#2 LiB-AID E500 for Musicで
音が生まれ変わる理由

コンテンポラリー・シンガーソングライター尾崎裕哉

LiB-AID E500 for Musicと商用電源との違いについて聴き比べを行った尾崎裕哉さんは、その音の変化に驚きを隠せない様子。どうしてそこまで違いが出るのか? 興味を抱いた尾崎さんは、開発者の話に熱心に耳を傾ける。

CDで僕と父の曲を聴き比べて、Hondaが美しきサウンドのためのピュア電源と銘打つLiB-AID E500 for Musicが、確かにオーディオの音を良くする優れたポテンシャルを持つ電源であることは分かった。商用電源、いわゆる壁のコンセント(通称:壁コン)から電源を取ってオーディオを鳴らした場合のサウンドの違いは予想を超えたレベルだった。
どうしてそこまで違いが出るのか。自宅のオーディオでも電源にこだわっている僕としてはどうしても知りたい。今回、一緒に試聴をしてくれたE500 for Musicを開発したエンジニア、小野寺泰洋さんに話を聞くことができた。
E500 for Musicで目指したもの。それについて尋ねたとき、小野寺さんから出てきた言葉はすごく印象的だった。
「とにかくキレイな電気を供給すること。音を良くするって意識はなくて、音源を音楽そのものに近づけたい」この一言に、Hondaの姿勢が表れている。Hondaはオーディオの機材を作ろうとしたのではなくて、どこまでも忠実にオーディオ用の電源としてのあるべき姿を追及したのだろう。

小野寺さんの説明を聞くと、投入した技術的な要素は大きく分けて2つあることがわかった。

まず1つめが、「きれいな波形の電気を供給する」こと。

これは、蓄電機がバッテリー駆動の電源であることで達成されている。つまり、E500 for Musicは“壁コン”から独立した電源という事。コンセントの先で起こる家電のオン/オフや電線を伝ってくる家の外からのノイズなど、悪い影響を及ぼすさまざまな要因や発生源から切り離して常に一定の電気を供給することができるということだ。
そして、直流のバッテリーから100Vの交流に変換するインバーターの精度が高いこと。これは、Hondaが20年ほど前に販売を開始し改良を重ねてきたインバーター発電機から受け継いでいる技術で、理想的なまでに美しいサインカーブの波形を生み出している。まさに「ピュア電源」というわけだ。

そして2つめが、「オーディオに特化した徹底したコダワリ」。
ベースとなった蓄電機でもキレイな電気は実現できているから、オーディオ向けに何も手を加えていなくても壁コンと比較すれば十分に音の変化を実感できる。そのことがHonda開発陣のエンジニア魂に火をつけたのだろうか。

ここからのコダワリはすごい。まず、コンセントにはハイエンドグレードのオーディオ用を搭載している。僕も自宅では音質を求めてホスピタルグレードなるコンセントに交換しているが、E500 for Musicはそれを随分と上回る性能のコンセントを選んでいる。そのコンセントを収めるコントロールパネルは、ベースとなった蓄電機の樹脂からアルミ合金に変更されている。ほとんど同じ見た目だけど、剛性は段違いで微細な振動まで抑え込む。生み出したキレイな波形の電気をダイレクトに送り出すために、内部のAC電源ケーブルは純銅を超える導電率を誇る精密導体に変えている。さらに本体内側に電磁波シールド材を施して、アンプから発生するノイズまでシャットアウトするこだわりよう。まさにオーディオ界隈で定評のある材料やパーツを惜しみなく使うことで、振動・静電気・ノイズ対策を施しているというわけだ。

話を聞いて面白かったのは、そうした開発を電源の波形のデータを見ながら行ったのではなく、オーディオセットを購入して、開発中のE500 for Musicを繋いでクラシックやオペラ、ときにはアイドルソングと曲を変え聴き比べながらチューニングしていったらしいんだ。
ベースとなった蓄電機のままでは、音の解像度が細かくなり過ぎてノイジーに聴こえ、高い音が強くなり過ぎる印象を持ったらしい。そこで、効果がありそうな部品や素材を集め、一つ一つ組み合わせを変えては聴き比べを繰り返すことで自分たちの追い求める音をオーディオが奏でるようになるまで近づけていく。高価な素材や部品を使えば良くなるというものではなくて、ベストなバランスを求めて何度も何度も検証する。
そうやって試行錯誤を繰り返した小野寺さんの話を聞くと、エンジニアが行うモノ作りと僕らの曲作りがすごく近いものに感じてきた。

オーディオメーカーの開発者なら音を聴きながら目指す音にチューニングをすることは当然ともいえる。だけど、小野寺さん達は普段はエンジン音を聞きながらモノ作りをしているHondaのエンジニアなのである。白い作業着を着てオーディオを前に腕組みしてる姿を想像して欲しい。僕は、思わずにやけてしまった。
狙ったサウンドに辿り着いたときの小野寺さんたち開発者の顔は、きっと1曲出来上がったときの僕らアーティストと同じような満足気な顔をしていたことだろう。

尾崎裕哉 スペシャルムービー

■︎前編 サウンドレビュー

■︎後編 開発者インタビュー

コンテンポラリー・シンガーソングライター尾崎裕哉

1989年、東京生まれ。バイリンガル、コンテンポラリー・シンガーソングライター。もっとも敬愛するアーティストはジョン・メイヤー。父親が遺した音源を繰り返し聴き続け歌唱力を磨き、ギターとソングライティングを習得。ライヴパフォーマンスの経験を重ねながら、バークリー音楽大学の短期プログラムへ参加し、音楽スキルをレベルアップ。
2017年ホールツアー《HIROYA OZAKI "SEIZE THE DAY TOUR 2017"》が開催された。