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AM 5:00
食欲の秋に編集部の若手がヒメマスを釣るために向かったのは神奈川県芦ノ湖。
ベストタイムにスタートするため、湖畔の前夜車中泊作戦をチョイス!
ベニザケの陸封魚として知られるヒメマスは淡水屈指の美味魚。今回のミッションはこの憧れの魚をゲットして、キャンプ場で待つ4人家族に届けること。そんな重要な任務とあって成功は不可欠!ふたりは現地前夜入りで万全を期したのでした。
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落合洋平さん
落合洋平さん
月刊『つり人』の編集スタッフとして活躍中。そんな彼がハマったのは、エレクトロニクスを駆使した最先端のカープフィッシング。今回はそのお披露目も兼ねているようで…。
松邨龍亮さん
松邨龍亮さん
『FlyFisher』の編集部員なので、ゲームフィッシングのメッカである芦ノ湖は身近な存在。それだけにミッション未達成は許されず、ちょっと肩に力が入ります。
淡水魚でいちばん旨い魚って?

淡水魚でいちばん旨い魚って?

ヒメマスはあのベニザケの陸封型

気がつけば、朝夕が涼しくなって、秋の足音が近づいていた。
少し高地に上がればススキの穂が黄金色に輝き、入道雲が支配していた空もすっかり高くなって、日によっては鰯雲が広がったりする。
そんなある日の編集部。若手の落合さんと松邨さんが昼食から戻ってきた。手にはコンビニ袋。食べたばかりのはずなのにサンドイッチが入っている。
「食欲の秋なんて言うけどさ、本当にそうだよね。定食を食べても全然足りない」と、照れ笑い。
このひと言が今回のミッションにつながるとは夢にも思わなかったふたり。

2週間後の週末の朝。ふたりは神奈川県芦ノ湖近くの駐車場で朝を迎えていた。
コトの経緯はこんなぐあい。例のサンドイッチ話を横で聞いていた山根編集長が、ミッションを思いついたのだ。
「おい、食欲の秋だの何だの言うなら、ヒメマス釣ってこいよ。淡水でいちばん旨い! なんて言われるくらいだから、今のお前らにぴったりだな」
春夏秋冬、全国津々浦々のおいしい魚を食べてきた編集長も一目置く魚とあって、急に表情が明るくなるふたり。もちろん、釣ったことも食べたこともない。
ヒメマスは、サケ類の中でいちばん旨いといわれるベニザケの陸封型だ。つまり、ヒメマスが海に降りて大きくなればベニザケということ。そりゃおいしいに決まっている。
北海道の阿寒(あかん)湖あたりが原産地で、支笏(しこつ)湖や洞爺(とうや)湖、十和田湖、中禅寺湖、芦ノ湖、西湖、本栖湖などに棲んでいて釣り人の人気も高い。
鮭の中でいちばん旨いといわれるベニザケの陸封型がヒメマス。だからその味は折り紙つきだ。華麗な姿と抜群の食味…人気魚なのもうなずける

芦ノ湖の女神に挑戦

芦ノ湖は古くからの人気観光地。明治時代、政財界の重鎮たちもここに休息の地を持っていた。この「山のホテル」も、かつては岩崎小弥太の別荘。初夏にはバラやツツジ、秋には紅葉を愛でる人々でにぎわう
芦ノ湖は古くからの人気観光地。明治時代、政財界の重鎮たちもここに休息の地を持っていた。この「山のホテル」も、かつては岩崎小弥太の別荘。初夏にはバラやツツジ、秋には紅葉を愛でる人々でにぎわう
「沖の深場を泳いでいるから、トロウリングで釣るのが一般的で、ヒメトロなんて呼ばれてる。でも、ねらった層をきちんと流すのは簡単じゃないぞ。イトの長さ、オモリの重さ、ボートのスピードのバランスがとれて、やっと魚がいる水深を探ることができるんだ」と編集長。
そこで、東京から近くていいサイズのヒメマスが期待できる芦ノ湖をピックアップ。いきなりふたりだけで初挑戦は無謀すぎるので、同湖の漁協組合長で、釣りの名手、野崎茂則さんに教えを請うことになったというワケ。
しかし、今回は、編集長からもうひとつのミッションも飛んできた。
「ちょうどその日、俺の知り合いが芦ノ湖でキャンプを楽しんでるんだ。子ども連れだから、釣ったヒメマスを届けてやってくれ。…そうだなぁ、コイ釣りも手ほどきしてやってくれないか…」
コイ釣り指南はいいですけどね…魚が釣れなかったら手ぶらで訪ねるわけにはいかないし…ふたりはちょっと不安そう。
さて、箱根の女神は微笑んでくれるでしょうか。

ふたりが選んだのは“現地で仮眠”作戦

広々車内で前夜の作戦会議

とはいえ、朝も夜もない激務の編集部。ちょっと疲れ気味のふたりは、何やらひそひそ相談中だ。
「夜中に家に帰って、早朝に出かけるんじゃ寝る暇もないし、ちょっときつくないか?」と落合さん。
「そうだよねぇ。仕事を終えたらそのまま出発して、現地で仮眠して朝を迎えたほうが楽だよな」と松邨さんもうなづく。
そんなわけで、ふたりは車中泊のできるクルマをチョイス。理由は、エコで財布に優しく、身長182cmの落合さんもゆったり寝られるってことだとか…。こういうところはしっかりしている。仕事もそうだといいのだけれど…。

こうして神田を深夜に出発したふたりは、前夜箱根に到着した。
「軽自動車だけど走りがしっかりしていて、箱根の山道でもストレスなく走ってこられたよ。視界も広いので長距離運転もラクだしね。燃料計を見たけど、かなり燃費もいいみたい」と、落合さん。

翌日は、ヒメマス釣りだけではなく、キャンプ場で待つ家族のもとへ魚を届け、カープフィッシングの指導までするので、タイムスケジュールをしっかり立てておかなければならない。
…ってことで、普段は万事マイペースのふたりが、真面目な顔で車内の作戦会議を開始。やるときはやる!
そして就寝。釣り道具や雨具を積んできたけれど、長身の落合さんと松邨さんのふたりがラクラク横になれるスペースでしっかり熟睡。前夜車中泊は正解だった。
“現地で仮眠”作戦大成功!
深夜の編集部を出て箱根に到着したふたり。翌日に備えて車内の作戦会議となった
深夜の編集部を出て箱根に到着したふたり。翌日に備えて車内の作戦会議となった
車内は、男ふたりが寝るのに充分。締切で疲れていたこともあって、このまま朝まで熟睡だった
車内は、男ふたりが寝るのに充分。締切で疲れていたこともあって、このまま朝まで熟睡だった
ちなみに落合さんは182cm!長身の彼でもこのとおりのクリアランスだ
ちなみに落合さんは182cm!
長身の彼でもこのとおりのクリアランスだ
ちなみに落合さんは182cm!長身の彼でもこのとおりのクリアランスだ
湖畔の道路は快適そのもの。樹々の間から湖面がのぞいたり、緑のトンネルをくぐったり…
湖畔の道路は快適そのもの。樹々の間から湖面がのぞいたり、緑のトンネルをくぐったり…
翌朝、芦ノ湖は晴天だった。お目当てのフィッシング・ショップ・ノザキがあるのは元箱根湾。静かな湖畔道路を快適に走る。湖面は波もなく、ほぼ無風。富士山には雲がかかって姿を見せなかったが、青い湖面に箱根神社の赤鳥居が映える光景を前にふたりもうっとりだ。
「いやぁ、ホントに気分爽快だね。仕事の疲れも吹っ飛んだし、車中泊って釣りに最高!」と松邨さん。
桟橋脇に立つと、湖水が澄んでいるので2~3mの深さまではっきりと見える。40cmを超す大きな魚が何尾も泳いでいった。
※撮影:浦壮一郎
※このコンテンツは、2012年10月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。