#4 “いい音”だと、
ずっとギターを弾きたくなる。

コンテンポラリー・シンガーソングライター尾崎裕哉

LiB-AID E500 for Musicを電源とするオーディオのサウンドを確かめ、開発者とも話を重ねた尾崎裕哉さん。最後はギターを手に取り、シンガーソングライターとして一番手慣れた方法でE500 for Musicの実力を確かめていく。

E500 for Musicの開発者である小野寺さんからモノ作りに対するこだわりや、この製品が創られた背景を伺うと、今度は「ぜひ、ギターでも音を試して欲しい」とお願いされた。ギターからアンプ、そしてスピーカーというアナログ/アナログ変換における電源の効果は開発の中で試していないので、どれだけ効果があるか関心があるらしい。さすがエンジニア、どんなときでも技術に真正面から向き合っているから、これだけの製品を創り出せるのだろう。
だけど、小野寺さんに頼まれなくても、僕自身がE500 for Musicとアンプを繋いだギターの音を確認してみたかった。それは、このレポートの1回目でも少し触れたけど、Hondaの蓄電機との出会いである野外のアコースティックライブでの演奏という忘れがたい経験だったからだ。あのとき、曲の合間に鳥のさえずりが聴こえてくるという発電機を使う野外フェスでは味わえない体験をした。今回はスタジオという厳密にサウンドのクオリティーがわかる環境の上に、オーディオ用に強化された電源であるE500 for Musicときたら、そこでギターが奏でるサウンドには否が応でも期待は高まる。

まず最初に、マーティンのギターアンプを“壁コン”に繋いて弾いてみた。いつも通り、小さなアンプだけど結構イイ音だ。問題はない。気持ち良く弾ける。

いよいよ、アンプをE500 for Musicに繋いでみる。

繋いだ瞬間にわかる。ギターを弾く前からこれは違う。アンプがノイズまで一緒に増幅している「ジー」という音が明らかに減った。静寂が今か今かとギターが鳴りだす瞬間を待っているような感じ。
そして、弦を弾く。いつものお気に入りのマーティンギターだけど、余計な倍音がなくなった。音が鳴ったときのトランジェントがあって、音の立ち上がりがより明確になる。アンプを“壁コン”に繋いでいたときは、音の立ち上がりがもう少しぬるっとしていた。
そして、音がすごく素直に出てくる。よく、ギターの音色を温かいか冷たいかなどと表現するけど、単純にギターから温かさがそのまま、冷たさがそのまま出るような印象と言えばいいだろうか。僕の感情が指先から弦を通してギターから奏でられるような、ごまかしの効かないような素直さだ。
これほど、ノイズが少なく素直な音だと、エフェクトも安心して掛けられる。普段はリバーブなど負荷をかけると音が汚くなってしまうこともあるけど、余計なノイズがないから安心してその隙間を埋められるんだ。

気持ちいい。なんかずっとギターを弾いてしまいたくなる。

E500 for Musicは、当初オーディオ用の電源なのだから、オーディオ機器と並べても違和感のない形にした方が良いって意見もあったらしい。だけど、ハンドルのあるベースの蓄電機と同じ形状が選択された。その背景には、Hondaが発電機で「電気を持ち出すこと」にこだわった様に、「イイ音」も外に持ち出して欲しいという開発者たちの想いがあったからだ。

オーディオ機器だけじゃなく、ノートパソコンとDAC内臓アンプを繋いでヘッドホンで聴いたり、僕が今日試したように楽器とアンプを持ち出したり。家のテラスやドライブで出掛けた先で、あるいは別荘やヨットの中で楽しむなど、自宅のオーディオの前に縛られるのではなく、「イイ音」をさまざまなシーンで楽しむ姿を想像して開発したことを伺った。こんな発想もオーディオメーカーではないHondaだから生まれてくるのだろう。
そんな開発者たちの期待に僕が応えるとしたら、E500 for Musicと一緒にマイクとパソコンを持って出掛けよう。これで、どこでも録音スタジオだ。しかも電源まで本格的だからサウンドも手抜きはない。出掛けた先で出会う、ふとした瞬間から曲が生まれることを想像したらワクワクしてくる。

もちろん、自宅のオーディオルームにこだわるときも、E500 for Musicは最適な電源だと思う。価格は一般的な感覚からしたら高くはあるけど、オーディオのクリーン電源の世界でいうとむしろお得かも。しかも、面倒な電気工事なんてことも不要で手軽だし、マンションだったらコンセントを変える工事なんてダメなこともあるかも知れない。本格的な製品なのにとても導入しやすいと思う。

そして今回の試聴で、音楽にとって電源の大切さを改めて思い知った。
僕は、正直言って電源というのは洋服でいうと下着みたいなものだと思っていた。普段は見えないんだから、下着にまでこだわりを持つか持たないかという気の持ちようという感じ。だけど、今回の試聴で、音楽にとっての電源は、洋服にとっての繊維なんだと感じたんだ。繊維が変わると着心地も動きも洋服自体が確実に変わる。表現をするとき、自分が変われば周りの人にもその違いが伝わる。
そう考えたら、ギターでエフェクターを使うときに、より良い電気をつくる装置があるんだけど、それが10万円くらいするものだから、必要なのかなと思っていたけど、ゴメンナサイって謝りたくなっちゃった。

E500 for Musicみたいなキレイな電源が、楽器屋さんやライブハウスとか、音楽の身近にあるといいな。やっぱり、いつでも“イイ音”に触れて欲しいと思うから。
“イイ音”で音楽を聴くというのは、本当に素晴らしい体験だと思う。
今回、E500 for Musicで僕の曲「Glory Days」を聴いたとき、すごく驚いた顔をしていたと思う。なんでかというと、自分の曲だから「Glory Days」はいろんなところで聴いたけど、今日の1曲は制作しているときにスタジオで聴いていたサウンドにビックリするほど近かったからなんだ。本当に驚いたし、一所懸命に曲を作っていたときの気持ちを思い出させてくれた。
“イイ音”で聴く音楽は、きっとその人にさまざまな感情を呼び起こしてくれる。そこには、聞きなれた曲の中にある思わぬ発見や新しい音楽との出会いが待っていると思う。ぜひ、E500 for Musicで、オーディオのためのピュア電源によって生み出される“イイ音”で音楽を楽しんで欲しい。

尾崎裕哉 スペシャルムービー

■︎前編 サウンドレビュー

■︎後編 開発者インタビュー

コンテンポラリー・シンガーソングライター尾崎裕哉

1989年、東京生まれ。バイリンガル、コンテンポラリー・シンガーソングライター。もっとも敬愛するアーティストはジョン・メイヤー。父親が遺した音源を繰り返し聴き続け歌唱力を磨き、ギターとソングライティングを習得。ライヴパフォーマンスの経験を重ねながら、バークリー音楽大学の短期プログラムへ参加し、音楽スキルをレベルアップ。
2017年ホールツアー《HIROYA OZAKI "SEIZE THE DAY TOUR 2017"》が開催された。