2016 MotoGP レギュレーション解説

2. Moto2クラス

急速に広がる新技術を解説!

2-2. クイックシフター

 レース映像を見ているときに、主にライダーの左手ハンドルにあるクラッチレバーに注目してみてください。コーナーに向かっていくときなど減速時にはレバーを握っているのに、コーナー立ち上がりの後や直線走行中などの加速時には握っていない選手がいれば、クイックシフター装着車の可能性が高いです。市販車に採用されることもあるので、バイク好きの方にとってはおなじみの技術になりつつあるのかもしれません。

 クイックシフターの装着については、これまで以下の条文で、「テクニカルディレクターの承認を得ること」と規定されているのみでした。

(原文)

2.5.3.9 Transmission

8. Quick-Shifter gearchange systems must be approved by the Technical Director, to ensure that they comply with required specifications (as described in the Moto2 Constructor Information notes available from the Technical Director).

 

(日本語訳)

2.5.3.9 トランスミッション

8.クイックシフターのギアチェンジ機構は、(テクニカルディレクターの提供するMoto2製造者情報解説で叙述されているとおり)必要な仕様を満たしていると保証するために、テクニカルディレクターによって承認されていなければならない。

左:クラッチレバーを握って減速、右:加速時クラッチを使用していない左:クラッチレバーを握って減速、右:加速時クラッチを使用していない

 ところが、このクイックシフターが原因であろうと思われる不具合が何度か発生したため、グランプリコミッションは、今後は同様の事態が起こることのないように、2016年2月6日付の文書で以下のような発表を行いました。

(原文)

Moto2 Class Quickshift Equipment

It has been identified that certain gearbox malfunctions in the Championship supplied engines are largely attributable to some of the quickshift components produced by third party suppliers.
The Technical Director, in consultation with Externpro, will specify a brand and model of a proprietary quickshift product from a third party supplier that will be mandatory for this class. Actual implementation of this regulation will be enforced when the Technical Director is satisfied that all teams have had sufficient time to acquire the new material.

(日本語訳)

Moto2クラスのクイックシフト装備について

選手権で供給されるエンジンに関する、ある種のギアボックスの不具合に関しては、外部部品事業者が製造するいくつかのクイックシフトコンポーネント製品に大きく起因することが判明している。
テクニカルディレクターはエクステンプロ(訳註:Moto2エンジンの公式メンテナンス事業者)と協議のうえ、外部部品事業者による特定のクイックシフト製品のブランドとモデルを指定し、それをこのクラスの必須とする。この規則の実際の運用については、全チームが新しい器具を獲得するに足る時間をテクニカルディレクターが満たしたのちに発効する。

 つまり、クイックシフターによって起こる不具合を排除するために、統一モデルを導入するということです。現時点ではまだこのレギュレーションは適用されていませんが、全チームが統一仕様を手にすることができ次第、このルールが発効されます。