全国的に河川工事による生息環境の悪化などで数が少なくなっているカジカだが、近年は漁協による放流活動や、下水道の整備にともなう水質の改善などにより、一部の地域では生息数の回復が見られるようになってきた。それだけに、カジカは健全な清流の指標とされることもある。見ためは不格好とも思えるくらいだが、大きな頭にクリッとした目の付いた姿は愛きょうもたっぷり。釣ったカジカを眺めていると、不思議とかわいらしく思えてくる。子どもと一緒に釣りを楽しんだ時は、観察用水槽などに入れて、まずは特徴的な体付きをじっくりと眺めてみてほしい。
そしてカジカは、昔から味のよいことで知られてきた。山間部では重要なタンパク源だったが、石川県金沢市の郷土料理である「ゴリ料理」など、その美味しさゆえに大切にされてきた土地もある。現在、数多くいる魚ではないので、たくさん釣れた時は必要な分だけを残して川に戻してやりたいが、野趣あふれる貴重な味もぜひ体験したい。
おすすめは何といっても河原で炭を起こしての炙り焼き。1本の串にカジカ2~3尾を刺したら、あとは炭火の周りに置いてじっくりと焼き枯らす。身の脂で表面が黄色くなるくらい、じっくりと火を通すのが美味しく食べる一番のコツだ。充分に焼き上がったところで醤油を垂らし、頭から丸ごと噛みしめれば、川の滋養が凝縮したような濃厚な味にきっと驚くだろう。家庭でより手軽に調理するなら、二度揚げの空揚げにするのもよい。心地よい秋空の下、釣って、眺めて、味わって、ぜひ清流のカジカ釣りを満喫してほしい。