パシフィックGP、オーストラリアGP、そしてマレーシアGPと続いた3連戦。前戦オーストラリアGPでは、ロッシが500ccのチャンピオンを決めて意気揚がるHonda勢。今大会は、250ccクラスで加藤大治郎がタイトルに王手を掛けた戦い。手に汗を握る、連戦となった。
セパンでマレーシアGPが開催されるようになったのは、今年で3回目。例年、シーズン序盤に行われていたが、今年はタイトル争いの天王山となる終盤戦に行われる。熱帯の国マレーシアのグランプリは、まさに、暑く、熱い、戦いとなった。
予選初日、500ccクラスのフリー走行でトップタイムをマークしたのは中野真矢(Y)。朝方までの雨が残り、ハーフウエットで始まるという難しいコンディションで、選手たちは激しく変化する路面のコンディションを睨んでの予選スタートとなった。
2番手にはO.ジャック(Y)。3番手には、前戦オーストラリアGPでチャンピオンを決めたばかりのロッシ。以下、K.ロバーツ(S)、G.マッコイ(Y)、M.ビアッジ(Y)とライバル勢が続き、クリビーレ9位、カピロッシ10位、宇川徹13位、バロス14位と、ロッシをのぞくHonda勢はやや出遅れる格好となった。
しかし、完全なドライとなった午後の予選では、2年前のマレーシアGPの250ccクラスで優勝しているカピロッシが暫定PPを獲得。以下、ビアッジ(Y)、中野(Y)と続き、ロッシ4番手。バロス7位、クリビーレ9位、宇川12位という結果だった。
熱帯の国マレーシア。選手たちにとっては、コース上のライバルとの戦いだけではなく、暑さとの戦いが待ち受けている。予選初日はやや雲の多い天候だったが、それでも気温は33℃まで上がり、ライダーにとっても、マシンやタイヤにとっても過酷な戦いとなった。
2日目も、朝方まで降っていた雨が残り、午前中のフリー走行はハーフウエットからドライへと変わるコンディション。初日、やや出遅れた形のHonda勢だったが、しかし、2日目のフリー走行ではロッシの2番手を筆頭に、バロス3番手、宇川4番手と、Honda勢が調子を上げた。
午後の予選では、路面温度も上がり、どの選手もタイムアップに苦しむことになったが、暫定PPのカピロッシが今季4回目のPPを獲得。2番手にロッシと続き、以下、ビアッジ(Y)、マッコイ(Y)がフロントロー。2列目にはバロス。クリビーレと宇川はそれぞれ11位、12位というポジションで3列目スタートとなったが、セッティングもまとまり、本番での巻き返しに期待が集まった。
決勝日は晴れ。朝から熱帯の強烈な陽射しが降り注いだセパンは、125ccで37℃、250ccで38℃の最高気温を記録するまさに灼熱の戦いとなる。雲が多くなり、やや涼しくなった500ccの決勝レースだが、それでも33℃。選手、マシン、タイヤにとっては厳しい戦いとなった。
そしてオープニングラップを飾ったのはセパン2連勝中のK.ロバーツ(S)で3連勝に向けて好スタートを切る。しかし、PPスタートのカピロッシと2番手スタートのロッシ、そしてビアッジ(Y)、マッコイ(Y)、バロスと混戦模様の状態でレースは始まった。
しかし、4周目に波乱が起こる。トップ集団の中で激しくポジション争いを繰り広げていたロバーツ(S)とビアッジ(Y)が接触転倒、優勝候補の2人が早々にリタイヤとなる。以後、カピロッシがトップに立ち、マッコイ(Y)、ロッシ、阿部典史(Y)、中野真矢(Y)の5台がトップグループを形成することになった。
中盤までは、カピロッシを交わしたマッコイ(Y)がトップに立ち、ロッシがピタリとマークするという展開。その背後ではカピロッシと阿部(Y)がポジションを入れ替える戦い。そしてレースは終盤に入り、レース折り返し点の12周目にロッシがトップに浮上すると、後続を一気に突き放して21周を走り終え、今季10勝目を飾り、新チャンピオンに相応しい走りを見せることになった。
2位にはこの3連戦で3戦連続表彰台に立ったカピロッシで、ランキング2位のビアッジに4点差と迫り、最終戦では逆転のチャンスを得る。3位にはマッコイ(Y)、4位に中野(Y)。スタートで出遅れた宇川は、猛烈な追い上げで5位。クリビーレ6位。バロス7位という結果。前戦オーストラリアGPで個人、コンストラクターズの両タイトルを決めたHonda勢は、マレーシアGPでも、タイトル獲得に相応しい結果を残すことになった。
タイトル争いが天王山を迎えた250ccクラス。タイトル王手の加藤大治郎と、それを追う原田哲也(A)の戦いとなったが、予選から好調な走りを見せた加藤が、決勝でもその力を如何なく発揮。250ccクラスのシーズン最多勝利タイ記録の10勝をマーク。見事、タイトルを獲得した。
レースは今季6回目のPPスタートとなった加藤が、好スタートでホールショットを奪い、オープニングラップから後続を突き放す力強い走りを披露。序盤には2分8秒台のレコードタイムをマークして2番手につける原田(A)を圧倒。勝利を決定的にすると、最後は約15秒もの大量リードを築いて、見事、優勝でタイトルを決めた。
日本人としては、通算5人目。7個目の世界タイトル獲得で、98年に125ccでタイトルを獲得した坂田和人以来、3年ぶりの日本人チャンピオンの誕生。Hondaにとっては、97年以来、4年ぶりの250ccタイトル獲得となった。
加藤は、これでスポット参戦を含めて35戦を戦い通算16勝目を達成。今年は95年に青木治親が125ccで達成したシーズン7勝の日本人シーズン最多勝利記録を更新。今大会のシーズン10勝目は、M.ヘイルウッドとA.マンクの持つシーズン10勝に並ぶ世界タイ記録。最終戦ではGP新記録を狙うことになった。
125ccクラスは宇井陽一(D)が混戦を抜け出して優勝。2位にM.ポジャーリ(G)が入り、タイトル決定は最終戦へともつれ込んだ。チャンピオン争いに加わっていたエリアスは、トップグループに加わるも6位に終わり、チャンピオン争いから脱落。しかし、エリアスらの活躍で、Hondaは125ccクラスのコンストラクターズタイトルを決めた。
シーズン残るはブラジルGPのみ。タイトル争いは、宇井(D)とポジャーリ(G)の2人に絞られた125ccクラスの個人タイトルと、250ccクラスのコンストラクターズタイトルのふたつ。2週間後には、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで最終戦が行われる。
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