人気沸騰! 楽々ワカサギ釣り
師走初頭の編集部にて…
師走の月刊『つり人』編集部に、いつものドスの効いた声が響いていた。
「今年も残り少ないが、振り返ってみるとつり女子のメンバーはよく頑張っていろいろと魚を釣ってくれたなぁ」
ご存じ山根編集長である。
「そうですねぇ。思ったよりも健闘してくれましたよね」
そんな調子のいい相槌を打つのは落合さんだ。
「……くれましたよね、じゃねえよ。お前ら、この前丸沼で
ボウズを食らったじゃないかよ。魚ナシの撮影なんていう醜態さらしたのはお前と松邨だけだぞ!」
その怒声を聞いて松邨さんが駆け寄ってきた。
「あれはひと晩で4℃も水温が上がるなんてアクシデントがあったんですから、勘弁してくださいよ。つり女子と一緒に釣りをさせてもらえれば、編集部の凄さをビシっと見せつけてやりますよ!」
「…とか何とか言って、合コンの約束でも取りつけようっていうんじゃないのか。ま、いい。そこまで言うなら行ってみるか? どうせなら、食べて旨い魚がいいな…負けたほうが料理して御馳走するってのはどうだ」と編集長があおる。
「望むところです! つり女子に料理させて、腹一杯食ってやりますよ」と、落合さんが豪語した。
色白の優男だが、こういう時、言うことは言う。
でも、大丈夫ですかぁ…そこまで強気になっちゃって。つり女子は、なかなか手強いと思うんだけどなぁ。
富士山麓の冬の女神
そんな展開で、今回は男女の合同釣り会となった。
「そういえば、山中湖のドーム船が予約もとれないくらいの人気だって言ってたな。今回のミッションは"冬の
ワカサギ対決! つり女子にカッコいいところを見せつけろ!"だ」と、編集長が高らかに宣言した。
願ってもないミッションにボルテージが一気にアップする。
「了解しました。ワカサギは、繊細な中にも攻めの釣り…こればっかりは、つり女子が出る幕じゃありませんね」
落合さんが自信満々の勝利宣言。その強気の背景にはワケがある。一昨年の秋に月刊『つり人』で、中禅寺湖や丸沼のワカサギ取材を手がけ、10ページ以上も特集を組むために、さまざまな情報を集めていたのだ。
ちょっとフェアじゃない気もするが、たしかに負ける要素はなさそうで、あの丸沼の屈辱を一気にはらす大チャンスであります。
いつも厳しい編集長も、今回ばかりはかわいい部下に温情のミッションを与えたのかも…。そんなワケないか。
老若男女、誰でもOKのイージーフィッシング
パールカラーの妖精は意外なファイター
ワカサギはパールホワイトの華麗な魚体から、湖の妖精だの、冬のアイドル魚だのとはやされているけれど、実はなかなかのファイターなのだ。まず、好奇心が旺盛で食欲も旺盛。釣り番組の水中映像などで、激しくエサを取り合う姿やキラキラと輝くハリや
オモリに突進していく姿を見た方も多いはずだ。
その一方で、神経質で狡猾な顔も持っている。同じエサを使い続けると食いが落ちたり、誘いや間の取り方のちょっとした違いで雲泥の差が現われたりする。
カジキのような豪快なジャンプも、
ニジマスのような疾駆も、
イシダイのようなパワーもないこの小魚に、冬になると
アユや
バスや
ヘラブナのベテランたちが足繁く通うのも、華麗にして狡猾、豪快にして臆病という、ジキルとハイドのようなワカサギの釣りに心を奪われてしまったからなのである。
さて、山中湖は人気ワカサギ釣り場のひとつで富士山に最も近い湖だ。面積は6.8㎢で、富士五湖最大。湖面の標高は981mで、昭和40年代までは軽トラックで走れるほど厚く結氷したそうだが、近年は冬場でも結氷しづらくなり、厳寒期でもボートからの釣りが主体になっていた。とはいえ、氷点近くの湖上はめちゃくちゃ寒く、特に女性や子どもにはツラかった。
山中湖のワカサギ釣り革命
しかし、10年ほど前に一大変化が起こった。近代的な専用大型船がデビューし、瞬く間にワカサギ釣りの主役となったのである。真っ白な富士山を眺めながら釣りができるように設計された広大なガラス窓、セーター1枚でも釣りが可能な暖房と断熱性に優れた船体、魚探を駆使した船長の細かいアドバイス、女性客を想定した清潔で明るいトイレ…まったくのビギナーでもワカサギ釣りを満喫できるようなシステムが整えられ、週末は家族連れやカップルで満席が続いた。
その後、次々と同様のドーム船がデビュー。山中湖のワカサギは、老若男女、誰でも楽しめる冬のレジャーに変身したのである。
とにかく楽。そして簡単。朝の出船だって定刻は決まっているが、その後も大型ボートで桟橋とドーム船を送迎してくれるから、スロースタートOK。もちろん、早上がりだって可能だ。レンタルの道具やエサも完備なので、手ぶらで出かけられるし、船長がエサの付け方から、その日の
タナ、誘い方、魚の外し方まで丁寧に教えてくれる。
ワカサギブームの到来で、用具も一気に進化した。かつて、ワカサギのハイスペックモデルは、名手が立ちあげた工房などで生み出されるハンドメイドが多く、初心者には入手も操作も容易ではなかった。
しかし近年、大手メーカーから次々と先進のワカサギアイテムが発表され、その多くは最先端の機能を搭載しながらも、初心者が簡単に扱えると好評だ。モーター内蔵で釣り糸の巻き上げは自動、そのスピードも調整可能。液晶パネルのデジタル水深カウンターまで装備という、従来の釣具の概念を超える先進ぶり。
※撮影:浦壮一郎/文:三浦事務所
※このコンテンツは、2011年12月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。