前戦パシフィックGPからの連戦となったオーストラリアGPは、各クラスともにタイトル争いの天王山。500ccクラスは前戦パシフィックGPで8勝目を挙げたロッシがタイトル王手。250ccクラスは他者の転倒に巻き込まれて転倒リタイヤに終った加藤大治郎が、再び、王手を掛ける戦い。125ccクラスのエリアスは、逆転チャンピオンに期待をつなぐ大会となった。
オーストラリアGPは、今年で13回目の開催。メルボルン郊外のフィリップアイランド、シドニー郊外のイースタンクリークと舞台を変え、97年から再びフィリップアイランドで行われるようになった。
オーストラリアは、94年から98年まで5年連続で500ccチャンピオンになったドゥーハンの母国。また、ハイスピードコーナーが多いコースレイアウトで、例年、白熱した戦いが繰り広げられることで人気のある大会。今年も東西約15キロ、南北5キロの島の中にあるフィリップアイランドサーキットに大勢の観客が詰め掛けた。
予選初日は雨が断続的に降る生憎の天候。125ccクラスと250ccクラスはウエットで始まったが、500ccクラスのフリー走行は、辛うじてドライコンディションで行われた。このセッションでトップタイムをマークしたのはバロス。以下、C.チェカ(Y)、ロッシ、芳賀紀行(Y)と続いた。
午後の予選も、各クラスともに雨が降ったり止んだりの天候となったが、500ccクラスは辛うじてドライコンディション。しかし、強風のためにタイムは全体的に伸びず、選手たちにとっても厳しい予選となった。トップタイムは地元オーストラリアのG.マッコイ(Y)。以下、バロスとロッシのHonda勢が続き、強風の影響で思うようにセッティングを詰めきれなかったクリビーレは12位、宇川15位という結果だった。
2日目も相変わらず風が強く、選手たちを悩ませることになる。しかし、セッションを追う毎にマシンのセットアップが着々と進んだロッシが2日目のフリー走行では、初日から大きくタイムを伸ばしてトップタイム。O.ジャック(Y)、中野真矢(Y)、C.チェカ(Y)とライバル勢が続き、以下、バロス、カピロッシが僅差で追うという展開となった。
午後の予選では、昨年のオーストラリアGPの覇者M.ビアッジ(Y)が大きくタイムを伸ばしてポールポジションを獲得。ロッシは2番手、バロス3番手。4番手にS.ジベルノー(S)と、フロントローにHonda勢が2台、2列目には、カピロッシが6番手、セッティングをつめてきた宇川が8番手に浮上して、Honda勢の4台が優勝を狙える位置につけた。クリビーレは思うようにタイムを伸ばせず13番手。しかし、トップのビアッジ(Y)からクリビーレまでが約1秒差と、決着は壮絶な戦いが予想された。
タイトル王手のロッシは、ランキング2位につけるビアッジ(Y)が優勝しても、8ポイント(8位以上)獲得でチャンピオンが決定するというシチュエーション。同時にコンストラクタータイトルも王手と、Honda陣営にとっては、緊張の決勝日を迎えることになった。
天候は曇り。雨の心配はなかったが、相変わらず強い風の中で決勝が行われることになった。ホールショットを奪ったのは予選2番手から好スタートを切ったロッシ。以下、O.ジャック(Y)、バロス、芳賀紀行(Y)、ビアッジ(Y)と続いた。序盤は、この5台がトップグループを形成。オープニングラップこそロッシがトップに立つが、2周目からはバロスが積極的に前に出る走りを見せて集団を引っ張ることになった。
中盤になると、カピロッシ、宇川徹、中野真矢(Y)らのセカンドグループがトップ集団に肉薄。終盤にさしかかる頃には、トップグループは9台へと膨れ上がった。
目まぐるしく入れ替わるポジション。しかし、その中からロッシとビアッジ(Y)、そしてカピロッシが抜け出す。ラスト3周ではビアッジ(Y)がトップに出てペースアップを計り、それをロッシとカピロッシが激しく追うという展開となった。
そして迎えた最終ラップ。最終コーナー手前の右ヘアピンのブレーキングで虎視眈々とチャンスをうかがっていたロッシがビアッジ(Y)を交わすことに成功。最終コーナーからフィニッシュラインにかけて、ロッシのスリップストリームを使って逆転を試みたビアッジ(Y)を抑え切ったロッシが、今季9勝目を達成。83年のスペンサーの21歳に次ぐGP史上2位タイの22歳で500ccタイトルを獲得。同時にHondaは、2年ぶり通算13回目のコンストラクタータイトルを獲得した。
2位にはビアッジ(Y)。3位にはスタートの出遅れを見事に挽回したカピロッシ、4位にバロス、5位には、終盤になって猛烈に追い上げた宇川が入るなど、トップ5にHonda勢が4台という素晴らしい結果を残した。
250ccクラスは、予選3番手からスタートした加藤大治郎が、序盤こそF.ニエト(A)と原田哲也(A)に先行を許したが、4周目にトップに立つと快調なペースで後続を突き放す素晴らしい走りで今季9勝目を達成。前戦パシフィックGPで他者の転倒に巻き込まれてリタイヤに終った雪辱を見事に果たした。これで加藤はロッシに続いて初タイトルに王手。次戦マレーシアGPでタイトル獲りに挑むことになった。
125ccクラスは、トップ集団が10台前後に膨れ上がるし烈な戦いとなり、終盤になって集団から抜け出した宇井陽一(D)が優勝。2位にM.ポジャーリ(G)、3位には予選17位というハンディキャップを跳ね除けたエリアス。これでチャンピオンシップでトップのポジャーリ(G)とエリアスの差は16点。エリアスはラスト2戦での逆転に掛けることになった。しかし、コンストラクタータイトルは、Hondaが王手を掛けることに成功。次戦マレーシアでは、500ccに続いてタイトル獲得の期待が膨らんだ。
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