじゃ動きも悪くなってイカも抱かないのでは?」と思うかもしれないが、はっきりいって問題なく抱いてくる。用意するオモリは3~15gまで4~5種類。水深や潮流に対して、スムーズに沈み、誘っても簡単に浮き上がらないものを使えばよい。より小型でより沈みの速いタングステン製もおすすめ。
餌木交換用のスナップにナス型オモリをプラスするだけのシンプルさ。ただし、いつも以上に頑強なスナップを使いたい
餌木交換用のスナップにナス型オモリをプラスするだけのシンプルさ。ただし、いつも以上に頑強なスナップを使いたい
あらかじめシンカーに穴が空いている餌木もある。スナップに接続するのと、シンカーに接続するのではフォール速度や泳ぎの姿勢が変わる。どちらもそれぞれに効く状況があるようだ
あらかじめシンカーに穴が空いている餌木もある。スナップに接続するのと、シンカーに接続するのではフォール速度や泳ぎの姿勢が変わる。どちらもそれぞれに効く状況があるようだ
釣り方はアンカーで固定しない流し釣り。風が弱い場合は風まかせのドテラ流し。ボートの進行する側とは反対側が釣り座になる。餌木は通常の3.5~4号。これに適したウエイトのオモリをセットしたら、船ベリから餌木を落とし、あとは沈んでいく餌木を干渉しないように充分にイトフケを送り込む。それまで同じような速度で海中に引き込まれていたPEラインが一瞬だけフケる。それが着底の瞬間だ。これを見逃すとボートも流れているため延々とラインが引き出されるので注意。底ダチが取れたら、鋭く1回ないし数回、「ジッ」とドラッグが滑る強めのシャクリを入れる。さらにテンションを保ったままフォール。その後もラインを張って、ボトム付近で餌木を水平姿勢で泳がせてみたり、再度シャクリを入れる。そのうちにボートが流されるのでライン角度がタテからナナメになる。こうなると餌木は浮いてしまっているため、ラインを巻いて回収し、再び船ベリから送り込む繰り返し。着底したのち、一瞬でラインがナナメになってしまうようではディープのボトムの釣りは成立しないため、(1)オモリのウエイトを上げる、(2)パラシュートアンカーを投入してボートの流れにブレーキをかける、(3)エンジンを使って潮に対して仕掛けを立てる、といった対処法を講じる。簡単なのは(1)と(2)の複合だ。また、軽い餌木を深場まで沈める釣りなのでPEラインは太いと不利。0.6号前後を使うとよいだろう。
キャスティングでは餌木をボトムまで届けることもままならない水深15mオーバーで歓喜の1パイ。釣趣もさることながら、食べても冬は1番美味しい旬真っ盛りだ
キャスティングでは餌木をボトムまで届けることもままならない水深15mオーバーで歓喜の1パイ。釣趣もさることながら、食べても冬は1番美味しい旬真っ盛りだ

常春の南房ならオフシーズンなしで楽しめる!

かつてオフシーズンだった年の瀬にこの釣果。年明けはさらに水深が深くなるものの群れに当たれば入れ乗りも!
かつてオフシーズンだった年の瀬にこの釣果。年明けはさらに水深が深くなるものの群れに当たれば入れ乗りも!
今回紹介するのは千葉県館山市浜田にある『アジロボート』。冬期は休業するところが多い房総半島のレンタルボート屋さんだが、ここはオフシーズンがない(もちろん天候次第で出船できないこともある)。アオリイカの多さはお墨付きで、1月中であれば水深10~20mが中心になるだろう。この水深を擁する沖まで漕ぎ出すのは大変だが、こちらは免許不要の2馬力艇から、4人乗りから7人まで各種エンジン船がある。仲間数人で乗り合わせれば料金もかなりお手頃だ。水深や地形のわかる魚群探知機やパラシュートアンカーも標準装備と至れりつくせり。ティップラン入門には最適の釣り場といえる。キッチリと底が取れればアオリイカのほかモンゴウイカやマダコなどのお土産も加わる。
今回ご紹介したエリア
千葉県/南房のアオリイカMAP
アクセス
富津館山自動車道の終点・富浦インターからR127を南下。R128、R410を経由して房総フラワーライン(県道257線)を洲崎方面へ。
※このコンテンツは2011年1月の情報をもとに作成しております。